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 - 駄話  - by poohya

ミュージカル「アナスタシア」を観た

『アナスタシア』は、1997年に公開された20世紀フォックスのアニメーション映画。
当時TSUTAYAのディズニーコーナーに置いてあったVHSを観ていて、後にディズニーではないと知ることになります。
ディズニー以外のプリンセスアニメーションとしては最高峰の作品として、特に主題歌「Journey to the Past」を中心に愛されてきました。
そんな中、ディズニーがフォックスを買収したことで、20世紀スタジオ作品としてディズニー傘下入り。
D23 Expo 2022では、ディズニープリンセスコンサートの際に、ディズニープリンセスではないけれどと言いながら、『アナスタシア』主題歌「Journey to the Past」が歌われ、アニメーションのダイジェスト映像まで流れました。
というわけでディズニー作品です。

ミュージカル版は、映画公開から20年後の2017年にブロードウェイで初演。
日本では2020年に日本人キャストによる公演が行われましたが、コロナ第1波でほとんどが中止となり、2023年にようやくきちんと公演できました。

アナスタシアは、帝政ロシア最後の皇帝ニコライ2世の娘。
ロマノフ家は1917年のロシア革命で退位し、翌年に一家ごと銃殺されました。
しかしアナスタシアだけは生き残ったという都市伝説が広まりました。
『アナスタシア』の物語はこの都市伝説をベースにしています。
後に遺体からアナスタシアのDNAが検出され、銃殺の事実が確定しますが、アニメーション公開当時はまだDNA鑑定ができず、都市伝説も残っていました。

ロマノフ家滅亡から月日が経ち、記憶喪失の少女アーニャは、サンクトペテルブルクでディミトリとブラドという2人組に出会いました。
ディミトリとブラドは、アナスタシアの祖母でパリに住むマリア皇太后がアナスタシアを見つけた人に懸賞金を出していると知り、ロシアで適当な女の子をアナスタシアに見立てて懸賞金を騙し取ろうと計画していました。
2人はアーニャをアナスタシアに見立てて教育しながらパリへ向かいます。
皇太后は詐欺だと思いアーニャのことも拒絶しますが、アーニャが持っていたオルゴールの鍵が皇太后の持つオルゴールと一致し、アーニャこそアナスタシアだと判明。
アナスタシアとしての身分を手に入れたアーニャですが、ディミトリと生きることを決めます。

ディズニーによるミュージカルは、「ライオンキング」に代表されるように、どういうスタイルの舞台を作るか趣向を凝らしています。
「アナスタシア」はミュージカルとしては奇をてらわないオーソドックスなスタイルです。

ストーリーも骨格は維持しつつ、ロシアにいるパートが長くなるなど、アナスタシア以外のキャラクターの心情描写を増やす舞台らしい変更が加えられています。
そして、アニメーション版の楽曲も使用していますが、曲順を大胆に入れ替えています。
特にすごいのが主題歌「Journey to the Past」。
アニメーションでは、孤児院を出たアーニャがサンクトペテルブルクを目指す、アーニャ初登場シーンの曲でした。
ミュージカルでは、第1幕ラストに移動させ、アーニャがパリに踏み入れるシーンに変更されました。
全く違うシーンですが、歌詞もそのままで、1幕分のアーニャの心情が詰まった歌に昇華されています。
D23 Expoでわざわざ歌われるほどのプリンセスソングを歌い切って第1幕が終わる、圧倒的なシーンになりました。
歌自体はアニメーション版そのままだから、特別イベントとしてミュージカルのアーニャ役が歌う背景にアニメーションの映像も流せます。

そして、アニメーションから最も大きく変えたのは、世界観のリアリティラインです。
アニメーション版のヴィランはラスプーチン。彼も史実の人物ですが、ここでは魔法使いに設定されています。
ロマノフ家の滅亡がラスプーチンの魔法として描かれ、銃殺描写を行わないようにしています。
その後もラスプーチンが魔法でアナスタシアの行く手を阻んでいきます。
それに対して、ミュージカル版ではヴィランを変更。
ラスプーチンは登場せず、ボリシェヴィキの将校グレヴというキャラクターが新たに作られ、彼がヴィランになります。
ロマノフ家滅亡も、ボリシェヴィキの銃撃隊による銃殺だと語られ、グレヴはその銃撃隊の子どもです。

アニメーションでは、物的証拠や魔法もあり、アーニャがアナスタシアであることが確定しています。
ミュージカルでは、アーニャが思い出していく記憶がアナスタシアのものだろうと思われ、みんながアーニャこそアナスタシアだと信じていく、状況証拠だけで組み立てられています。
最後まで「彼女は本当にアナスタシアだったのでしょうか」と言わせるほどです。
史実の都市伝説も、この人こそアナスタシアなのではないかという人物がいて、本人の供述も偶然なのかアナスタシアのものと一致していたそうで、ミュージカル版のアーニャの状況証拠では都市伝説と変わらないのです。

アーニャは記憶喪失で得られなかったHOME、LOVE、FAMILYを求めて「過去への旅」へと出かけます。
過去への旅の中でアナスタシア伝説に巻き込まれていきますが、ミュージカルではパリへ踏み出す瞬間に「Journey to the Past」を持ってくることで、アナスタシアとして過去への旅に出る決意を新たにしています。
そしてアナスタシアの祖母である皇太后と会い、自分は何者なのかを激しく問われます。
自分が何者か名乗るのは、グレヴの前でした。
(皇太后に聞かれて名乗れずグレヴに聞かれる時には名乗れるようになっている流れを見てるとdpost.jpの中の人の笑顔が浮かびます)
ボリシェヴィキ銃撃隊の息子というアナスタシアと対になった存在と向き合い、ついに自分がアナスタシアだと宣言するのです。
グレヴと向き合いアナスタシアだと宣言することは、自分を殺せと言うことと同義です。
プロローグでは難しい時代に「お祈り」頼みの様子を描いたり、第1幕でロシアの人々を描いたりすることで、革命後のロシアもひどいが帝政ロシアもロマノフ家以外は輝いていなかった姿も見えています。
アーニャはアナスタシアだと宣言し、ロマノフ家の血筋であることまで背負うのです。
プリンセスらしさとは人々への責任も示すことだという、ロイヤルさを見せています。

一方、これまでの騒動になる主犯のディミトリ。
彼は序盤の曲A Rumor in St.Petersburgで、「おとぎ話を信じるか?」と尋ねられ「世界中が信じるおとぎ話を作る」と答えます。
この物語は、詐欺師としておとぎ話を作ろうとしたディミトリが、自身が作ったおとぎ話に飲み込まれていく話でもあります。
詐欺師として全てを手に入れたと思ったディミトリが、ただ一つ失うものがあると気付き、その一つのために全てを捨てるのです。

アーニャもまた、アナスタシアとして生きても失うものがあることに気付きます。
こうしてアーニャはアナスタシアとしての身分を捨て、ディミトリと生きることに決めました。
アーニャにとって本当のHOME、LOVE、FAMILYを見つけたのでした。
自分はプリンセスなのか問い続けて旅をしたアーニャが、自分がプリンセスであることを受け入れた上でプリンセスを選ばない物語です。
プリンセスストーリーでありながら、プリンセスを追い求めそれを捨てることで、自分の人生を自分で選択することが強く描かれています。

ラストシーンでは、背景が絵画風に塗り変わり、おとぎ話らしさが強調されます。
ブラドも皇太后もみんな、アーニャがアナスタシアだと信じた上で、対外的にはおとぎ話に過ぎないと宣言して終わるのです。
幻想を追い求めても得られるものはないかもしれませんが、それでも世の中にはおとぎ話は必要なのだと思わせてくれる作品です。

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「Playdate with Winnie the Pooh」第1話を公開

ディズニージュニアの新シリーズ「Playdate with Winnie the Pooh」がスタートしました。
公式YouTubeで第1話が公開されています。

2分のミニシリーズで、プーたちが子供になった世界を舞台にしています。
第1話は三輪車の乗り方について。
プーはピグレットから三輪車の乗り方を習います。
ピグレットも三輪車で転んだトラウマを克服していきます。
乗り方は歌で説明。
TryとTricycleが掛かった歌です。

派生シリーズの「Me & Winnie the Pooh」も公開。
もっと短時間のシリーズかと思っていましたが、「Playdate with Winnie the Pooh」と同じ2分のようです。
初回は、Vlog形式で、プーが自己紹介をしています。
プーもピグレットもこれまでとまるで異なるツリーハウスに住んでいるようですが、舞台は100エーカーの森だそう。
友達紹介では、「ビー」という新キャラクターが登場。
ゴーファーのような姿なので地リスでしょうか。
なお、みんな子供になっているので、カンガは登場してもルーは登場しない模様です。

ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーでは、記念イベント「Disney Junior Playdate」に出演。
パレードでは、ミッキーとミニーの間にプーが立つ主役優遇です。
普段パークに出ているプーですが、服が新シリーズと同じパーカーになっています。

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プーが子供になる新シリーズ「Playdate with Winnie the Pooh」8/18放送開始 予告編を公開

ディズニージュニアの新シリーズ「Playdate with Winnie the Pooh」の予告編が公開されました。
プーたちが子供になって一緒に遊ぼうといった趣旨のミニシリーズです。

よりずんぐりむっくりした姿のプーは、白目があり、赤い服もパーカー風になっています。
また、声は子供っぽくなっており、声優がジム・カミングスから大きく変更されました。
ティガーがハーモニカを習ったり、ピグレットと凧揚げをしたり、イーヨーが絵の具で遊んだり、ラビットがアボカドを食べたり、カンガとかくれんぼをしたりする内容になります。
カンガも子供になるため、ルーが出てこない模様。
視聴者獲得よりも、この絵柄で子供向けグッズ展開をしたいという意図がダダ漏れです。

予告編の左下にはロゴが出ていますが、冒頭は「Me and Winnie the Pooh」、途中から「Playdate with Winnie the Pooh」になっています。
本編は「Playdate with Winnie the Pooh」で、それを1〜2分により短くし、ディズニージュニアのCM中に挿入できる形にしたものが「Me and Winnie the Pooh」のようです。

米国での初回放送は8月18日。
第1話は「Harmonica」。
3日連続放送で「Mystery Jar」「Cardboard Box」と続くようです。
ディズニープラスでも配信予定ですが、配信日は発表されていません。

初回放送から3日間、カリフォルニア ディズニーランド・リゾートでは、「Disney Junior & Friends Playdate」というイベントが開催されます。
ディズニージュニアのキャラクターがパレードをするなどいくつかのコンテンツが展開されます。
開催日とイベント名からしても、「Playdate with Winnie the Pooh」を中心としたイベントなのは確かでしょう。
初日には「Playdate with Winnie the Pooh」プレミア上映も行われます。
パレードにはプーとティガーも出演します。ソフィアと同じパレードに出るの個人的にアツい。

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プーミュージカルが日本上陸「ディズニー くまのプーさん」2024春上演


新作ミュージカル「ディズニー くまのプーさん」の日本初演が決定。
2024年春にジャパンツアーが公演されます。

「Winnie the Pooh: The New Musical Adaptation」として、2021年10月にオフブロードウェイで公演が始まったもの。
その後全米ツアーやロンドン、オーストラリア公演が行われています。
日本で「はちみつの日」に発表されたため、本国側が夜でまだ反応していませんが、恐らく初の非英語圏での公演になります。


アメリカ公演より© 2023 Disney, All Rights Reserved

このミュージカルは、パペットを用いたミュージカルを得意とするロックフェラープロダクションが制作。
ディズニーシアトリカルグループが協力している、ディズニーのオフィシャルな公演です。
音楽はシャーマン兄弟のものを使用しているのも売りになっています。

全米ツアーでは、小さな劇場を1日単位で回っており、ファミリー向けの小規模なもの。
昔あった「ディズニーライブ」のような規模感でやるのではないかと思います。
そのうち日本に来そうだけれど言語の壁がなと思っていたら、意外と早く来ました。

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「くまのプーさん FAN BOOK」に寄稿しました


「くまのプーさん FAN BOOK」が、講談社から2023年8月3日(木)に発売されました。
ムック内のコラムに寄稿しています。

2022年10月号から、ディズニーファンのプーのコーナー「プーさんのこと、いろいろ」に、不定期でコラムを書いています。
プー棒投げ、吹替声優、バーニー・マティンソン追悼など、「いろいろ」にも程があるだろうというくらい書いています。
そして今回わディズニーファン編集部から、プー史上初のファンブックが発売されるということで、結構な量のコラムを寄稿しました。


「くまのプーさん FAN BOOK」は、可愛い表紙を開くと、プーたちのキャラクターをイラスト満載で紹介しています。2章では映画をベースに、また画像いっぱいで物語を紹介。最後の章には季節ごとの装いを楽しむプーたちのイラストコーナーもあります。プーの可愛いイラストをたっぷり楽しめる一冊です。
そんな可愛いイラストの間に、がっつりコラムが入っています。
僕は、3章「ウォルト・ディズニーとくまのプー」「東京ディズニーランドのプーさん」、4章「A.A.ミルンと息子の物語」「原作のお話から〜選り抜きエピソード」、5章「プーのトリビアA to Z」を寄稿しています。
他にも、日本で発売されたプーグッズの歴史をメーカーインタビューで巡るコラムや、音楽や英語についてディズニーファンでおなじみのライターが書かれたコラムなど、かなり興味深いページが続きます。

ディズニーファンでは、2001年4月増刊号で「くまのプーさんスペシャル」としてプーだけの増刊号を出しました。当時はプーさんのハニーハントのオープン直後で、パークを中心に旬の話題に重きをおいた一冊でした。
今回はムックとして、より保存版の意味合いが強まっています。
プーは原作に関する書籍は出ていますが、ディズニープーの歴史をまとめた資料はほとんどありません。それがディズニーファン責任編集の形で出版されることは意義あることだと思っています。
ディズニープーのコラムは、ウォルトとプーの出会いからプー僕まで、全劇場公開作品を取り上げながら60年の歴史をまとめています。前章の可愛い映画ストーリー紹介と合わせて読めるのも、ディズニーファン編集部だからできることです。
原作のコラムも完全書き下ろしでまとめました。原作の歴史を見る資料は何冊もありますが、ミルンが書いた物語がディズニープーに繋がるという歴史を踏まえた上で、原作とディズニーを繋ぐように書いています。
トリビアはAtoZ形式で、コラムに収まらないプーの話題を集めました。
これまでプーについて学んできたことの集大成のようなコラムにできたと思います。
可愛い見た目のムックですが、そこらへんの新書よりも「プーのすべてがわかる」と名乗れる内容です。
ぜひ読んでいただければとても嬉しいです。

「くまのプーさん FAN BOOK」
ページ数:96ページ
オールカラー・カバー付き
定価:2750円(税込)

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