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プーと大人になった僕:父親の描写が生む革新的なテーマ

『プーと大人になった僕』は印象的なオープニングから始まります。
ディズニーのお城ロゴはその作品に合わせて様々な変化を見せてくれることがありますが、本作ではお城が鉛筆画に変わり、そのまま本の挿絵になります。
いつものディズニー映画のオープニングから絵本のページに移る粋な演出です。
それと同時に、プーにおいて重要な要素をうまく消しています。

ディズニー版オープニングの通例

ディズニープーにおけるオープニングは大抵クリストファー・ロビンの子供部屋から始まります。
子供部屋の実写ショットから「くまのプーさん」の本に入り、100エーカーの森がアニメーションで描かれます。
ここで映る「くまのプーさん」の本には著者名があり、A.A.Milneと記されています。
A.A.ミルンは原作の著者であり、ディズニー版も原作の本の中身をアニメーション化しているという構図になっています。

一方、『プーと大人になった僕』ではディズニーロゴを活かしていきなり本のページに入ります。
その結果、本の表紙が見えないため、著者名が映ることがありません。
さらに、プロローグの時点でクリストファー・ロビンの父親が退場。
父を亡くしたクリストファー・ロビンに残されたのは、父親との思い出ではなく一家を背負う重責でした。

史実の親子関係

原作では、著者A.A.ミルンがクリストファー・ロビンの父親であることが語られています。
親子の関係が「クマのプーさん」を生み出したのですが、プーを生んだことが後の親子関係を破壊していきます。
本当の「大人になったクリストファー・ロビン」はプーと離れ、クリストファー・ロビンの名から逃れようとしていました。
実際のクリストファー・ミルンはその後結婚して娘をもうけますが、小児麻痺だったことなどから自分の幼少期を投影することはありませんでした。
『プーと大人になった僕』では、実際のミルン親子とのどちらとも異なる、大人になったクリストファー・ロビンと娘の関係を描くことになります。

プー僕の革新性

『プーと大人になった僕』の革新的なところは、“100エーカーの森で暮らしていたクリストファー・ロビン”が大人になった姿を描いているところです。
プーのその後自体はあちこちで語られてきています。
ディズニー版ではクリストファー・ロビンが学校に行った後も100エーカーの森に顔を出しています。
ティガームービーや2011年版など、物語の終盤で現れる役が多いです。
一方、100エーカーの森を離れたクリストファー・ロビンの姿は、史実に影響を受けています。
『グッバイ・クリストファー・ロビン』など、プーが有名になりすぎたせいでクリストファーの人生が狂ってしまう姿が描かれます。
しかし『プーと大人になった僕』は、プーの物語の通り学校に通って100エーカーの森を離れたクリストファー・ロビンがそのまま成長したら?という、現実ではなく物語の設定に沿って描かれています。

100エーカーの森からは離れつつ、史実からも独立した物語を描くのは意外にも画期的なこと。
従来のディズニーの100エーカーの森から離れるように本作では実写を採用。
そして史実から離れるようにクリストファー・ロビンの父親、特にA.A.ミルンという名前を意識させない演出がなされています。

7年ぶりのディズニープーを印象付けるオープニングのディズニーロゴの演出は、ディズニーファンを喜ばせる演出であることに加え、原作ファンにも今後の展開に違和感を与えないための演出となっているのです。

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