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アッシュダウン・フォレスト紀行「プーの故郷を訪ねて」をディズニーファンに寄稿しました

ディズニーファン10月号が発売されました。
プーの不定期連載「プーさんのこと、いろいろ」にまた寄稿しています。
早いもので寄稿し始めてから丸2年になりました。

今回は「プーの故郷を訪ねて」。
イギリスのアッシュダウン・フォレストを、見開きで紹介しています。
描き起こしてもらった地図と、2017年に撮影した写真で、紀行っぽいページになりました。

原作者A.A.ミルンはロンドンで暮らしていましたが、アッシュダウン・フォレストに「コッチフォード・ファーム」という別荘を購入。週末や休暇などをアッシュダウン・フォレストで過ごすようになりました。
息子のクリストファー・ロビン・ミルンは、別荘の前の広大な森で、自分のテディベア、ウィニー・ザ・プーたちと一緒に遊んでいました。
その様子をA.A.ミルンが物語にしたのが、「クマのプーさん」です。
そんなわけでアッシュダウン・フォレストが100エーカーの森のモデルなわけですが、モデルという表現では遠すぎるかなと思うほど、アッシュダウン・フォレストと100エーカーの森は交わっています。
この辺り、『プーと大人になった僕』での表現が上手いのですが、アッシュダウン・フォレストの別次元にあるのが100エーカーの森というイメージです。

偶然ですが、プー連載の前のページには、「アナ雪の故郷ノルウェーを訪ねて」が掲載されています。
アナ雪は建物や衣装のデザインがノルウェーの伝統模様から取り入れられています。
ディズニーではそういった実際の世界を、独自の世界に落とし込んでいます。
一方でプーは、もっと地続きのクリストファーとプーの冒険が、そのまま100エーカーの森になっています。
その違いも聖地紀行の面白いところだなと思います。

風間俊介さんのファンタジースプリングスガイドブックも付録になっているので、そのついでにプーのページも読んでください。

そして「くまのプーさん FAN BOOK」も発売から1年が経ちました。
まだ買っていない方はぜひ。
http://disneyfan.kodansha.co.jp/mook/62115.html

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プー原作の著作権が切れてホラー映画が作られたが、キャラデザ元のディズニーは著作権が切れていない

原作「クマのプーさん」の著作権が、米国で2022年で切れ、パブリックドメインになりました。
2年後の「プー横丁にたった家」も同様に2024年でパブリックドメインになりました。
これを受けて、プーのホラー映画が制作され、低予算映画にしてはヒット。
しかしラジー賞を総なめにするクオリティでした。とはいえヒットしたので続編が制作。さらにユニバース化も計画されているそうです。

色々とニュースにもなっていましたが、原作の著作権は切れてもディズニーの著作権は切れていません。
参考:くまのプーさんは何がパブリックドメインになったのか
そしてプーのホラー映画はどう見ても原作ではなくディズニーのデザインをモチーフにしています。

そんな中、続編が日本公開されるタイミングで、監督へのインタビューをしました。
【プー2】前作がまさかの大ヒットで続編公開!監督に聞いた「マニアックなこだわり」 – ウレぴあ総研
監督からはっきりと、キャラクターデザインは著作権の切れていないディズニーがモチーフだと言われました。
つまりエスケイプ・フロム・トゥモローなどと同じように、ディズニーが無視をしているだけで、別に著作権を回避しているわけでもない(そして話題性だけでつまらない)映画だということでした。
一方で、脚本上はディズニーの著作権を侵害しないようにしているとも回答。原作の背景をベースにした設定も取り入れられています。

本人たちに聞けばここまで明言するのに、煽った宣伝に乗せられてパブリックドメイン化で合法的に映画化されたかのように報道するのはどうなのでしょうか。
そして、提案してきた編集も、この内容で通した宣伝も、普通に答えた監督もすごい。みんなありがとう。

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「ちいさなプリンセス ソフィア:ロイヤル・マジック」続編が2026年スタート

Disney Branded Television Press
ソフィア続編が正式決定しました。
2026年からディズニー・ジュニアとディズニープラスで配信されます。

「ちいさなプリンセス ソフィア」は2012〜2018年に放送。その続編として新シリーズが始まります。

新シリーズでは、ソフィアが「チャームズウェル王立魔法学校」に通います。エバーレルム(ソフィアのいる世界の名称)の王子や王女が通う学校で、ロイヤルさや魔法について学んでいきます。
「ちいさなプリンセス ソフィア」では、ソフィアたちは「王立アカデミー」に通っていました。最終話で卒業しますが、その間近のエピソード「がっこうを えらぶひ」にて、ソフィアは進学先としてエバーレルム・アカデミーを選んでいました。学校名が変わっているので、エバーレルム・アカデミーに通ったさらに後の話かもしれません。またこのエピソードでは学校はいつでも変えられるとも言われていたため、転校後かもしれません。
いずれにせよ新キャラクターがクラスメイトとして登場します。アンバーは同じエバーレルム・アカデミーに通う予定だったので、今作でもソフィアと一緒にいることでしょう。
最終話で魔法の守護者としての道を選んだソフィア、女王になっていくアンバーたちがどんなロイヤルさを見つけていくのか。
制作総指揮のクレイグ・ガーバーやソフィア声優のアリエル・ウィンターらは続投します。
どんなロイヤルとマジックを見せてくれるのか楽しみです。
参考:プリンセスは「ロイヤル」に変わる。ソフィア最終話が見せた新境地

新シリーズは1枠を2分割する形に変更。11分のエピソードが2話連続します。ディズニープラス配信も意識した形のようです。
エピソードごとにオリジナル曲が入るのは従来と変わりません。

新作制作の報道などが出てはいましたが、まさかの続編が正式決定。
テレビ部門がディズニープラスへと大幅に移管してから子ども向けアニメーションが乏しい状況でしたが、ディズニープラスでも継続的に新作が配信される子ども向けシリーズが生まれます。


先日のD23前日にパーク側で行われたD23 Dayでは、DCAでディズニージュニアのイベントが行われました。
昨年8月に行われたDisney Junior PlaydateがD23 Dayに合わせて行われたような内容。昨年はプーの新シリーズPlaydate with Winnie the Pooh放送を記念して、プーがフード付き服で登場。ミッキーと同じフロートでパレードを行いました。
今回はアリエル新作がメイン。プーはパレード後部のオムニバスに乗って登場したのですが、まさかのソフィアと隣席。完全に自分だけが得をする並びでした。
そして間髪入れずにソフィア新作発表。
最終回から5年以上たち、もはやディズニージュニアのパレードにまだ参加できるだけありがたい状態でしたが、2年後は再びディズニージュニアの主役になりそうです。
次回のD23が2026年なら、ソフィア新作とプー100周年が重なって大変だ。

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リチャード・シャーマン死去

シャーマン兄弟の弟リチャード・シャーマンが2024年5月25日逝去しました。95歳でした。
言わずと知れたディズニー・レジェンドの作曲家。

「2ペンスを鳩に」そして「There’s a Great Big Beautiful Tomorrow」をはじめ、ディズニーを代表する名曲を作ってきました。
手がけた曲を挙げていけば枚挙にいとまがありません。

あえてプーに絞ってみると『プーさんとはちみつ』をはじめ『プーさんと大あらし』『プーさんとティガー』の全ての歌を作りました。
ウォルトは、原作「クマのプーさん」をなるべくそのままアニメーションとしてアメリカに届けようとしました。
ファンタジアがクラシック音楽のアニメーション化なら、絵本のアニメーション化をしようとしたのです。
その中で重大な問題が、プーが原作のあちこちでうたう詩でした。
現在「プーもの」と呼ばれるクリストファー・ロビン関連の作品は4つあり、「クマのプーさん」「プー横丁にたった家」以外の2作品は詩集です。
プーは地の文から詩的で、プーも詩人。全体がリズミカルで読み聞かせのように声に出して読むのが楽しい作品です。
この詩的な要素をアニメーションにしようとしたとき、ウォルトはシャーマン兄弟の音楽に託しました。
ただプーたちが動くアニメーションなのではなく、シャーマン兄弟の音楽を取り入れたミュージカルになったことで、原作の世界観を表現できたのです。
『プーさんとはちみつ』では、主題歌「くまのプーさん」という今もなおプーにとって重要な曲が誕生。プー作品では後にさまざまなアーティストが曲を手がけていきますが、ロペス夫妻含め皆が「くまのプーさん」を作品に取り入れながら自分の曲を作っていくことになる重大な基点となっています。
『プーさんと大あらし』では、ティガーのデビューに合わせるようにテンポの良い曲が入ってきます。「ワンダフル・シング・アバウト・ティガー」や「ズオウとヒイタチ」などが登場しました。

『プーさんとティガー』の頃には、シャーマン兄弟はディズニースタジオを離れていました。
『チキ・チキ・バン・バン』をはじめ、他スタジオの作品を手がけていく中で、テーマパークなどディズニーの楽曲も請け負っていました。
一方、ディズニーはプーの20年ぶりの長編を製作し、プー作品をスタジオに回帰させました。
そして『ベッドかざりとほうき』以来29年ぶりにシャーマン兄弟がディズニーに復帰。『ティガームービー』が製作されました。

『ティガームービー』では、中編映画には入りきらなかった「ワンダフル・シング・アバウト・ティガー」の2番を披露。さらに新曲も6曲を制作しました。
「ウープ・ディー・ドゥーパー」は呪文のように長いジャンプ名をティガーが歌いまくる曲。非常にシャーマン兄弟的な歌詞です。
主題歌となった「Your Heart Will Lead You Home」はケニー・ロギンスと共に制作しました。
そしてこの『ティガームービー』が、シャーマン兄弟として最後の長編映画になりました。

兄ロバート・シャーマンが死去した後も、リチャードは公の舞台にも何度も姿を見せ、精力的に活動していました。
『プーと大人になった僕』では、リチャードが新たに3曲を制作。冒頭の「はなれても いっしょ」で、プーアニメーションらしいテンポのミュージカルを甦らせました。
そしてエンドクレジットの「何もしないは忙しい」では、ピアノを弾きながら映画にカメオ出演。
最後の長編作品となった『プーと大人になった僕』では最後に、原題そのままのタイトル「クリストファー・ロビン」を制作しました。プーがクリストファー・ロビンに語りかけるような歌ですが、映画を観たとき、どこかリチャードがウォルトと音楽制作に勤しんでいた頃を懐かしんでいるように聞こえました。
輝かしい時代に思いを馳せながら世界を愛でるのはプーの根源的な世界観でもあります。ディズニーの「くまのプーさん」を作り上げたシャーマンが最後に自らその世界観に飛び込んでいったようです。

ディズニープーはシャーマン兄弟と共に生まれ、シャーマン兄弟の生涯においても重大な意味を持つ作品であったことが歴史からも伺えます。
もう新作を手がけることがなくなったのは残念ですが、これからも幾多のアーティストが「くまのプーさん」や「ワンダフル・シング・アバウト・ティガー」を取り入れながら、新たなプー音楽を作っていってくれることでしょう。
TTFN

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ネタバレ感想「ファンタジースプリングス」4アトラクション

東京ディズニーシー第8テーマポート「ファンタジースプリングス」が6/6オープン。
プレスプレビューで一通り体験してきました。

4つのアトラクションの感想を、ネタバレがっつりある内容で書きます。

以降、アトラクション体験者前提、ネタバレありの内容です。





ネタバレ感想ここから

4つのアトラクションが4つとも絶賛レベルでした。
こんな褒めることになるなんて想像していませんでした。
なんだったんだよ魔法のものがたり。

フェアリー・ティンカーベルのビジーバギー

ダークライドかと思ったら屋外で、しかもライドの動力部分はレールに乗って動き座席部分は回転するという機構。
こんな機構のライドを屋外に作るとは。
昼と夜で美しさが変わるのも良かったです。
このアトラクションだけネバーランドのおまけ程度だろうと舐めていました。

ラプンツェルのランタンフェスティバル

ランタンを飛ばすシーンを本気でアトラクションにするためだけに存在するエリア。
そしてこのランタンが美しいんだから満点です。
空間作りは素晴らしくて、大量のランタンの中から一部は実際に上下し、さらに背景は映像でランタンが上がるという上手い組み合わせ。
音響もとても良くて、ラプンツェルとフリンの歌声が事前に響いていました。
ボートライドでキャラクターが歌うものだと、スモールワールドやカリブはその空間にいるみんなが歌うので部屋全体に歌が響きます。一方シンドバッドは1人で歌うので、スピーカーが1箇所になり部屋全体で歌を聞く感じにならないなと思っていました。
今回、ラプンツェルとフリンのボートにあるスピーカーからは歌声を多めに、他方向のスピーカーはBGMメインにしつつ歌声も流しているようでした。
ラプンツェルとフリンの方向から歌声が聞こえるように感じさせつつ、部屋全体に響き渡るという、非常に上手い音響でした。

ランタンシーンだけで良いと言いつつ、このアトラクションも屋外がすごい。
塔を建てて、そこにラプンツェルのアニマトロニクスを設置しています。
ボートに乗ってすぐから見えるので、長尺で歌ってもずっと見ていられるのが塔の上にいる良いところ。
あの高さにいるのに、瞬きして体まで揺れるというしっかりした作りです。
これを海風のくる舞浜に置くなんて、どんなメンテナンス考えているのか。
そう驚いていたら、さらに屋外にフリンとマキシマスのアニマトロニクスまで現れて度肝を抜かれました。

ピーターパンのネバーランドアドベンチャー

「第8テーマポート」と呼ばれていた頃からの大本命アトラクション。
当初は上海カリブ方式かと思っていましたが、どうやら3Dライドだぞとなり、結局スパイダーマンなのではとなっていました。
スパイダーマンはユニバーサルのアトラクションで、ディズニーがここまでライド左右に壁を作って視界を制限することはありませんでした。
これがスパイダーマンやハリーポッターのように作用するのかと思いきや、上海カリブの180°円形スクリーンに応用してきました。
まず3D映像が非常に精細でグラスをかけても明るいのが特徴です。
ライドはトラックを通るタイプで、土台の上で座席が揺れるのは最近よくあるパターン。
技巧的だったのは、座席の揺れ方を、最初に川に流れるボートとしての揺れを見せて、後に妖精の粉で浮かんだ浮遊感に揺れ方を変えたこと。
ライドの揺らし方だけでこの違いを感じさせるのはすごかったです。
映像と実物のシンクロもそつなくこなしていて、タイガーリリーの太鼓やロンドンの屋根など非常にシームレスでした。
とはいえこれだけなら最近よくあるライドをしっかり作った程度ですが、ここにピーター・パンという題材の妙が出てきます。
最初にピーターパンアトラクションの概要を読んだときに思った、上海カリブの浮遊感でピーターパンの海賊船をやれば完璧だという考えを、ちょっと違ったアプローチでやってきたのです。
上海カリブの浮遊感は、180°の円形スクリーンを見ながらライドが動いていくことで与えています。
ピーターパンも円形スクリーンを使うのですが、ライドの壁で左右の視界を制限することで、実際にはスクリーンの全てを見せない状態で円形スクリーンを移動していきます。
さらにライドの動きが繊細に設定されており、しっかりと浮遊感を与えていました。
実際のライド速度は結構ゆっくりで、スクリーンも低速で進んでいるのですが、もっとスピーディーに飛んでいるよう感じさせ、円形スクリーン体験時間を長く思わせています。
場所によっては、1つの円形スクリーンで2台のライド向けに2つの映像をながしている時間もあります。
さらに円形スクリーンのサイズも上海カリブに比べてかなり小さいため、何度もスクリーンを使えます。
上海カリブのような1回にかけた大スペクタクルもありですが、このように何度も浮遊感を与え続けるのもまた面白いし、土地のなさを別の角度から解決してきたなと思います。
また、アトラクションがそもそもネバーランドにあるため、ルートとしてはネバーランドから始まりロンドンへ行く形になります。
ハイライトであるYou Can Fly!のシーンを後半に持ってこれるのは強い。
そこからさらにピーターとティンクはネバーランドに戻るのですから、2段フィナーレのような豪華さがあります。
右から2番目の星が大きく輝きネバーランドが広がっていく様子は思わず感動の声が出てしまいました。
アバターに初めて乗ったときのようなピュアな歓声が出ました。
ラプンツェルのランタンといい、圧倒的なインパクトを残すシーンがあるアトラクションは素晴らしいです。

プレショーも良かったです。
透過スクリーンにピーターパンを映し、その背後にある壁には別途ピーターの影を投影。
奥行き感でリアルさを出すと同時に、ピーター自身と影が違う動きをすることでピーターパンらしさを演出しています。
ライドには入れきれなかったピーターパンの定番要素をここでしっかり出しています。

アナとエルサのフローズンアドベンチャー

どうせFrozen Ever Afterだろうと思い続けて数年。違った。
第8テーマポートのアトラクション概要を読んで最初に思った印象ほどれもまるで外れでした。
このアトラクションはまずQラインが豪華。
映像を使ってオラフが現れるタイミングがあるのは、海外版のオーケンのよう。
小道具も凝っていて、オルゴールの部屋などBGMも見事。
この辺り香港アナ雪エリアもですが、アナ雪が設定と音楽が豊富なことが効いています。
特にフローズンキングダムは、時代設定を曖昧にしつつ、映画2で登場した親時代のアレンデールやノーサンドラをうまく取り入れています。
これだけで1アトラクションの満足度があります。

そしてライド。
香港のFrozen Ever Afterに乗った時点で、ファンタジースプリングスを評価する基準は「日本語リップシンクするA1000アニマトロニクスがあるか」でした。
本当は4年前にベルのアニマトロニクスで日本にやってくるものだと信じていたのですが。魔法のものがたりショックによりファンタジースプリングスの評価基準は非常に低くなっていました。
そして無事、日本語リップシンクのA1000アニマトロニクスが登場したので、新エリアは大満足です。
もうラプンツェルだけで十分満足なのです。
それどころか、世界にあるA1000のうち半分はここにあるんじゃないかとという物量です。

Frozen Ever Afterと同じトロールのパピーによる回想から入ったと思ったら、いきなりマッピング映像が登場し、アナエルサ幼少期へ。
そして幼少期アニマトロニクスが現れてドアが回り、ライドも方向転換します。
まず、ライドが部屋に侵入するとアナに光が当たる演出が上手い。
とにかくこのライドは、ボートライドとはとても思えないタイミング管理がものすごいです。
そしてボート方向転換。Frozen Ever AfterのハイライトとしてLet it Go落下シーンに使われているもの。
その機構をいきなり投入したかと思ったら、その後も使いまくります。
箱根登山鉄道のようなジグザグ水路のボートライドです。
まず、ボート回転シーンは、ボートライドながら1シーンを長く見せる効果があります。Ever AfterはこれをLet it Goを聞かせるために使っていました。
この回転を多用することで、切れ目の少ない展開にできます。
さらに、前向きに進むシーンだけでなく後ろ向きに進むシーンが増えることで、シーンの見方も変わってきます。
従来のボートライドは、部屋で分割することでシーン展開を作っていました。
フローズンアドベンチャーでは、後ろ向きに進みながら前の部屋も見える前提で展開を作っていることがあります。
「生まれてはじめて」でアナの部屋を通ったあとにエルサが歌い継いで、アナの部屋もまだ見えるという状態。
幼少期の「雪だるま作ろう」でドアを回転させる演出も重なり、2人の関係を上手に表現しています。
映画を知っている人が再現を楽しむというだけでなく、ストーリーだけでなくキャラクター心情までしっかり伝えようという演出です。
どうやらボートを回転させるとその後に落下が必要という機構のようで、毎回ちょっと落ちます。
ここでは落下にシーンを一気に転換する役目を与え、「とびら開けて」に。
歌声の聞こえ方を使って、時計台から帆のシルエットに上手く視線誘導していました。
映像シーンになったと思ったら今度はアニマトロニクス多めで、エルサの魔法が暴発するシーンも登場。
地面から氷が出てきたり、噴水が氷になったり。プロジェクションも良い効果を出していて、現代技術が詰まっています。
1シーン内にしっかり展開があって、これがボートライドだということを忘れそうです。
そして、ボートライドで最も時間をかけられる巻き上げでLet it Goを投入。ボートが上がっていく間、じっくりエルサの歌を楽しめます。
落とすためではなく歌の尺を稼ぐために巻き上げのタイミングを使うという頭の良い設計です。
そこからさらにエルサ2体目。
氷の階段が伸びていく演出はよかったし、プロジェクションの効果がよく出ています。
さらにさらにエルサ3体目。
巻き上げ、カーブ、方向転換という3つの形で尺を稼ぎまくり、Let it Goをたっぷり歌唱します。
1曲をたっぷり聞かせたいなら、最新鋭のアニマトロニクスを3体置くくらい気合い入れないといけないんだよ。愛の芽生え、分かったか。
そして扉が閉まるタイミングも完璧。
曲に合わせてぴったり扉が閉まるのは気持ち良いですし、これが次のシーンにも良い影響を与えています。
Let it Goのシーンが、エルサがいる部屋の扉が閉まることで終わるということは、シーン終了時点で既にボートは次の部屋を進み始めているということです。
次の部屋の進行が早いため、アナが喋り始めた頃には既に横辺りを通過しています。
このことで、アナと会話しているエルサの声が聞こえる頃には、エルサがいるはずの位置からはボートが離れており、エルサの姿を作る必要がなくなっています。Let it Goに3体も使ったから節約大事。
さらにアナの胸に氷が刺さるシーンも、エルサを見せない方が効果的に演出できていました。
アナにプロジェクションで氷が刺さったことを表現するのはすごい。アニマトロニクスにプロジェクションを当てるなんて。
さらにアナが凍った姿を、アニマトロニクス全身へのプロジェクションで表現。
すごい。
映像の使い勝手の良さvsアニマトロニクスのリアルさはここ20年ほどの大きなアトラクションの動きだと思ってきましたが、どちらも取り入れたハイブリッド型をさらに超え、2つを直接繋げてしまうというすごさです。
リアルな動きにプロジェクションでの自在な展開が組み合わさり、アニメーションならではのフィナーレをアトラクションに実現させています。
これだけの乱れ打ちを受けたあとに、たくさんキャラクターが出て大団円を見せられたら、何に感動しているのかもうわからないような涙が出ました。

4つのアトラクション全てが、体験したことのないシステムを見られ、それが同時にオープンするというのは信じられません。
オーディオアニマトロニクスのレベルで言えば、間違いなく世界トップ。ティアナのバイユーアドベンチャーが太刀打ちできるのか心配になるレベルです。
ピーターパンも、理解できないほどのライドシステムではないものの、上手く取り入れて非常に感動的な体験を生み出していました。
そしてアナ雪は、物量勝負でも技術を活用した演出面でも圧巻です。
これまで世界最高ライドはStar Wars: Rise of the Resistanceでした。どれも知っているライドシステムなのに、組み合わせだけでここまでの体験に引き上げられるかという衝撃がありました。
アナ雪もそんな驚きがあり、それをストーリーの演出に繋げているという点では、RotRに引けを取りません。
パイレーツ・オブ・カリビアンに対するピーターパンも、スター・ウォーズに対するアナ雪も、結局個人的にディズニーアニメーション作品の方が好きなので、それをストーリー演出に繋げてこられたらその方が好きになりそうです。
スリルやアドベンチャーの海外パーク、ストーリーやエモーショナルな東京パークと考えれば、東京らしいアトラクションになったのではないかと思います。
世界最高ライドの座を堂々と争えるアトラクションだと思います。

とりあえず、体験した日のファーストインプレッションはこんな感じです。

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