- 東京ディズニーランド - by poohya
Reach for the Stars感想
東京ディズニーランド「Reach for the Stars」を観ました。
とりあえず1回観た時点での感想です。
ここからネタバレあり
この運営体制でキャッスルプロジェクションが戻ってきたというだけで満点です。
特に、プレミアアクセスに課金するようなゲスト層に対して、ショーの選択肢を増やすことは大きなことだと思います。
そこに向けて良い雰囲気のショーとして完成されていました。
観ていて感じたのは、良い場所から観ることを想定したショーだなということでした。シンデレラ城近く(ただし近すぎず)正面から見るときによく見える作りです。
キャッスルプロジェクションも10年になり、今や東京ディズニーランドが最も狭い範囲で見せるプロジェクションになっていると感じました。
アナハイムは早くからスモールワールドやアメリカ河、そしてメインストリートUSAでも映像を流すことで、幅広いエリアで補完しています。パリは城が大きく、フロリダも拡張されたハブとメインストリートUSAを活用。香港と上海は、マッピング用のお城と、専用に掘られた鑑賞エリアから広がるハブがあります。
それに対して、パイロでない花火を打たない東京は、比較的狭い範囲に向けた演出で良いのです。
『ウィッシュ』のシーンでは、パイロの爆竹音がぴったり曲に合わせられていました。
さらに今回はシンデレラ城の両サイドの木にも投影があり、ミラベルのシーンなどよくできていて、没入感を演出していました。こういった没入感の演出は海外でもありますが、海外は「色」をテーマにして周りの演出を合わせることが多く、ある程度距離があっても成立するようにできています。もっと直接的なアプローチができるのは東京の城前構造ならではだと思いました。
特殊効果としては、ドローンを使いにくい東京で新たな効果としてスモークを出してきたのは面白い。
雲海の上のお城という表現は特に両サイドの池でうまくできていると思います。
近い人の見やすさは別として。
ホール・ニュー・ワールドでもかなり良い演出になっていました。
そしてやっぱり東京ならではの演出なのは炎。Celebrate! Tokyo Disneylandから導入された、設置タイプのフレームキャノンも含めて、良い演出になっています。炎を出すと、映像がかき消されてしまうという副作用があるものの、良い塩梅で映像を飛ばしてもいいシーンに当てはめていました。
レーザーもさすが小慣れていて、オープニングのティンクから完璧です。
今回新しいと思ったのは、むしろマッピングの演出でした。
東京でキャッスルプロジェクションが始まった当時、海外ではプロジェクションマッピングと言いつつもお城の入り口に幕を張って、そこにメインの投影物を出すという手法が多く、結局ただのスクリーン投影になっていることがありました。
それに対してワンス・アポン・ア・タイムは、シンデレラ城の右上にある平面が広めに取れるゾーンを活用して演出することで、綺麗な映像をキャッスルプロジェクションとして映すと同時に、高い位置にあるため遠くからでも見やすい効果を生んでいました。
これはかなり画期的な手法だと思っていて、フロリダではDisney Enchantmentで同様の方式をとり、香港のお城も増築部分はそれを意識した作りで平面が作られていると思います。
そんな東京のシンデレラ城が、今度はまた新しい手法でマッピングを表現していると感じました。
シンデレラ城は、時計がある前面と、高い塔がある後面に分かれています。そしてその間からパイロを打つことが可能になっています。この前面と後面をレイヤーとして分割して描いている部分が出てきました。
フローズン・フォーエバーでは近いことを行なっていて、前面で歌のシーンを描いて後面で回想を流すというすごいことをやっていたのですが、今回はきっちりと前面・後面でレイヤーを分けた映像になっているシーンがありました。その分、後面レイヤーで映るキャラクターが、前面の塔と被るので、横側からの見にくさには繋がっています。
とはいえ、お城を一体として投影するシーンもあり、ヘラクレスやウィッシュなど、レイヤーを分けるシーンと一体で描くシーンの使い分けが綺麗に行われていました。
物理的に前後に分けた表現ができるのは、マッピング用に大きいけれどのっぺりした城である香港や上海ではできない芸当で、元からあるシンデレラ城にわざわざプロジェクションマッピングつ打つという環境のなせる技です。
これは今後もっと化ける表現手法になると思います。
一方で、空を翔けるという表現はいまいちだったように思いました。
末広がりの三角形状であるシンデレラ城は空を飛ぶ表現が難しいですね。
みんな飛ぶといいつつ横に動くシーンが中心で、背景で動きを表現しているシーンが多かったです。カールじいさんの家も、家が大きくて風船が小さいという映像になってしまいます。
結局、ティンクとかスターとか小さいものが動き回らないとお城全体を使った飛行にならず。その点スターは非常に表現がうまくて、それだけで空飛ばないアーシャが入った価値がありました。
高さ51mのスクリーンを活かした没入感の飛行はなかったかなと思います。
ワンス・アポン・ア・タイムのピーターパンのシーンに勝てなかった。
シーン構成はぶつ切り感が否めず、特にヘラクレスがペガサスに合うシーンの切り替えの雑さには笑ってしまいました。
やはりストーリーが弱いので、空を翔けることと全体のテーマがちぐはぐなまま、とにかく映画を詰め込んでいるだけでした。
ホール・ニュー・ワールドが「素晴らしい世界」で終わり「を」がカットされているのはシーンの切り替えとしてはわかるけれどどうしても気持ち悪い。
そこからのプリンセスシーンは、もうストーリーからするとめちゃくちゃですが、こういうシーンが見たいのは確か。そしてプリンセスとプリンスのダンスシーンが、ウォーリーとイヴで締められるのは感動しました。東京ディズニーランドとして、プリンセスとヒロインの垣根を取り払ったと思います。
マーベルは、思ったより長くてたくさん出てきて、「イッツ・ア・スモールワールド with グルート」もきちんと意識されているなと思いました。
そこからベイマックスに行くなら、もう少しマーベル繋がり感を出すくらい攻められなかったのかな。ビッグヒーロー6はいちいち謎の虹カラーが出てきて、直前のソーとダブりました。
ラストは割と普通のことを言っているので、これくらいなら言葉で説明しない方が好きです。
最後のウッディの「無限の彼方へ」も最初の「はるか空の彼方」と呼応していて、ディズニーの中でもかなり有名な名言を生かしていました。その分直前に説明しなくても良かったと思います。
さて、このショーにはプーが登場します。というわけで、ここからはプーの話をします。
空を飛ぶキャラクターをメインとしたマッピングという時点で、イマジニアがプーを入れてくるだろうなとは思っていました。
始まるまで登場キャラクターには一切書かれていませんでしたが、やっぱりプーが風船で浮いてきました。
フィナーレでは、クリストファー・ロビンたちも登場します。全員いっぺんに映すから場面として意味不明になっているけれど。
飛ぶ上でプーは使われがちだし、前述した上方向の動きで見ると、プー単体が風船で浮いていくので、城の上の塔まで使えて表現しやすいわけです。
それは、空を翔けるというショーの括りとしては良いです。ありがとう。
しかし、ショーのメッセージからは明らかにかけ離れています。
夢に向かって進んでいこうという、だいたいの映画はそのシーンあるだろうというテーマを扱うから、だいたいどの映画を使ってもまとまります。
だいたいのと書いたのは、一部には何の夢も追い求めない物語もあるわけで、その代表格が「くまのプーさん」です。
プーが入るだけでテーマがブレます。
これだけで、テーマに沿って映画をセレクトしたのではなく、深く考えずにシーンを詰め込んでいるだけだとわかります。
空を翔ける=夢を追い求めるは全てにおいて等式ではありません。
その両者をそれぞれやりたいように作るから、まとまりのないショーになっているのだと思いました。
- くまのプーさん - by poohya
アッシュダウン・フォレスト紀行「プーの故郷を訪ねて」をディズニーファンに寄稿しました
ディズニーファン10月号が発売されました。
プーの不定期連載「プーさんのこと、いろいろ」にまた寄稿しています。
早いもので寄稿し始めてから丸2年になりました。
今回は「プーの故郷を訪ねて」。
イギリスのアッシュダウン・フォレストを、見開きで紹介しています。
描き起こしてもらった地図と、2017年に撮影した写真で、紀行っぽいページになりました。
原作者A.A.ミルンはロンドンで暮らしていましたが、アッシュダウン・フォレストに「コッチフォード・ファーム」という別荘を購入。週末や休暇などをアッシュダウン・フォレストで過ごすようになりました。
息子のクリストファー・ロビン・ミルンは、別荘の前の広大な森で、自分のテディベア、ウィニー・ザ・プーたちと一緒に遊んでいました。
その様子をA.A.ミルンが物語にしたのが、「クマのプーさん」です。
そんなわけでアッシュダウン・フォレストが100エーカーの森のモデルなわけですが、モデルという表現では遠すぎるかなと思うほど、アッシュダウン・フォレストと100エーカーの森は交わっています。
この辺り、『プーと大人になった僕』での表現が上手いのですが、アッシュダウン・フォレストの別次元にあるのが100エーカーの森というイメージです。
偶然ですが、プー連載の前のページには、「アナ雪の故郷ノルウェーを訪ねて」が掲載されています。
アナ雪は建物や衣装のデザインがノルウェーの伝統模様から取り入れられています。
ディズニーではそういった実際の世界を、独自の世界に落とし込んでいます。
一方でプーは、もっと地続きのクリストファーとプーの冒険が、そのまま100エーカーの森になっています。
その違いも聖地紀行の面白いところだなと思います。
風間俊介さんのファンタジースプリングスガイドブックも付録になっているので、そのついでにプーのページも読んでください。
そして「くまのプーさん FAN BOOK」も発売から1年が経ちました。
まだ買っていない方はぜひ。
http://disneyfan.kodansha.co.jp/mook/62115.html
- くまのプーさん - by poohya
プー原作の著作権が切れてホラー映画が作られたが、キャラデザ元のディズニーは著作権が切れていない
原作「クマのプーさん」の著作権が、米国で2022年で切れ、パブリックドメインになりました。
2年後の「プー横丁にたった家」も同様に2024年でパブリックドメインになりました。
これを受けて、プーのホラー映画が制作され、低予算映画にしてはヒット。
しかしラジー賞を総なめにするクオリティでした。とはいえヒットしたので続編が制作。さらにユニバース化も計画されているそうです。
色々とニュースにもなっていましたが、原作の著作権は切れてもディズニーの著作権は切れていません。
参考:くまのプーさんは何がパブリックドメインになったのか
そしてプーのホラー映画はどう見ても原作ではなくディズニーのデザインをモチーフにしています。
そんな中、続編が日本公開されるタイミングで、監督へのインタビューをしました。
【プー2】前作がまさかの大ヒットで続編公開!監督に聞いた「マニアックなこだわり」 – ウレぴあ総研
監督からはっきりと、キャラクターデザインは著作権の切れていないディズニーがモチーフだと言われました。
つまりエスケイプ・フロム・トゥモローなどと同じように、ディズニーが無視をしているだけで、別に著作権を回避しているわけでもない(そして話題性だけでつまらない)映画だということでした。
一方で、脚本上はディズニーの著作権を侵害しないようにしているとも回答。原作の背景をベースにした設定も取り入れられています。
本人たちに聞けばここまで明言するのに、煽った宣伝に乗せられてパブリックドメイン化で合法的に映画化されたかのように報道するのはどうなのでしょうか。
そして、提案してきた編集も、この内容で通した宣伝も、普通に答えた監督もすごい。みんなありがとう。
- ディズニーチャンネル ちいさなプリンセス ソフィア - by poohya
「ちいさなプリンセス ソフィア:ロイヤル・マジック」続編が2026年スタート
Disney Branded Television Press
ソフィア続編が正式決定しました。
2026年からディズニー・ジュニアとディズニープラスで配信されます。
「ちいさなプリンセス ソフィア」は2012〜2018年に放送。その続編として新シリーズが始まります。
新シリーズでは、ソフィアが「チャームズウェル王立魔法学校」に通います。エバーレルム(ソフィアのいる世界の名称)の王子や王女が通う学校で、ロイヤルさや魔法について学んでいきます。
「ちいさなプリンセス ソフィア」では、ソフィアたちは「王立アカデミー」に通っていました。最終話で卒業しますが、その間近のエピソード「がっこうを えらぶひ」にて、ソフィアは進学先としてエバーレルム・アカデミーを選んでいました。学校名が変わっているので、エバーレルム・アカデミーに通ったさらに後の話かもしれません。またこのエピソードでは学校はいつでも変えられるとも言われていたため、転校後かもしれません。
いずれにせよ新キャラクターがクラスメイトとして登場します。アンバーは同じエバーレルム・アカデミーに通う予定だったので、今作でもソフィアと一緒にいることでしょう。
最終話で魔法の守護者としての道を選んだソフィア、女王になっていくアンバーたちがどんなロイヤルさを見つけていくのか。
制作総指揮のクレイグ・ガーバーやソフィア声優のアリエル・ウィンターらは続投します。
どんなロイヤルとマジックを見せてくれるのか楽しみです。
参考:プリンセスは「ロイヤル」に変わる。ソフィア最終話が見せた新境地
新シリーズは1枠を2分割する形に変更。11分のエピソードが2話連続します。ディズニープラス配信も意識した形のようです。
エピソードごとにオリジナル曲が入るのは従来と変わりません。
新作制作の報道などが出てはいましたが、まさかの続編が正式決定。
テレビ部門がディズニープラスへと大幅に移管してから子ども向けアニメーションが乏しい状況でしたが、ディズニープラスでも継続的に新作が配信される子ども向けシリーズが生まれます。
先日のD23前日にパーク側で行われたD23 Dayでは、DCAでディズニージュニアのイベントが行われました。
昨年8月に行われたDisney Junior PlaydateがD23 Dayに合わせて行われたような内容。昨年はプーの新シリーズPlaydate with Winnie the Pooh放送を記念して、プーがフード付き服で登場。ミッキーと同じフロートでパレードを行いました。
今回はアリエル新作がメイン。プーはパレード後部のオムニバスに乗って登場したのですが、まさかのソフィアと隣席。完全に自分だけが得をする並びでした。
そして間髪入れずにソフィア新作発表。
最終回から5年以上たち、もはやディズニージュニアのパレードにまだ参加できるだけありがたい状態でしたが、2年後は再びディズニージュニアの主役になりそうです。
次回のD23が2026年なら、ソフィア新作とプー100周年が重なって大変だ。
- くまのプーさん - by poohya
リチャード・シャーマン死去
シャーマン兄弟の弟リチャード・シャーマンが2024年5月25日逝去しました。95歳でした。
言わずと知れたディズニー・レジェンドの作曲家。
「2ペンスを鳩に」そして「There’s a Great Big Beautiful Tomorrow」をはじめ、ディズニーを代表する名曲を作ってきました。
手がけた曲を挙げていけば枚挙にいとまがありません。
あえてプーに絞ってみると『プーさんとはちみつ』をはじめ『プーさんと大あらし』『プーさんとティガー』の全ての歌を作りました。
ウォルトは、原作「クマのプーさん」をなるべくそのままアニメーションとしてアメリカに届けようとしました。
ファンタジアがクラシック音楽のアニメーション化なら、絵本のアニメーション化をしようとしたのです。
その中で重大な問題が、プーが原作のあちこちでうたう詩でした。
現在「プーもの」と呼ばれるクリストファー・ロビン関連の作品は4つあり、「クマのプーさん」「プー横丁にたった家」以外の2作品は詩集です。
プーは地の文から詩的で、プーも詩人。全体がリズミカルで読み聞かせのように声に出して読むのが楽しい作品です。
この詩的な要素をアニメーションにしようとしたとき、ウォルトはシャーマン兄弟の音楽に託しました。
ただプーたちが動くアニメーションなのではなく、シャーマン兄弟の音楽を取り入れたミュージカルになったことで、原作の世界観を表現できたのです。
『プーさんとはちみつ』では、主題歌「くまのプーさん」という今もなおプーにとって重要な曲が誕生。プー作品では後にさまざまなアーティストが曲を手がけていきますが、ロペス夫妻含め皆が「くまのプーさん」を作品に取り入れながら自分の曲を作っていくことになる重大な基点となっています。
『プーさんと大あらし』では、ティガーのデビューに合わせるようにテンポの良い曲が入ってきます。「ワンダフル・シング・アバウト・ティガー」や「ズオウとヒイタチ」などが登場しました。
『プーさんとティガー』の頃には、シャーマン兄弟はディズニースタジオを離れていました。
『チキ・チキ・バン・バン』をはじめ、他スタジオの作品を手がけていく中で、テーマパークなどディズニーの楽曲も請け負っていました。
一方、ディズニーはプーの20年ぶりの長編を製作し、プー作品をスタジオに回帰させました。
そして『ベッドかざりとほうき』以来29年ぶりにシャーマン兄弟がディズニーに復帰。『ティガームービー』が製作されました。
『ティガームービー』では、中編映画には入りきらなかった「ワンダフル・シング・アバウト・ティガー」の2番を披露。さらに新曲も6曲を制作しました。
「ウープ・ディー・ドゥーパー」は呪文のように長いジャンプ名をティガーが歌いまくる曲。非常にシャーマン兄弟的な歌詞です。
主題歌となった「Your Heart Will Lead You Home」はケニー・ロギンスと共に制作しました。
そしてこの『ティガームービー』が、シャーマン兄弟として最後の長編映画になりました。
兄ロバート・シャーマンが死去した後も、リチャードは公の舞台にも何度も姿を見せ、精力的に活動していました。
『プーと大人になった僕』では、リチャードが新たに3曲を制作。冒頭の「はなれても いっしょ」で、プーアニメーションらしいテンポのミュージカルを甦らせました。
そしてエンドクレジットの「何もしないは忙しい」では、ピアノを弾きながら映画にカメオ出演。
最後の長編作品となった『プーと大人になった僕』では最後に、原題そのままのタイトル「クリストファー・ロビン」を制作しました。プーがクリストファー・ロビンに語りかけるような歌ですが、映画を観たとき、どこかリチャードがウォルトと音楽制作に勤しんでいた頃を懐かしんでいるように聞こえました。
輝かしい時代に思いを馳せながら世界を愛でるのはプーの根源的な世界観でもあります。ディズニーの「くまのプーさん」を作り上げたシャーマンが最後に自らその世界観に飛び込んでいったようです。
ディズニープーはシャーマン兄弟と共に生まれ、シャーマン兄弟の生涯においても重大な意味を持つ作品であったことが歴史からも伺えます。
もう新作を手がけることがなくなったのは残念ですが、これからも幾多のアーティストが「くまのプーさん」や「ワンダフル・シング・アバウト・ティガー」を取り入れながら、新たなプー音楽を作っていってくれることでしょう。
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