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 - 駄話  - by poohya

Disney100がたぶん終わった

2023年が終わり、Disney100もたぶん終わります。きっと紅白が見納めになったのでしょう。
D23 Expoあたりからぬるっと始まったDisney100。日本は結局グッズイベントだなと思っていたら、日本はまだ頑張っている方といったくらいで、ぬるっと終わりそうです。10/16の100周年当日にはアナハイムが祝い終わっていた始末。
日本は周年好きなのとレトロが流行るタイミングでオールドデザインがハマったのが上手くいった印象。40周年を食い潰しました。

本当は『ウィッシュ』でもっとディズニーが今どういうウィッシュを描くのかを考えたかったのですが、こんなに薄っぺらい話だと深く捉えてもほとんどが自分の考えを元にした意見なだけになってしまうので、考えることをやめました。
ベスト映画は『リトル・マーメイド』、次点『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol3』です。
ディズニー以外だと朝ドラ「らんまん」。最終週がすごかった。長い物語の終わらせ方として史上屈指の名作でした。

ワンダラス・ジャーニーの最後、普通なら良いメッセージを語る部分で、まさかのプーが登場しボケをかまします。
「Disney100 センチュリー・オブ・ドリームス」でも繰り返されました。
もう一度最初のページに戻ってやり戻そうというプーに対して、ナレーターがツッコミの形で未来へ進むことを語るのです。
このシーンは『くまのプーさん 完全保存版』の最終章の導入にあたります。
最終章だと告げられ、もう一度1ページ目に戻ろうとプーがいうシーンです。
その後、プーはクリストファー・ロビンから遊べなくなることを告げられ、100歳になってもここにいることを約束します。
プーは1ページ目に戻るのではなく、同じようなことをやり続け、100年の歳月を過ごしていきます。
歴史は繰り返すのではなく韻を踏むだけというドロッセルの名言(本当はマークトウェインの言葉)のように、過去に戻るのではなく韻を踏みながら前に進んでいくという姿をディズニーのこれからの100年に見ていきたいなと思います。

来年は東京の超大勝負ファンタジースプリングスが待っています。
良いお年を。

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 - 映画  - by poohya

『ウィッシュ』感想

ディズニー100周年映画『ウィッシュ』を試写会で観ました。
以下ネタバレありの感想です。
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TDR 2024春に4本同時開催の「スペシャルイベント」が占う今後のイベント展開

東京ディズニーリゾートが2024年春のスペシャルイベントを発表しました。

スペシャルイベント4本同時開催

スペシャルイベントを4本同時開催という、見たことのない状態になります。
春イベントは基本的に4/9〜6/30に開催。
ランドは「ディズニー・パルパルーザ」と「セレブレーティング・スペース・マウンテン:ザ・ファイナルイグニッション!」。
シーは「ドリーミング・オブ・ファンタジースプリングス」と「東京ディズニーシー・フード&ワイン・フェスティバル」。
スペース・マウンテンはクローズ日となる7/31まで、フード&ワインは4/1スタートです。

パレードが有料エリアを拡張

ディズニー・パルパルーザ
新たに設けられた「スペシャルイベントシリーズ」という概念。第1弾は1月から「ミニーのファンダーランド」を開催します。
4月からは第2弾で、「主役や世界観が変わり新しい展開が始まります」という表記だけで、具体的な内容はまだわかりません。イースターではないみたい。
第1弾と第2弾でどのような関連性がある「スペシャルイベントシリーズ」となるのか気になります。

1月からのミニーのファンダーランドでは、パレード「ミニー@ファンダーランド」を公演。これまた不思議なタイトルというかTwitterに不向きというか。
フロートは6台で、ミニー、ミッキー、ドナルド、グーフィー、プルートほか約60名が出演予定。
3回停止ですが、プラザではシンデレラ城前を含めて回る、ディズニー・イースターワンダーランドのようなスタイルです。
シンデレラ城前はほぼプレミアアクセスのエリアとなっており、パレードルートを城前分拡張し、それを丸ごと有料にする様子です。
閑散期にそんなに有料席が売れるのかは気になる。この有料エリアの広さで鑑賞位置を指定できないのもしんどそう。
台数の割にキャラクター数が少なさそうで1stと3rdの停止範囲が狭いので、フロートは小さめでしょう。いつもの閑散期パレード規模で、有料エリアのために2ndを拡張する形になるようです。
プレミアアクセスの成功を受けた実験的スタイルと言えそうです。バケーションパッケージが一番良いエリアを確保し出したのも大きな要素でしょう。

4月からの第2弾も、フロートや停止形式は同じで公演するのでしょうか。そうなると春にしては小規模になるかもしれません。
この形式がうまくいって、フロート規模を大きくしても展開できれば、ハロウィーンやクリスマスにも城前プレミアアクセスを導入する形になり、ランドのパレードの形が大きく変わるかもしれません。

廃止されたっぽい「スペシャルプログラム」

セレブレーティング・スペース・マウンテン:ザ・ファイナルイグニッション!
スペース・マウンテンは、2027年にリニューアルオープンを行うため、一旦今の建物を解体し、後ろに新たなスペース・マウンテンを建設するという、前代未聞のリニューアル方法。既に新たな建物の起工式が行われた後ですが、クローズ日が7/31と発表されました。
アトラクションのクローズを記念したスペシャルイベントは初開催でしょう。

東京ディズニーリゾートでは「スペシャルイベント」と「スペシャルプログラム」は区別されていて、ディズニー・ハロウィーンやディズニー・クリスマスはスペシャルイベントですが、ディズニー七夕デイズはスペシャルプログラムでした。
最近、スペシャルイベントの定義が緩くなっているようで、コロナ後はお正月がプログラムからスペシャルイベント扱いになりました。
以前はスペシャルプログラムだったダッフィー&フレンズの季節コンテンツが「グッズとスーベニア付きフードの販売」というカテゴリーに変わったこともあり、スペシャルプログラムは激減。
ざっと過去のリリースを検索したところ、最後のスペシャルプログラムは「ベリー・ベリー・ミニー!」でした。
一方、本来2020年6月から開催予定だった「ハッピーフェア・ウィズ・ベイマックス」は、元々スペシャルプログラムでしたが2021年に延期して開催された際「フェア」になっていました。
コロナ以降、何らかの意図を持って「スペシャルプログラム」をなくしたようです。
今回のスペース・マウンテンのファイナルイベントも、以前ならスペシャルプログラム扱いだった気もします。

新エリア前哨戦

ドリーミング・オブ・ファンタジースプリングス
2024年の、というかここ10年で最大のトピックである、東京ディズニーシー「ファンタジースプリングス」は6/6オープン予定。
各スポンサーがプレビューキャンペーンを行なっており、5月半ばからプレビューが行われます。現在のパーク部分には入れない新エリアのみ入場可能なプレビューもあり、独立したエリアであるためプレビューはやりやすいのでしょう。
東京ディズニーリゾート自身もプレビューが当たるキャンペーンを打つ上に、ファンダフル・ディズニーやバケーションパッケージ向けにプレビューチケットの販売を行うようです。

そんな中、4月からスペシャルイベント「ドリーミング・オブ・ファンタジースプリングス」を開催。新エリアが開いていないのに、他エリアで新エリアの世界を想像できるそうです。
ハーバーグリーティングも公演するそう。
グッズやメニューも発売されるとのことで、かなり先どった展開になります。本当はファンタジースプリングス自体も4月に開けて、入場制限で新エリアに入れなかった人の救済も込めて他エリアでグッズやフードの展開をするつもりだったのでは、という気もしてきます。
各テーマパークが2024春に色々とオープンさせる予定ですが、どこも建設が間に合うのか大変みたいですし、ファンタジースプリングスはプレビューをたっぷりやらないといけない以上6月オープンはよく春のうちに間に合わせたなと思うくらいなのですが。

新エリアのハーバーグリーティングは、ミッキーたちが出てくるのかピーターパンたちが出てくるのかどちらなのでしょうか。まだよくわからないイベントですが、これもスペシャルイベント扱いです。
似たような形では、実際にはコロナで崩れてしまいましたが、2019年時点での予定として、ニューファンタジーランド開業後の「ハッピーフェア・ウィズ・ベイマックス」がありました。
4月に新エリアがオープンし「ベイマックスのハッピーライド」もオープン。そして6月〜11月にかけて「ハッピーフェア・ウィズ・ベイマックス」が開催予定でした。
春と夏のイベントをやらずに新エリアで集客し、ベイマックスのプログラムはハロウィーンまで続ける形でした。
実際には中止となり、2021年1〜3月に開催されました。2023年夏の散水パレード「ベイマックスのミッション・クールダウン」のフロートが本来のハッピーフェアのコンテンツだったのではみたいな話も聞きますが。
ちなみに、2020年の予定ではハッピーフェアは「スペシャルプログラム」、2021年は「フェア」になっていました。

フードイベントを春に導入

東京ディズニーシー・フード&ワイン・フェスティバル
「第1弾となる2024年度は」という表記があり、毎年やる気なのでしょう。
テーマポートを題材にした世界各国のメニューを提供するほか、ファンタジースプリングスの世界をイメージしたメニューも提供するそう。
フード&ワイン・フェスティバルといえば、EPCOTの秋の恒例イベントで、最近はDCAも春に開催しています。
東京版はテーブルサービスのレストランでも展開されそうで、ブース出店ではなく各店舗がスペシャルメニューを出す形でしょうか。WFPにフードトラックが登場したのは布石っぽいので、ワゴン販売も増やしてほしいところです。
シーではディズニー・ア・ラ・カルトを思い出させるフードイベントです。当時のシーは秋に文化的なイベントをやっていましたが、アラカルトの翌年からハロウィーンがスタート。春にフードイベントを持ってくる形になりました。
モバイルオーダーも導入されてきており、テイクアウトフードを購入しやすいシステムはできているので、ふらふらと楽しめるイベントになればいいなと思います。ファンタジースプリングス入れなくてやけ酒しても楽しいし。

1〜3月は何もイベントを行わず、頼みのビリーヴすら休止する、もはや何が残っているのかというようなシー。ファンタジースプリングスに全てを賭けているのはわかりますし、イベントをやったところでハーバーグリーティングしか行えないという問題があります。
ランドはパレード規模をかなり元に戻してきて、そこに新機軸を加えようとしていますが、シーのハーバーショーを再開させるのはかなりハードルが高そうです。
ハーバーショーが出来ず、代わりにハンガーステージで懐古ショーをやってみたもののあまりにクオリティが低く3シーズンで終わり、とにかくハーバーグリーティングをやり続けるしかない状態。
その中でフードイベントに振るのは、ショーを行わないイベントとして良い形なのではないかと思います。
新しいスタイルというか、昔に戻ったというか。

そんなわけで、春の「スペシャルイベント」は、どれもコロナ前の「スペシャルプログラム」規模のような気がしますが、これからのイベントの形を占う資金石になりそうな内容です。

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プーミュージカル日本初演 10都市で4〜7月に決定

新作ミュージカル『ディズニー くまのプーさん』の日本初演の日程が発表されました。

このミュージカルは、「Winnie the Pooh: The New Musical Adaptation」として、2021年10月にオフブロードウェイで公演が始まったもの。
その後全米ツアーやロンドン、オーストラリア公演が行われています。

はらぺこあおむしやセサミストリートなどパペットを用いたミュージカルを得意とするロックフェラープロダクションが制作。ディズニーシアトリカルが共同制作し、音楽はシャーマン兄弟のアニメーション楽曲が使用されています。
非英語圏では初となる公演。日本人キャストによる操演・歌唱であることが明らかになりました。
日本版演出補は岸本功喜氏、翻訳は小島良太氏で、「シュレック・ザ・ミュージカル」の座組です。

日本初演は東京・日本橋三井ホールで2024年4月27日(土)に開幕。5月6日(月・休)までGWに東京公演が行われます。その後、愛知、千葉、大阪、埼玉、宮城、神奈川、福岡、広島、静岡を、7月14日(日)まで巡ります。
チケットは2月24日(土)一般発売。
VIB(Very Important Bear)席も発売されます。VIB席は、2021年の初演から発売されているチケットで、最前列〜6列目までの前方列確約と終演後の記念写真などが特典として付いています。原作で鉛筆をもらったプーが、鉛筆の「B」をBear、「HB」をHelping Bear、「BB」をBrave Bearのことだと思ったエピソードのような名前のVIP席です。
チケット価格はVIB席9,500円、S席5,500円、A席3,500円。10年前のディズニーライブ!がS席5,000円、A席4,500円くらいだったので、エンタメ物価上昇を考えると抑え目です。

東京公演はキャパ600席以上あるようで、GWに1週間以上のなかなか頑張る規模になりました。他地域は大阪以外土日ですが、海外でのツアーも小さな劇場を1日単位で回るスタイルが多く、やはり日本の需要は高めに見られているなと感じます。

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 - 駄話  - by poohya

ミュージカル「アナスタシア」を観た

『アナスタシア』は、1997年に公開された20世紀フォックスのアニメーション映画。
当時TSUTAYAのディズニーコーナーに置いてあったVHSを観ていて、後にディズニーではないと知ることになります。
ディズニー以外のプリンセスアニメーションとしては最高峰の作品として、特に主題歌「Journey to the Past」を中心に愛されてきました。
そんな中、ディズニーがフォックスを買収したことで、20世紀スタジオ作品としてディズニー傘下入り。
D23 Expo 2022では、ディズニープリンセスコンサートの際に、ディズニープリンセスではないけれどと言いながら、『アナスタシア』主題歌「Journey to the Past」が歌われ、アニメーションのダイジェスト映像まで流れました。
というわけでディズニー作品です。

ミュージカル版は、映画公開から20年後の2017年にブロードウェイで初演。
日本では2020年に日本人キャストによる公演が行われましたが、コロナ第1波でほとんどが中止となり、2023年にようやくきちんと公演できました。

アナスタシアは、帝政ロシア最後の皇帝ニコライ2世の娘。
ロマノフ家は1917年のロシア革命で退位し、翌年に一家ごと銃殺されました。
しかしアナスタシアだけは生き残ったという都市伝説が広まりました。
『アナスタシア』の物語はこの都市伝説をベースにしています。
後に遺体からアナスタシアのDNAが検出され、銃殺の事実が確定しますが、アニメーション公開当時はまだDNA鑑定ができず、都市伝説も残っていました。

ロマノフ家滅亡から月日が経ち、記憶喪失の少女アーニャは、サンクトペテルブルクでディミトリとブラドという2人組に出会いました。
ディミトリとブラドは、アナスタシアの祖母でパリに住むマリア皇太后がアナスタシアを見つけた人に懸賞金を出していると知り、ロシアで適当な女の子をアナスタシアに見立てて懸賞金を騙し取ろうと計画していました。
2人はアーニャをアナスタシアに見立てて教育しながらパリへ向かいます。
皇太后は詐欺だと思いアーニャのことも拒絶しますが、アーニャが持っていたオルゴールの鍵が皇太后の持つオルゴールと一致し、アーニャこそアナスタシアだと判明。
アナスタシアとしての身分を手に入れたアーニャですが、ディミトリと生きることを決めます。

ディズニーによるミュージカルは、「ライオンキング」に代表されるように、どういうスタイルの舞台を作るか趣向を凝らしています。
「アナスタシア」はミュージカルとしては奇をてらわないオーソドックスなスタイルです。

ストーリーも骨格は維持しつつ、ロシアにいるパートが長くなるなど、アナスタシア以外のキャラクターの心情描写を増やす舞台らしい変更が加えられています。
そして、アニメーション版の楽曲も使用していますが、曲順を大胆に入れ替えています。
特にすごいのが主題歌「Journey to the Past」。
アニメーションでは、孤児院を出たアーニャがサンクトペテルブルクを目指す、アーニャ初登場シーンの曲でした。
ミュージカルでは、第1幕ラストに移動させ、アーニャがパリに踏み入れるシーンに変更されました。
全く違うシーンですが、歌詞もそのままで、1幕分のアーニャの心情が詰まった歌に昇華されています。
D23 Expoでわざわざ歌われるほどのプリンセスソングを歌い切って第1幕が終わる、圧倒的なシーンになりました。
歌自体はアニメーション版そのままだから、特別イベントとしてミュージカルのアーニャ役が歌う背景にアニメーションの映像も流せます。

そして、アニメーションから最も大きく変えたのは、世界観のリアリティラインです。
アニメーション版のヴィランはラスプーチン。彼も史実の人物ですが、ここでは魔法使いに設定されています。
ロマノフ家の滅亡がラスプーチンの魔法として描かれ、銃殺描写を行わないようにしています。
その後もラスプーチンが魔法でアナスタシアの行く手を阻んでいきます。
それに対して、ミュージカル版ではヴィランを変更。
ラスプーチンは登場せず、ボリシェヴィキの将校グレヴというキャラクターが新たに作られ、彼がヴィランになります。
ロマノフ家滅亡も、ボリシェヴィキの銃撃隊による銃殺だと語られ、グレヴはその銃撃隊の子どもです。

アニメーションでは、物的証拠や魔法もあり、アーニャがアナスタシアであることが確定しています。
ミュージカルでは、アーニャが思い出していく記憶がアナスタシアのものだろうと思われ、みんながアーニャこそアナスタシアだと信じていく、状況証拠だけで組み立てられています。
最後まで「彼女は本当にアナスタシアだったのでしょうか」と言わせるほどです。
史実の都市伝説も、この人こそアナスタシアなのではないかという人物がいて、本人の供述も偶然なのかアナスタシアのものと一致していたそうで、ミュージカル版のアーニャの状況証拠では都市伝説と変わらないのです。

アーニャは記憶喪失で得られなかったHOME、LOVE、FAMILYを求めて「過去への旅」へと出かけます。
過去への旅の中でアナスタシア伝説に巻き込まれていきますが、ミュージカルではパリへ踏み出す瞬間に「Journey to the Past」を持ってくることで、アナスタシアとして過去への旅に出る決意を新たにしています。
そしてアナスタシアの祖母である皇太后と会い、自分は何者なのかを激しく問われます。
自分が何者か名乗るのは、グレヴの前でした。
(皇太后に聞かれて名乗れずグレヴに聞かれる時には名乗れるようになっている流れを見てるとdpost.jpの中の人の笑顔が浮かびます)
ボリシェヴィキ銃撃隊の息子というアナスタシアと対になった存在と向き合い、ついに自分がアナスタシアだと宣言するのです。
グレヴと向き合いアナスタシアだと宣言することは、自分を殺せと言うことと同義です。
プロローグでは難しい時代に「お祈り」頼みの様子を描いたり、第1幕でロシアの人々を描いたりすることで、革命後のロシアもひどいが帝政ロシアもロマノフ家以外は輝いていなかった姿も見えています。
アーニャはアナスタシアだと宣言し、ロマノフ家の血筋であることまで背負うのです。
プリンセスらしさとは人々への責任も示すことだという、ロイヤルさを見せています。

一方、これまでの騒動になる主犯のディミトリ。
彼は序盤の曲A Rumor in St.Petersburgで、「おとぎ話を信じるか?」と尋ねられ「世界中が信じるおとぎ話を作る」と答えます。
この物語は、詐欺師としておとぎ話を作ろうとしたディミトリが、自身が作ったおとぎ話に飲み込まれていく話でもあります。
詐欺師として全てを手に入れたと思ったディミトリが、ただ一つ失うものがあると気付き、その一つのために全てを捨てるのです。

アーニャもまた、アナスタシアとして生きても失うものがあることに気付きます。
こうしてアーニャはアナスタシアとしての身分を捨て、ディミトリと生きることに決めました。
アーニャにとって本当のHOME、LOVE、FAMILYを見つけたのでした。
自分はプリンセスなのか問い続けて旅をしたアーニャが、自分がプリンセスであることを受け入れた上でプリンセスを選ばない物語です。
プリンセスストーリーでありながら、プリンセスを追い求めそれを捨てることで、自分の人生を自分で選択することが強く描かれています。

ラストシーンでは、背景が絵画風に塗り変わり、おとぎ話らしさが強調されます。
ブラドも皇太后もみんな、アーニャがアナスタシアだと信じた上で、対外的にはおとぎ話に過ぎないと宣言して終わるのです。
幻想を追い求めても得られるものはないかもしれませんが、それでも世の中にはおとぎ話は必要なのだと思わせてくれる作品です。

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