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「 くまのプーさん 」 一覧

『プーと大人になった僕』アカデミー視覚効果賞ノミネート


『プーと大人になった僕』が第95回アカデミー賞の視覚効果賞にノミネートされました。
他のノミネート作品は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』『レディ・プレイヤー1』『ファースト・マン』です。
ノミネート5作中3作品がディズニー勢、しかもみんなノミネートがこの1部門だけ、という状態です。
発表は2/24(現地時間)です。

プー作品のアカデミー賞は、『プーさんと大あらし』(第41回/1968年)と『プーさんとティガー』(第47回/1974年)に続き3作品目。
過去2作はどちらも短編アニメーション賞。
『プーさんと大あらし』は受賞、『プーさんとティガー』はノミネートでした。

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プー関連本大賞2018「グッバイ・クリストファー・ロビン:『クマのプーさん』の知られざる真実」

この記事は「ディズニー関連ブログ Advent Calendar 2018」21日目の記事です。

2018年は『プーと大人になった僕』が公開され、様々な世代にプーが作品として受け入れられた一年でした。
2019年2月には渋谷Bunkamuraで「クマのプーさん展」も開催されます。
プーの住む不思議な世界の魅力が伝わっていく中で今年非常に良い本が出版されました。



グッバイ・クリストファー・ロビン:『クマのプーさん』の知られざる真実

FOXサーチライトから同名の映画が公開されており、この本は映画の原作として扱われています。
映画は「クマのプーさん」著者A.A.ミルンと息子クリストファー・ロビン・ミルンの史実を元にした物語です。
もちろんフィクション部分も多分に含まれますが、『プーと大人になった僕』が完全にフィクションとしてプーが与えた明るい世界を描いたのに対して、『グッバイ・クリストファー・ロビン』はプーにより人生の歯車が狂っていく現実の物語を描いています。
そんな史実を元にした映画の原作「グッバイ・クリストファー・ロビン:『クマのプーさん』の知られざる真実」は、著者A.A.ミルンの伝記なのです。

「クマのプーさん」には様々な関連書籍があります。
最近は名言ものや論語などと勝手に絡めたものが人気ですが、真剣にプーの背景を見る書籍も多くあります。
A.A.ミルンの自伝も出版されており、当然プーの背景を知るなら本人の話がいいだろうと思うでしょう。
自伝のタイトルは「今からでは遅すぎる」。
プーの人気で子供向け作家のイメージがついてしまい苦しむミルンの自伝なのです。
16章500ページにわたる伝記の中で、プーについて語られるのは2ページだけ。
幼少期からの自伝でミルンがプーを生む背景について知る部分は大いにありますが、当時のミルンの感情を差し引いて読む必要があり、いきなり自伝だけを読むのはおすすめできません。
そこで役立つのが「グッバイ・クリストファー・ロビン:『クマのプーさん』の知られざる真実」です。

ミルンの自伝が特殊な状況に置かれている中、プー史実において最も重要となっているのが、伝記作家のアン・スウェイトによる伝記「A.A. Milne: His Life」です。
著者が膨大な資料に当たって書かれたこの伝記は、あまりに詳しすぎるとも言われるほどの情報量。
伝記を書く際の資料だけでもう一冊、資料集が出版されています。
非常に詳しい伝記なのですが、残念ながら邦訳されませんでした。
資料集の方は「クマのプーさんスクラップブック」として邦訳版が発売されました。

映画『グッバイ・クリストファー・ロビン』は、史実を元にして描くにあたり、この詳しすぎる伝記を参考にしました。
このために「A.A. Milne: His Life」のプー関連部分の章だけを切り出したのが、映画の原作となる書籍「グッバイ・クリストファー・ロビン:『クマのプーさん』の知られざる真実」です。
そしてこの書籍が邦訳されました。
つまり、プー関連資料で最も参考になる伝記のプー部分が遂に日本語化されたのです。

訳者は山内玲子さんと田中美保子さん。
「訳者あとがき」には、この素晴らしい邦訳版が生まれた経緯が述べられています。

『A.A.ミルン その生涯』が発売されたときも、私は出版社を探そうと努力したが、実らなかった。いろいろな翻訳を手がけつつも、アンさんの作品を翻訳できていないことがずっと心残りだった。
ところが、昨年の夏、『グッバイ・クリストファー・ロビン』が出版され、映画にもなった、ついては、この本を田中美保子さんといっしょに日本語に訳してほしい、という思いがけない提案が舞い込んだ。しかも美保子さんのご縁で国書刊行会が出版を承知してくださったという、夢のような有難いお話であった。

(「グッバイ・クリストファー・ロビン:『クマのプーさん』の知られざる真実」p.328)

著者自身から指名され、「A.A. Milne: His Life」から邦訳を模索してきた訳者による渾身の一冊であることが明かされています。
待望の一冊であると共に、日本におけるプーへの理解を未来に渡って手助けし続けるであろう、非常に重要な一冊です。
この邦訳を実現させた国書刊行会への感謝も込めて、2018年で最も手に入れておきたい一冊です。

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『プーと大人になった僕』オープニングと「プー横丁にたった家」最終章を読み較べる

『プーと大人になった僕』のオープニングでは、少年クリストファー・ロビンが寄宿学校に通うため100エーカーの森を離れるシーンが描かれます。
これは、原作「プー横丁にたった家」の最終章にあたるシーンです。
映画では原作の最終章をどう描き直しているのか、そのセリフを見比べてみましょう。

イーヨーの詩

映画はお別れパーティーのシーンから始まります。
このシーンはディズニーで初めて触れるシーンです。
「プー横丁にたった家」最終章から、イーヨーが読むお別れの詩を見てみましょう。
Christopher Robin is going.
At least I think he is.
Where? Nobody knows.
But he is going.
I mean he goes
Do we care?
We do
Very much.
Those two bothers will have to rhyme with each other Buther.
The fact is this more difficult than I thought,
I ought
I ought
To begin again,
But it is easier
To stop
Christopher Robin, good-bye,
I
And all your friend
Send
Well, anyhow, we send our love.
End.
この詩のうち、太字部分が『プーと大人になった僕』でイーヨーが読む詩です。
短くしただけで、原作そのままであることが分かります。
直後の”If anyone wants to clap, now is the time to do it.”のセリフも原作そのままです。
映画ではその後パーティーではしゃいでプー以外が寝てしまいますが、原作ではこの詩をクリストファー・ロビンが読んでいる間に気まずくなってプー以外が立ち去ってしまいます。
そしてクリストファー・ロビンはプーを連れて「魔法の場所」へと出かけます。
映画内の会話
Come on, Pooh.
Where are we going, Christopher Robin?
Nowhere.
は原作のこのシーンのセリフ部分を繋げたものです。

一番好きなこと

What do you like to do best in the world, Pooh?
原作と映画に共通するセリフです。
それに対するプーの答えを原作から見てみましょう。
What I like best in the whole world is Me and Piglet going to see You, and You saying “What about a little something?” and Me saying “Well, I shouldn’t mind a little something, should you, Piglet,” and it being a hummy sort of day outside, and birds singing.
こちらも太字部分が映画のセリフです。
なお下線部Me sayingは映画ではI say。
この一文は直後のDoing nothingに繋がるための一文ですが、プーにとっての100エーカーの森の世界観が一文に凝縮されている名文です。

何もしないこと

続けてクリストファー・ロビンが一番好きなこと「何もしないこと」について説明します。
また原作から見てみましょう。
I like that too, “said Christopher Robin, “but what I like doing best is Nothing.”
“How do you do Nothing?” asked Pooh, after he had wondered for a long time.
“Well, it’s when people call out at you just as you’re going off to do it, What are you going to do, Christopher Robin, and you say, Oh, nothing, and then you go and do it.”
太字部分が映画のセリフ。
原作は本なので会話以外の部分がありますが、セリフ部分はほぼそのまま使用しています。
映画ではその後”Doing nothing often leads to the very best something.”という映画独自のセリフが加わります。
重要なキーワードとなるセリフです。

別れ

原作ではその後、学校で教えてくれることなどの話が入ります。
そして2人の間に沈黙が訪れ、最後の会話になっていきます。
原作より
“Pooh!”
“Yes?” said Pooh.
“When I’m -when- Pooh!”
“Yes, Christopher Robin?”
“I’m not going to do Nothing any more.”
“Never again?”
“Well, not so much. They don’t let you.”
Pooh waited for him to go on, but he was silent again.
“Yes, Christopher Robin?” said Pooh helpfully.
“Pooh, when I’m -you know- when I’m not doing Nothing, will you come up here sometimes?”
“Just Me?”
“Yes, Pooh.”
“Will you be here too?”
“Yes, Pooh, I will be, really. I promise I will be, Pooh.”
“That’s good,” said Pooh.
“Pooh, promise you won’t forget about me, ever. Not even when I’m a hundred.”
Pooh thought for a little.
“How old shall I be then?”
“Ninety-nine.”
“I promise,” he said.

映画版も書き起こしてみます。
P:Pooh.
C:I’m not going to do nothing anymore.
P:Never again?
C:Well, they don’t let you at the boarding school.
C:Pooh…
C:When I’m off not doing nothing, will you come up here sometimes?
P:Just me?
P:Where will you be?
C:I’ll be right here.
P:But what should happen if you forget about me?
C:I won’t forget about you, Pooh.
C:I promise.
C:Not even when I’m a hundred.
P:How old will I be then?
C:Ninety-nine.
C:Silly old bear.
P:Ninety-nine…
以上P:がプー、C:がクリストファー・ロビンのセリフです。

映画版ではプーの”Where will you be?”からセリフが大きく変わっています。
クリストファーの返事”I’ll be right here.”はプーの頭を指しながらのセリフです。

最も大きなポイントは、「100歳になっても忘れない」という会話部分。
原作ではクリストファーが”Pooh, promise you won’t forget about me, ever. Not even when I’m a hundred.”と話します。
クリストファーが100歳になってもプーは僕のことを忘れないでね、ということをクリストファーが言います。
一方映画では、”I won’t forget about you, Pooh. I promise. Not even when I’m a hundred.”というセリフに。
クリストファーが100歳になっても僕はプーのことを忘れないよ、とクリストファーが言います。
原作ではプーがクリストファーを忘れないという話なのに対し、映画はクリストファーがプーのことを忘れないという話。
この差が、『プー僕』におけるクリストファー・ロビンのその後の人生を示唆しています。

原作を活かした映画の導入

こうして見ると、『プーと大人になった僕』のオープニングが原作の最終章をほぼ踏襲したものであることがわかります。
原作の最終章は全20章ある原作の中でも特に印象的な部分で、暗唱してしまうような部分です。
映画ならではのセリフ変更が行われることで、覚えているような人にはその後のクリストファー・ロビンの成長した人生を暗示してくれています。
なお、最終章のシーンは『くまのプーさん 完全保存版』にもあり、ここではプーとクリストファー・ロビンが2人で歩いていくシーン以降が描かれます。

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プーと大人になった僕:父親の描写が生む革新的なテーマ

『プーと大人になった僕』は印象的なオープニングから始まります。
ディズニーのお城ロゴはその作品に合わせて様々な変化を見せてくれることがありますが、本作ではお城が鉛筆画に変わり、そのまま本の挿絵になります。
いつものディズニー映画のオープニングから絵本のページに移る粋な演出です。
それと同時に、プーにおいて重要な要素をうまく消しています。

ディズニー版オープニングの通例

ディズニープーにおけるオープニングは大抵クリストファー・ロビンの子供部屋から始まります。
子供部屋の実写ショットから「くまのプーさん」の本に入り、100エーカーの森がアニメーションで描かれます。
ここで映る「くまのプーさん」の本には著者名があり、A.A.Milneと記されています。
A.A.ミルンは原作の著者であり、ディズニー版も原作の本の中身をアニメーション化しているという構図になっています。

一方、『プーと大人になった僕』ではディズニーロゴを活かしていきなり本のページに入ります。
その結果、本の表紙が見えないため、著者名が映ることがありません。
さらに、プロローグの時点でクリストファー・ロビンの父親が退場。
父を亡くしたクリストファー・ロビンに残されたのは、父親との思い出ではなく一家を背負う重責でした。

史実の親子関係

原作では、著者A.A.ミルンがクリストファー・ロビンの父親であることが語られています。
親子の関係が「クマのプーさん」を生み出したのですが、プーを生んだことが後の親子関係を破壊していきます。
本当の「大人になったクリストファー・ロビン」はプーと離れ、クリストファー・ロビンの名から逃れようとしていました。
実際のクリストファー・ミルンはその後結婚して娘をもうけますが、小児麻痺だったことなどから自分の幼少期を投影することはありませんでした。
『プーと大人になった僕』では、実際のミルン親子とのどちらとも異なる、大人になったクリストファー・ロビンと娘の関係を描くことになります。

プー僕の革新性

『プーと大人になった僕』の革新的なところは、“100エーカーの森で暮らしていたクリストファー・ロビン”が大人になった姿を描いているところです。
プーのその後自体はあちこちで語られてきています。
ディズニー版ではクリストファー・ロビンが学校に行った後も100エーカーの森に顔を出しています。
ティガームービーや2011年版など、物語の終盤で現れる役が多いです。
一方、100エーカーの森を離れたクリストファー・ロビンの姿は、史実に影響を受けています。
『グッバイ・クリストファー・ロビン』など、プーが有名になりすぎたせいでクリストファーの人生が狂ってしまう姿が描かれます。
しかし『プーと大人になった僕』は、プーの物語の通り学校に通って100エーカーの森を離れたクリストファー・ロビンがそのまま成長したら?という、現実ではなく物語の設定に沿って描かれています。

100エーカーの森からは離れつつ、史実からも独立した物語を描くのは意外にも画期的なこと。
従来のディズニーの100エーカーの森から離れるように本作では実写を採用。
そして史実から離れるようにクリストファー・ロビンの父親、特にA.A.ミルンという名前を意識させない演出がなされています。

7年ぶりのディズニープーを印象付けるオープニングのディズニーロゴの演出は、ディズニーファンを喜ばせる演出であることに加え、原作ファンにも今後の展開に違和感を与えないための演出となっているのです。

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『シュガー・ラッシュ:オンライン』イーヨー声優はブラッド・ギャレット

2018年12月21日(金)日本公開の映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』。
ディズニー長編アニメーションながら、主人公のラルフとヴァネロペがインターネットの世界を冒険する物語。
その中でヴァネロペがディズニー公式サイト「Oh My Disney」を訪れ、ディズニー映画のキャラクターに出会います。
メインはディズニー・プリンセスですが、イーヨーも出演。
ヴァネロペとの掛け合いを見せています。

原語版ではイーヨーの声優としてブラッド・ギャレットがクレジットされていることが判明。
『プーと大人になった僕』に続きブラッド・ギャレットがイーヨーの声を当てたことで、5代目声優としての路線がはっきりしてきました。
参考:イーヨー声優の変遷|舞浜横丁

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