「 駄話 」 一覧
- 駄話 - by poohya
ディズニーファンで新連載が始まりました
ディズニーファン12月号で新連載「DFAN レジェンド・ルーム」が始まりました。
この新連載を担当することになりました。
2色刷りのコラムページで、毎月、ディズニーレジェンドないしレジェンド級の偉い人について語っています。
dpost.jpの宮田さんと2人で自由に喋って、それをコラムとしてまとめてもらうという形式です。
初回はいきなりレジェンド関係なく、ウォルト・ディズニー。
テーマが大きすぎる。
すでに複数回分を喋っていて、これから毎月いろいろな人物についての話が載ります。
ディズニーファンで毎月の連載になって、しかも宮田さんと喋るなんて、想像もしなかった企画です。
まだ自分でも驚いています。
というわけでぜひ読んでください。
ちなみに12月号では、「プーさんのこと、いろいろ」にも書いています。こちらはディズニージュニア系のプーTVシリーズについてです。
- 駄話 - by poohya
2024年間ベスト
こういうものは普通年内に出すものです。遅くても年明けすぐでしょう。
気付いたら年末年始が終わったので今さら書きます。
2024年はディズニー映画がつまらなかったという言い訳もありますが、個人的にエンタメ摂取量が少ない年でした。
その中で面白かったものを記録しておきます。
テーマパーク
10年に一度レベルの国内テーマパーク大規模開発イヤーでした。特に春休み近辺は忙しかったです。
国内勢だけでもイマーシブ・フォート東京やジブリパーク魔女の谷、USJドンキーコング・カントリーなどかなり強いラインナップでしたが、振り返ってみても結局ファンタジースプリングスが最強でした。
アトラクション「アナとエルサのフローズンジャーニー」
あまり期待していなかった(アイガーの話も高野さんの話もイマジニアの話も信用していなかった)の申し訳ないというクオリティ。
詳細はファンタジースプリングスの感想に書きましたが、世界トップのアトラクションになりました。
ネタバレ感想「ファンタジースプリングス」4アトラクション|舞浜横丁
最新のオーディオアニマトロニクスがもつ脅威の表現力と、その技術ありきで作られた構造。
アトラクションでしか描けない表現方法で映画の物語を伝えてくる、これぞディズニーらしいアトラクション作りであり、世界のアトラクションの評価はフローズンジャーニー以前と以降で分かれると思います。
D23でリメンバー・ミーやミラベルのボートライドが発表されましたが、フローズンジャーニーが評価基準になりますし、そもそも今後ボートライドを次々と作ることになったのもフローズンジャーニーの功績なんだと思います。
ショー「クロミライブ」
ライブショーのベストは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの「クロミライブ」でした。
例年セサミのショーを公演しているステージに、クロミとマイメロが初登場したショー。
クロミのライブにマイメロも乱入してきて、2人でライブを繰り広げるのですが、生演奏に生のシンガーも入ってきて、その構成が見事でした。
クロミのキャラクターを完璧に理解していて、海外シンガーの使い方などもクロミらしくて素晴らしい。
サンリオのショーでもピューロランドでは作れないものでしょう。
ピューロもハーモニーランドもあるのにUSJにキティがいる意味が問われがちですが、USJでしか作れないサンリオショーになっていて非常に良かったです。
イベントショー「ミニー@ファンダーランド」
スペシャルイベントのエンターテイメントでは、ディズニー・パルパルーザの「ミニー@ファンダーランド」が良かったです。言わずもがなですが。
最近この手のイベントショーはパリが良く作っていましたが、東京も本気を出してきた。
完全にオタク向けに振り切っていて、潔い閑散期ショー。
キャッスルフォアコートの活用も上手かったですし、フロートがフロートを追い抜く姿なんて初めて見ました。
このキャッスルフォアコート方式を他でも展開するのかなと思ったら、今年のパルパルーザは通常のパレードルート3回停止のようですし、広がらなくて予想外でした。
ライブ「D23 Disney Experiences Showcase」
D23イベントでのパーク講演。
生演奏を常時用意しながら、次々と俳優が出てくる姿はエンターテインメント企業の真髄を見せられました。
そこに、最新発表としての興奮が続々と与えられたのですから、格別な体験でした。
D23: The Ultimate Fan Eventに行った|舞浜横丁
映像
虎に翼
2024年はもうこれしかないでしょう。
虎に翼の話をするために年間ベストを書いているようなものです。
歴代朝ドラの中で良かったとかそんなレベルではありませんでした。
第1話の冒頭から引き込まれ、最終回、そして紅白特別ドラマまでどっぷりと浸かりました。
日本初の女性弁護士を主人公にした、憲法14条の実写化です。
完全な悪役もいなければ完璧な人物もいない中で、あらゆる問題を取り上げ、あらゆる人と向き合い救っていました。
自分ごとであったり、自分では気付けていなかった視点を得たり、知識として小学生の頃から知ってはいた憲法14条がここまで意味を持って見えてくるとは、考えたことすらなかった体験でした。
第1話での日本国憲法発布がまさかこんなに早く回収され、それがプロローグに過ぎなかったとは、その濃密さに慄きます。
ディズニーがいくらすごいメッセージを打ち出してきても、この物語に敵うとは思えない。
これを毎日2,000万人が見ていたという事実だけですごいことです。
唯一の欠点が、時間が足りないことという濃密なドラマ。
最終週の構想であったという、90年代の優未編も見てみたかったです。
きっと今後何十年も生きる支えとなり、このドラマに恥じない人生を送ろうと思える、名作中の名作でした。
The Last Verse
リチャード・シャーマン追悼動画
D23のリチャード・シャーマン追悼パネルで公開されました。
リチャードが生前最後の仕事として遺した「小さな世界」の新歌詞が明らかにされました。
イッツ・ア・スモールワールドが持つ力と歴史を端的に表現し、会場のみんなが号泣するような動画の中にも笑い声が混ざるユーモアもあり、まさにディズニーの映像作り。
本当に亡くなったんだなと実感もさせてくれた映像でした。
光る君へ
またNHKですが、大河ドラマも良かったです。
源氏物語の紫式部を主人公にした文学大河。
鎌倉殿の13人も面白かったですが、史実がわからないことが多い昔の方が面白く描けますね。
とはいえ「光る君へ」では、紫式部と藤原道長がソウルメイトという、ドラマの根本部分がものすごいフィクションというあまりに大胆な設定となっています。
史実を見失いかけるので、毎週更新されていた美術館なびの「回想」がありがたかったです。
この時代に解説でも考察でもなく「回想」というタイトルがおしゃれ。時系列順ではなく、最も残ったシーンを振り返った後で関連するように他シーンも辿る構成も面白かったです。
序盤からずっと源氏物語成立までのまひろ(紫式部)の背景と、道長サイドの政治的背景を描き続け、8月になってようやく源氏物語を書き始めるのもすごかった。
源氏物語の成立も当然良かったですが、その前に出てきた枕草子の成立が心に残りました。
紫式部と清少納言の対立はほとんどなく仲良しとして描かれる中で、作品としての陰と陽の対比ははっきりと描かれました。
その中で、枕草子が敗者の文学として描かれたのが、知らなかった捉え方でした。実際に最近の研究ではそう捉えられているようです。
昔暗唱させられた文章が、ただ四季を美しく描くだけでなく、輝かしかった頃を懐かしむように描いた背景を持つと、その美しさがぐっと増しました。
あえて関連付けると、「クマのプーさん」の原作の成立と受容も、WW1を経て世界の中心から外れていく英国におけるヴィクトリア期への郷愁があると考えています。それに通じる感覚でした。
2024年じゃないけれど見たもの
2024年にできたわけではないけれど、自分が2024年に体験して良かったもの
ヴェロキコースター
フロリダのユニバーサル・アイランズ・オブ・アドベンチャーのアトラクション。
『ジュラシック・ワールド』シリーズをテーマにしたコースターで、ヴェロキラプトルのように疾走するコースターです。
テーマ性とかではなく、ただただコースターとして名機。
単純にコースレイアウトが良すぎる。気持ち悪さが一切なく、ひたすら爽快なコースターでした。
ウィキッド
日本公開は2025年3月です。これを観るために韓国まで行きました。
ミュージカル版も好きですが、その音楽を見事に映像化。
劇団四季版しか見ていないのでブロードウェイ版は分かりませんが、映画では2人の学生らしさがよく出ていて、感情の振り幅への説得力が増していました。
ウィキッドの話の構成上、曲もストーリーも第1部に集中しているので、映画パート2がどうなるのか心配でしたが、これならパート2にも期待できそうです。
観てからずっと映画サントラを聴いています。
早く公開してくれ。公開されたらドルビーシネマが良いと思います。
- 駄話 - by poohya
Disney100がたぶん終わった
2023年が終わり、Disney100もたぶん終わります。きっと紅白が見納めになったのでしょう。
D23 Expoあたりからぬるっと始まったDisney100。日本は結局グッズイベントだなと思っていたら、日本はまだ頑張っている方といったくらいで、ぬるっと終わりそうです。10/16の100周年当日にはアナハイムが祝い終わっていた始末。
日本は周年好きなのとレトロが流行るタイミングでオールドデザインがハマったのが上手くいった印象。40周年を食い潰しました。
本当は『ウィッシュ』でもっとディズニーが今どういうウィッシュを描くのかを考えたかったのですが、こんなに薄っぺらい話だと深く捉えてもほとんどが自分の考えを元にした意見なだけになってしまうので、考えることをやめました。
ベスト映画は『リトル・マーメイド』、次点『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol3』です。
ディズニー以外だと朝ドラ「らんまん」。最終週がすごかった。長い物語の終わらせ方として史上屈指の名作でした。
ワンダラス・ジャーニーの最後、普通なら良いメッセージを語る部分で、まさかのプーが登場しボケをかまします。
「Disney100 センチュリー・オブ・ドリームス」でも繰り返されました。
もう一度最初のページに戻ってやり戻そうというプーに対して、ナレーターがツッコミの形で未来へ進むことを語るのです。
このシーンは『くまのプーさん 完全保存版』の最終章の導入にあたります。
最終章だと告げられ、もう一度1ページ目に戻ろうとプーがいうシーンです。
その後、プーはクリストファー・ロビンから遊べなくなることを告げられ、100歳になってもここにいることを約束します。
プーは1ページ目に戻るのではなく、同じようなことをやり続け、100年の歳月を過ごしていきます。
歴史は繰り返すのではなく韻を踏むだけというドロッセルの名言(本当はマークトウェインの言葉)のように、過去に戻るのではなく韻を踏みながら前に進んでいくという姿をディズニーのこれからの100年に見ていきたいなと思います。
来年は東京の超大勝負ファンタジースプリングスが待っています。
良いお年を。
- 駄話 - by poohya
ミュージカル「アナスタシア」を観た
『アナスタシア』は、1997年に公開された20世紀フォックスのアニメーション映画。
当時TSUTAYAのディズニーコーナーに置いてあったVHSを観ていて、後にディズニーではないと知ることになります。
ディズニー以外のプリンセスアニメーションとしては最高峰の作品として、特に主題歌「Journey to the Past」を中心に愛されてきました。
そんな中、ディズニーがフォックスを買収したことで、20世紀スタジオ作品としてディズニー傘下入り。
D23 Expo 2022では、ディズニープリンセスコンサートの際に、ディズニープリンセスではないけれどと言いながら、『アナスタシア』主題歌「Journey to the Past」が歌われ、アニメーションのダイジェスト映像まで流れました。
というわけでディズニー作品です。
ミュージカル版は、映画公開から20年後の2017年にブロードウェイで初演。
日本では2020年に日本人キャストによる公演が行われましたが、コロナ第1波でほとんどが中止となり、2023年にようやくきちんと公演できました。
アナスタシアは、帝政ロシア最後の皇帝ニコライ2世の娘。
ロマノフ家は1917年のロシア革命で退位し、翌年に一家ごと銃殺されました。
しかしアナスタシアだけは生き残ったという都市伝説が広まりました。
『アナスタシア』の物語はこの都市伝説をベースにしています。
後に遺体からアナスタシアのDNAが検出され、銃殺の事実が確定しますが、アニメーション公開当時はまだDNA鑑定ができず、都市伝説も残っていました。
ロマノフ家滅亡から月日が経ち、記憶喪失の少女アーニャは、サンクトペテルブルクでディミトリとブラドという2人組に出会いました。
ディミトリとブラドは、アナスタシアの祖母でパリに住むマリア皇太后がアナスタシアを見つけた人に懸賞金を出していると知り、ロシアで適当な女の子をアナスタシアに見立てて懸賞金を騙し取ろうと計画していました。
2人はアーニャをアナスタシアに見立てて教育しながらパリへ向かいます。
皇太后は詐欺だと思いアーニャのことも拒絶しますが、アーニャが持っていたオルゴールの鍵が皇太后の持つオルゴールと一致し、アーニャこそアナスタシアだと判明。
アナスタシアとしての身分を手に入れたアーニャですが、ディミトリと生きることを決めます。
ディズニーによるミュージカルは、「ライオンキング」に代表されるように、どういうスタイルの舞台を作るか趣向を凝らしています。
「アナスタシア」はミュージカルとしては奇をてらわないオーソドックスなスタイルです。
ストーリーも骨格は維持しつつ、ロシアにいるパートが長くなるなど、アナスタシア以外のキャラクターの心情描写を増やす舞台らしい変更が加えられています。
そして、アニメーション版の楽曲も使用していますが、曲順を大胆に入れ替えています。
特にすごいのが主題歌「Journey to the Past」。
アニメーションでは、孤児院を出たアーニャがサンクトペテルブルクを目指す、アーニャ初登場シーンの曲でした。
ミュージカルでは、第1幕ラストに移動させ、アーニャがパリに踏み入れるシーンに変更されました。
全く違うシーンですが、歌詞もそのままで、1幕分のアーニャの心情が詰まった歌に昇華されています。
D23 Expoでわざわざ歌われるほどのプリンセスソングを歌い切って第1幕が終わる、圧倒的なシーンになりました。
歌自体はアニメーション版そのままだから、特別イベントとしてミュージカルのアーニャ役が歌う背景にアニメーションの映像も流せます。
そして、アニメーションから最も大きく変えたのは、世界観のリアリティラインです。
アニメーション版のヴィランはラスプーチン。彼も史実の人物ですが、ここでは魔法使いに設定されています。
ロマノフ家の滅亡がラスプーチンの魔法として描かれ、銃殺描写を行わないようにしています。
その後もラスプーチンが魔法でアナスタシアの行く手を阻んでいきます。
それに対して、ミュージカル版ではヴィランを変更。
ラスプーチンは登場せず、ボリシェヴィキの将校グレヴというキャラクターが新たに作られ、彼がヴィランになります。
ロマノフ家滅亡も、ボリシェヴィキの銃撃隊による銃殺だと語られ、グレヴはその銃撃隊の子どもです。
アニメーションでは、物的証拠や魔法もあり、アーニャがアナスタシアであることが確定しています。
ミュージカルでは、アーニャが思い出していく記憶がアナスタシアのものだろうと思われ、みんながアーニャこそアナスタシアだと信じていく、状況証拠だけで組み立てられています。
最後まで「彼女は本当にアナスタシアだったのでしょうか」と言わせるほどです。
史実の都市伝説も、この人こそアナスタシアなのではないかという人物がいて、本人の供述も偶然なのかアナスタシアのものと一致していたそうで、ミュージカル版のアーニャの状況証拠では都市伝説と変わらないのです。
アーニャは記憶喪失で得られなかったHOME、LOVE、FAMILYを求めて「過去への旅」へと出かけます。
過去への旅の中でアナスタシア伝説に巻き込まれていきますが、ミュージカルではパリへ踏み出す瞬間に「Journey to the Past」を持ってくることで、アナスタシアとして過去への旅に出る決意を新たにしています。
そしてアナスタシアの祖母である皇太后と会い、自分は何者なのかを激しく問われます。
自分が何者か名乗るのは、グレヴの前でした。
(皇太后に聞かれて名乗れずグレヴに聞かれる時には名乗れるようになっている流れを見てるとdpost.jpの中の人の笑顔が浮かびます)
ボリシェヴィキ銃撃隊の息子というアナスタシアと対になった存在と向き合い、ついに自分がアナスタシアだと宣言するのです。
グレヴと向き合いアナスタシアだと宣言することは、自分を殺せと言うことと同義です。
プロローグでは難しい時代に「お祈り」頼みの様子を描いたり、第1幕でロシアの人々を描いたりすることで、革命後のロシアもひどいが帝政ロシアもロマノフ家以外は輝いていなかった姿も見えています。
アーニャはアナスタシアだと宣言し、ロマノフ家の血筋であることまで背負うのです。
プリンセスらしさとは人々への責任も示すことだという、ロイヤルさを見せています。
一方、これまでの騒動になる主犯のディミトリ。
彼は序盤の曲A Rumor in St.Petersburgで、「おとぎ話を信じるか?」と尋ねられ「世界中が信じるおとぎ話を作る」と答えます。
この物語は、詐欺師としておとぎ話を作ろうとしたディミトリが、自身が作ったおとぎ話に飲み込まれていく話でもあります。
詐欺師として全てを手に入れたと思ったディミトリが、ただ一つ失うものがあると気付き、その一つのために全てを捨てるのです。
アーニャもまた、アナスタシアとして生きても失うものがあることに気付きます。
こうしてアーニャはアナスタシアとしての身分を捨て、ディミトリと生きることに決めました。
アーニャにとって本当のHOME、LOVE、FAMILYを見つけたのでした。
自分はプリンセスなのか問い続けて旅をしたアーニャが、自分がプリンセスであることを受け入れた上でプリンセスを選ばない物語です。
プリンセスストーリーでありながら、プリンセスを追い求めそれを捨てることで、自分の人生を自分で選択することが強く描かれています。
ラストシーンでは、背景が絵画風に塗り変わり、おとぎ話らしさが強調されます。
ブラドも皇太后もみんな、アーニャがアナスタシアだと信じた上で、対外的にはおとぎ話に過ぎないと宣言して終わるのです。
幻想を追い求めても得られるものはないかもしれませんが、それでも世の中にはおとぎ話は必要なのだと思わせてくれる作品です。
- 駄話 - by poohya
3D、VR、AR、映像アトラクションの行方
来年には東京ディズニーシーにファンタジースプリングスがオープンします。
最大のアトラクションとなるピーター・パンのライドは、3Dメガネをかける形式っぽく、となると3Dボートライドという得体の知れないライドになります。
フィルハーマジックの『リメンバー・ミー』アップデート

3Dアトラクションはシアタータイプとして昔からありますが、飛び出て見えることが大きな売りでした。
しかし今やもはや飛び出るだけでは驚かれない技術となっています。
印象的なのは、3Dシアター時代に誕生した「ミッキーのフィルハーマジック」が最近実施した『リメンバー・ミー』シーンの追加。
フィルハーは典型的な飛び出て見えるシアターアトラクションですが、そこに15年以上経って新映像が追加されました。
『リメンバー・ミー』は死者の国の街並みを奥行きを持って描くことに重きを置いており、飛び出てこない3Dでした。
他のシーンとの違いが際立っていました。
ただ、3Dが奥行き使用メインになると、映画館との差異はより失われていきます。
そこにどうテーマパークらしさを付加するのか、シアターではないアトラクション要素に3Dを組み合わせていくことになります。
シアター形式からの進化
普通の座席で映像を見るシアターが進化したのが、座席が浮いてスクリーンに入って行く「ソアリン」。
ソアリンは球面スクリーンを用いていますが、これを3D映像にすることで平面スクリーンにして、キャパシティを増やしつつ端から見た時の映像の歪みもなくしたのが、「アバター:フライト・オブ・パッセージ」です。
一方、既存ライドの映像部分に3Dを取り込んだのが、「ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー」。
ただこれは3Dを導入したものの、後に3D無しに戻りました。
なんでも3Dにすれば良くなるわけではないことが、示されてしまった形です。
実際、ハリー・ポッターは映像以外のシーンの比率も高いので、3Dで視界が暗くなるのはデメリットが大きすぎたと思います。酔うし。
VRコースターは到達点へ
世の映像コンテンツとしては、3Dの次はVRの時代となっていますが、これまたテーマパークではアトラクションと組み合わせることでここだけの体験を作り出しています。
USJではXRライドを何年も映像を変えて運行しています。
XRライドの特徴は、既存のコースターの物理的なスリルをVRに加えられることです。
本来VRは映像だけでもスリルを与えられますが、実際にコースターが落ちていることでよりスリルは増しますし、風なども当然リアルに感じられます。
XRライドは様々なコラボを行なってきました。
「鬼滅の刃 XRライド」はオーソドックスな演出で、キャラクターの見せ場とコースターの落下が連動するパターンを繰り返しています。
開催中の「進撃の巨人 XRライド」は最高傑作だと思います。
鬼滅ではライドが列車になっていて行き先が見えたのに対し、進撃ではゲストの目がVRゴーグルで塞がれて本来のコースが見えないことを利用しています。
コースターらしいアップダウンは、巨人の腕を登るなど動きのあるアクションで演出することで、どう落ちるか分からないスリルが味わえます。
立体機動という空中を利用したアクションが行えるのもコンテンツとの相性の良さでしょう。
さらに、落ちてくる岩を避けてとキャラクターから指示が入り、VR映像なので本来関係ない動作をさせられるわけですが、コースターとは関係ない動きも促すことで、ゲストの気を散らして没入感やスリルを増させています。
シューティングライド 3DかARか
スーパーニンテンドーワールドの「マリオカート〜クッパの挑戦状〜」は、ARを活用しています。
VR(仮想現実)が視界を全てCGで作り込むことに対して、ARは拡張現実。
実際の視界に、映像を付け足す仕組みです。
ARでは実際の視界の作り込みが活かされるので、テーマパークにはプロップス作りの優位性があります。
マリオカートでは、この技術をシューティングライドに使ってきました。
シューティングといえば「トイ・ストーリー・マニア!」が3Dを使っています。
このとき3DとARの違いは、視線の先がスクリーンかプロップスかに出てきます。
トイマニでは、ステージが終わる毎にライドが動き、次のステージへ向かいますが、向かった先もスクリーンなので、動き続けるライドというアトラクションの効率のために動いているだけです。

DCAの「WEBスリンガーズ:スパイダーマン・アドベンチャー」では、3Dシューティングはそのままに、シューターがゲストの手を読み取るシステムに進化しています。
これにより両手でスムーズに撃てるようになりましたが、スクリーンからスクリーンに移動する形は変わりません。
マリオカートではシューターはハンドルになっており、打つ方向はARグラスを用いて視線で決めるシステムです。
さらに打てる甲羅の数が決まっており、シューティングアトラクションが陥るひたすら連打するだけの状態から解放され、打つタイミングの戦略が必要になります。
打つ・打たないのタイミングがあることで、周りを見る余裕もでき、ARならではのプロップスや空間の作りに入り込みやすくなります。
ここにきてVRウォークスルー
ARとして一発目とは思えない高い完成度のアトラクションを作ったUSJですが、再びVRのアトラクション「XR WALK」をオープンさせました。
何もない箱でVRゴーグルを付けて歩き回る、かなりオーソドックスなスタイルです。
コンテンツは、第一弾としてモンスターハンターを展開中です。
XR WALKのすごいところは、自分でアバターの衣装や武器を選べるところ。
ディズニーではVOIDがスター・ウォーズなどのVRウォークを行ってきましたが、この辺りが明らかに違い技術の進歩を感じます。
さらにスター・ウォーズではブラスターを撃つだけだったのが、モンスターハンターでは剣を振る短距離戦が行えます。
武器によって特性があり、終了後にもらえるスコアにも影響するので、得意な武器を見つけたり、チーム内で分担したり、何度も楽しめるシステムになっています。
VRブームとはいえ、一本橋のようないわゆるVRアトラクションっぽいことを体験している人はそんなに多くない現状。
XR WALKでは前半にフィールドを歩き回るアクティビティが用意されており、ただ戦闘するだけのVRではなく、VRらしい足がすくむ感じや落ちる感じを体験できるようになっています。
ここでは採集ミッションを入れることで、リピーターもある程度まで楽しめる仕掛けを用意。
要所要所でしっかりリピーター向けの配慮を入れてくるのはさすがです。
ここはVRがもっと広まっていけば構成も変わっていくのでしょう。
フリーウォークと言えども実際に歩ける範囲は物理的な制約があるわけで、今回進むべきルートは導蟲を使うことで世界観を崩さずに示せています。
一方これ以上行けない境界はただの赤い壁で、ゲスト同士が近付いても壁が出てくるので、大体の人は見てしまうような世界観から外れたものになってしまっています。
特に戦闘時など、その場で立った状態で剣を振るのですが、説明はないので歩き回れるのかと思ってしまいます。
せっかく氷の上なのだから、氷が割れて自分のスペースだけ独立しているような演出をとれば伝わりやすいのにとか、まだ改善の余地は感じます。
しかしモンスターハンターを知らなくても非常に体験価値の高いもので、USJにはVRアトラクションを何本も作り続けてきたノウハウがしっかりあることが伝わってきます。
テーマパークの優位性とは
XR WALKはテーマパークらしさはノウハウにもたらされており、テーマパーク内に置くべき物理的な制約はありません。
ディズニーのVOIDもダウンタウンディズニーなどパーク外にありました。
XRライドも初期から指摘されている、ゴーグル装着の人海戦術や元のアトラクションからキャパが半減していることが、一切解決されずに続いています。
マリオカートではこれを解決するシステムがふんだんに取り入れられていますが、これはARで激しくないアトラクションだからやりやすいことでもあるのでしょう。
USJにおけるVRアトラクションとARアトラクションの最大の差は、VRはどちらも期間限定で半年程度で内容を変えるものであり、ARのマリオカートは常設アトラクションであることです。
VRなど物理的な制約の少ない映像アトラクションは、頻繁に内容を更新できる利点があります。
他社IPとのコラボで予算のかかった期間限定アトラクションを作るのはUSJの独自性のようになっており、他のパークではあまりありません。
ディズニーでは「スター・ツアーズ:アドベンチャー・コンティニュー」が新映像を定期的に導入していましたが、それでもUSJのクールジャパンの頻度とは比べものになりません。
フィルハーマジックが15年も同じ映像でやっていたことからも、新映像は意外と面倒そうなことが伝わってきます。
ディズニーでは、映像アトラクションが切り替えやすいという利点を、ランダム体験に利用している傾向があります。
スター・ツアーズではシーン毎にパターンが用意されており、組み合わせでかなりの種類の体験があります。
「ニモ&フレンズ・シーライダー」はパターン切り替え時の映像がかなりシームレスになっています。
「ミレニアム・ファルコン:スマグラーズ・ラン」は、さらに進化してリアルタイムにレンダリングして映像を出しています。
これは3Dではなく、自身の操縦によって映像が変わっていくというもの。
ここまでくると逆にゲームセンターにあるようなゲームとの差異が分かりにくくなってきます。
特にスター・ウォーズだとバトルポットがあるので、テーマパークでわざわざ体験するアトラクションとしては弱めになってしまいます。
映像アトラクションの切り替えやすいという利点は、ランダム性になり、やがてインタラクティブ性になってきています。
インタラクティブになるほど、ゲームに近づいていき、さらに同時体験人数が少ない方が操作の反映が大きくなるため、体験するチームは小型化。
テーマパークのアトラクションの優位性が薄れていってしまいます。
結局、ライドアトラクションでプロップスと映像の組み合わせが、テーマパークらしい映像アトラクションを作る方法になる気がします。
上海のカリブの海賊のように、プロップスを置きつつ、奥行き演出のある映像や、全面スクリーンで迫力を出すのが最適解のよう。
全面スクリーンによる海中から浮上するシーンの臨場感は映像ならでは。
ファンタジースプリングスが同じものをピーターパンの海賊船でやってくれるならそれだけで満点でしょう。
しかし、3Dグラスとプロップスの相性の悪さはハリー・ポッターが証明してしまっており厳しめ。
ARでは、同じグラスながら、この上から映像を加えられるため、AR+プロップス+スクリーンという3段階での演出も可能。
また、個人毎に違う映像を出せるため、インタラクティブ性の利点が出てきます。
マリオカートでのアニマトロニクスにAR映像を重ねる演出は、ライドアトラクションの将来性を感じさせました。
ファンタジースプリングスのピーターパンは一体どうなるのでしょうか。



