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2020中経進捗で見えたものと消えたもの。OLC2018年3月期決算発表

株式会社オリエンタルランド2018年3月期決算が発表されました。
プレゼンテーション資料(解説付)
質疑応答

入園者数が増えた一方、人件費がかさみ、増収減益。
2018年度の入園者数予想は3,100万人です。
30周年の2013年度や翌14年度をやや下回る値。
あとは、ゲスト単価が飲食部門で「店舗改装に伴う減」、その他部門の投資額が「モノレール事業の増」で23億円増えていることがちょっと気になります。

中期経営計画進捗

2020中期経営計画は“新鮮さ”と“快適さ”が掲げられています。
具体例としてイッツ・ア・スモールワールドとニモ&フレンズ・シーライダーが挙げられています。
“新鮮さ”はそれぞれディズニーキャラクターの導入。
“快適さ”はスモールワールドが屋内Qラインの増加、シーライダーがQライン屋根とオペレーション変更による体験人数の増加。
IT施策は、夏配信とアナウンスされている「東京ディズニーリゾート・アプリ」。
さらに、喫食環境の改善に向けレストランのリニューアルを実施したとのこと。どれのことだろう。
立体駐車場やメインエントランス改装もここ半年で発表された話題です。

1年前の経営計画発表資料と比べて、具体的に進んでいる様子がわかります。
一方、1年前にあった「新作ディズニー映画とタイムリーに連動するなど、魅力的なコンテンツを展開」が消え、「アトラクションを中心に各種施設の新規導入/リニューアルを推進」となっています。
『リメンバー・ミー』を連動させようとしたのに公開延期でディズニー側に梯子外されたからね…

海外ゲスト比率は9.8%に到達。
ついに1割を超えそうです。2012年度には72万人だった海外ゲストが295万人まで4倍以上になりました。
35周年は海外メディア向けのプレスデーも行われており、積極的なマーケティングが広がっています。

大規模開発事業は、ソアリンが「本体工事が進み、内装/外装に着工」、新ファンタジーランドが「基礎躯体工事が完了」という段階です。

21年度以降の話題なし

大規模開発と同時に発表され、2020中期経営計画の資料にも載っていた「2021以降の方針」が進捗資料で消えました。
一方で4/15に発表された通り、「既存のパークのいずれかを拡張することを検討している。」とされており、当時の方針が変わった結果が現在検討中の拡張プランのようです。
これについて日経が「20年度までの経営計画の期間のできるだけ早いタイミングで、内容を発表したい」というOLC記者会見の内容を伝えています。
発表はしばらくなさそうです。
参考:35周年セレモニー「TDR拡張を正式表明」は新発表だったのか?|舞浜横丁

キャスト環境は大丈夫?

経営計画進捗で一番引っかかったのが「ソフト(人財力)の強化」の部分。
ワークフォースマネジメントシステムと呼ばれる新しいスケジュール管理システムが導入されました。
また、採用マーケティング手法も変更。
バックステージの非接客職種もイメージしやすい広告が展開されています。
これはtwitterで話題にもなっていました。

雇用者数は順調に伸びているそうで、「現時点では当社が必要とするキャスト数は確保できているが、将来的にはより多くのキャストが必要になってくるものと考えている。」とのこと。にわかには信じられませんが。
18年3月期は人件費が原因で減益となりましたが、「コスト増への対応はだいたい終わり、いままでのペースで人件費が増えると考えていない」(産経)とのこと。
また、東京ディズニーリゾート35周年を契機にキャストの目指す姿をこれまでの「ハピネスの提供」からより自発的なサービスを促す「ハピネスの創造」へと進化させたそうです。

35周年のパークを見ていると確かに「ハピネスの創造」というキャストコンセプトをやろうという意気込みは感じます。
そんな施策でキャスト数が足りるのかは疑問。
スケジュール管理も良い噂は聞きませんし、フードとカリナリーのキャストが足りているとは思えません。
経営計画発表時の「外部環境を踏まえた賃金体系はもちろんのこと」という話は消え、賃金の話は「職種調整給/時間帯手当の変更」になりました。

キャストの時給が周辺のアルバイト環境に比べて相対的に下がってきている中、人件費は増やさず、「成長を実感できる」施策でホスピタリティを確保する方針。
「ゲストの笑顔が給料」みたいなブラック感溢れる計画に見えます。
個人的には意識高いキャストからハピネス創造されても邪魔に思うことの方が多いのでやめてもらいたいですが、これはキャストに対する賃金の代わりの福利厚生みたいなもので、ゲストはこの余計なサービスを受けることで人件費増のパスポート価格転嫁を防いでいると考えて過ごしていこうと思います。

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「クマのプーさん」石井桃子訳の魅力をTBSラジオ「アフター6ジャンクション」が紹介

TBSラジオ「アフター6ジャンクション」の4/24(火)「翻訳界の凄い人たち・岸本佐知子と金原瑞人が語る【この翻訳が凄い!】特集」にて、「クマのプーさん」が紹介されました。

この日のゲストは翻訳家の岸本佐知子さんと金原瑞人さん。
凄い翻訳家が凄いと思った本として、岸本さんが紹介したのが石井桃子さんによる「クマのプーさん」でした。

読み聞かせというメタ構造

岸本さんはまだ本が読めない頃に父親からなんども読み聞かせをしてもらったといい、最近になって読み直して石井桃子訳の凄さに気付いたとのこと。

「クマのプーさん」は著者A.A.ミルンが息子のクリストファー・ロビンにプーのお話をする会話形式になっています。
このメタ構造がプーの大きなポイントで、ナレーター役は散文家であったミルン自身であることから、地の文も詩的な流れになっていることが特徴です。
これに対して岸本さんは、石井さんの日本語訳を読んで地の文の生き生きさに驚いたそうです。
「地なのに声が聞こえてくるよう」という石井訳の魅力は、まさに原文の特徴を反映しきっていると言えます。

パーソナリティの宇多丸さんも、前身番組ウィークエンドシャッフルで2011年版プーの映画評を行った際、プーのメタ構造について解説していました。

親が子供に読み聞かせるという形で語られるプーの物語。
実は石井桃子さん自身も読み聞かせという形でプーを訳しました。
子供たちにせがまれて「プー横丁にたった家」を原書を読みながら日本語で読み聞かせ、それをきっかけに「クマのプーさん」まで翻訳することになったのです。
同じようなシチュエーションだったからこそ、石井訳は原書の雰囲気を生かせているのかもしれないと岸本さんは話していました。

プー「さん」という大発明

岸本さんは「クマのプーさん」というタイトルが天才的、大発明だと言います。
この「さん」は「山田さん」といった敬称ものではなく、「おいなりさん」「お豆さん」のような、自然と付けてしまうものだと考えられます。
つまり、みんながなんとなく好ましく思っているものに付けたくなる「さん」です。
この「さん」が付くことによって、ちょっと頭の悪い食いしん坊で愛されキャラの熊というイメージができます。

キャラクターの愛らしさ

最後の特徴は、性格も様々なキャラクターたちを面白く訳し分けていること。
特にイーヨーのセリフが素晴らしいといい、具体的な例を紹介されました。
「イーヨーがお誕生日に、お祝いをふたつもらうお話」でイーヨーがプーに話す一節。
石井訳「浮かれさわぎさ。舞えや歌えさ。もしもしカメよ、カメさんよか。」
原書”Gaiety. Song-and-dance. Here we go round the mulberry bush.”
Gaietyは陽気、お祭り騒ぎの意味。
「Here we go round the mulberry bush」は「桑の木の周りをみんなでまわろう」というイギリスの童謡です。
この童謡を「もしもしカメよ、カメさんよ」に置き換えた巧妙さが、プロの翻訳家からしても凄いそうです。

他にも「I might have none.」を「うっかり坊じゃったわい」と訳すなど、喋り方でイーヨーの陰気で老いたイメージを表しているといいます。
この素晴らしい爺さん感は、コブタ(ピグレット)のことを「コブちゃんや」と呼ぶことでも見事に表現されています。

また、石井訳ではプーはクリストファー・ロビンに対してですます調で話します。
ここも、プーに好感が持てる口調になっており、プーの本人はいたって真面目に生きている感じが現れています。
ディズニー版でプーの声がおじさん声なのもこれに似た効果です。

石井桃子訳の原作を読もう

翻訳界の神から見ても、石井桃子さんの「クマのプーさん」訳は素晴らしいということを教えてもらいました。
昨年ミルンの著作権が失効したことで新たな日本語訳版が出版されていますが、それらもあとがきで石井桃子訳の揺るぎない魅力に触れるほど、圧倒的な名訳です。
ディズニープーを見ていても、日本語版は石井桃子訳が元になっている部分が多々あります。
日本は原書「Winnie-the-Pooh」と石井桃子訳「クマのプーさん」の両方が楽しめる、非常に恵まれた環境です。
イギリス童謡を日本の童謡に置き換えるなど、文化まで反映している石井訳は、イギリス以外の英語圏の人が原書を読むよりも深く自然にプーの世界を体験することができます。
キャラクターの動きが見えるような会話、魔法にかけられるような地の文、文章が織りなす100エーカー森の空気をそのまま感じられる日本語訳をぜひ大人になってもう一度読み返してください。

宇多丸さんはディズニープーも詳しいため、原作に偏らないバランスの取れた放送でした。
TBSラジオはラジオクラウドやradikoタイムフリーで聴き逃し配信されているのでぜひお聞きください。
4/24(火)20時頃からです。

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colos EXPO 2018の宣伝でドリミ春の回に出演します

5/20(日)、「#ドリミ 春の回 2018」に出演します。
「プーやのいちばん長い10分間」と題して、好き勝手に10分間何かやります。
細かい内容は全くの未定ですが、メインはcolos EXPOの宣伝です。

colos EXPO 2018
・開催日:2018年6月9日(土) 10:30〜17:00
・場所:大田区産業プラザPio 小展示ホール
・入場無料

colos EXPO 2018は、「すべての“好き”をつなぐ、究極のファンイベント」がテーマ。
参加者が自分の“好き”を発表し交流しあう、文字通りのファンイベントです。
メインのLT(ライトニングトーク)大会では、登壇者が5分間で自由なプレゼンテーションを行います。
すでに30人以上の方が登壇予定で、30人がそれぞれの“好き”を発表します。
まだまだ登壇者を募集中です。

さらに、模造紙での発表や同人誌・オリジナルグッズの販売などが行われる展示・物販コーナー。
その場で参加できるプログラムや、ネット上では聞けないトークショーが行われるショー&トークステージなど盛りだくさんです。

今回も多くの方にご協力いただき、たくさんの“好き”が集まっています。
まだまだLTや展示・物販に参加するファンを募集中ですのでぜひお気軽にご参加ください。
colos EXPO 2018

まだ発表できていませんが、実は豪華ゲストがさらに参加予定です。

イベント自体は入場無料で、どなたでも自由に出入り可能です。
場所は京急蒲田の大田区産業プラザPio 2階の小展示ホールです。

というわけで5/20(日)ドリミ、6/9(土)colos EXPO 2018に出演しますので、よろしくお願いします。

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 - 駄話  - by poohya

35周年セレモニー「TDR拡張を正式表明」は新発表だったのか?

東京ディズニーリゾートが35周年を迎え、報道各社から「OLCがTDR拡張を正式表明」というニュースが出回りました。
これに対して「知ってた」という感想ですし、ならこのニュースはニュースではないのでは?という気もします。
というわけで、この検証をしつつ現在のTDR開発計画の状況を見ていこうと思います。

発端は35周年でのかがみんの挨拶

【TDR35周年】35年前と同じ場所でのセレモニー! 35周年オープニングセレモニー速報レポ【写真25枚&あいさつ全文】 – ウレぴあ総研ディズニー特集
シー15周年に続きスピーチ全文書き起こしています。よければ読んでください。

そしてその先もですね、両パークでは様々な開発計画を模索しておりますが、現在パークの拡張について検討しているところでございます。

この35周年のあいさつの中で加賀見会長が拡張について検討していると言及。
各社で報じられることとなりました。
加賀見会長による「東京ディズニーリゾート35周年を迎えて」のコメントにも同じ記述があります。

背景1 既報の2021年以降開発計画

ここに至る背景をおさらいしましょう。
現在東京ディズニーリゾートでは、2019年春のソアリン、2020年春の大規模開発事業(新ファンタジーランド)が建設中です。
問題はそれ以降の計画。
2020中期経営計画では、2021年以降の方針として、

<東京ディズニーランド>
ファンタジーランドを含め、7つのテーマランドすべてを開発対象にエリア規模での刷新を順次おこなうなど、インパクトのある開発をおこなう
<東京ディズニーシー>
飛躍的な進化を遂げるべく、複数の拡張用地を活用した大規模なパーク開発をおこなうことで、質・量ともに体験価値を大幅に向上させる。

としています。
これは、元々の拡張計画(アリスエリアを含めた新ファンタジーランド+シーの北欧エリア)が消え、現行の大規模開発事業が発表された2016年4月に併せて発表されたものです。
東京ディズニーランド/東京ディズニーシー今後の開発計画について(2016/4/27)

背景2 日経・共同・毎日のリーク

もう1つの背景が、2017年11月の日本経済新聞と共同通信による報道。
TDR2023年までに3000億円かけて3割拡張へ、日経・共同が報じる|舞浜横丁
現在のR1,R2駐車場を中心とした用地を利用した拡張事業が報じられました。
日経と共同では建設年などの内容が異なります。
これに続く形で読売なども報じましたが、日経は翌日に加賀見会長が主導で進めておりフロリダ視察も終えていると踏み込んだ記事も出しました。
どちらもランドかシーを拡張(日経はランドとシーに均等配分)し、「日本らしい」エリアを検討している、と報じています。

その後、2018年4月に毎日新聞が「ディズニースカイ」報道。
「空」をテーマにした第3パークを建設すると確定調で報じています。
報じる価値もないとスルーしていましたが、かなり細かく確定事項のように報じたため、広く知れ渡ることに。
小学生向け新聞や、今村記者顔出し解説動画まで出て、どこからこの自信が出てくるのかと一周回って心配になりました。

セレモニーの「拡張」発言

これを踏まえてもう一度4/15に何が起きたのか振り返ってみます。
まず、セレモニーでの加賀見会長の「拡張について検討している」発言。
その後配布された資料(「東京ディズニーリゾート35周年を迎えて」)でも同じ記述。
そして、「加賀見会長から拡張について発言があったことを受けて」宮内執行役員の囲み取材が行われました。
この囲み取材はその場で突然設定されたもので、事前案内はなし。
状況としては、35周年セレモニーで加賀見会長が拡張を発表した、と受け取れるものだと思います。

囲み取材の内容は基本的には「現在検討中で決まり次第発表する」というものでしたが、第3パーク計画などは明確に否定されました。
毎日新聞の報道が全面的に否定されただけで、本当に百害あって一利なしの毎日新聞にはぜひ35周年セレモニーの取材に来ていただきたかったところです。

新発表なのか?

今回「ランドorシーの拡張を検討中」と正式な発言がありました。
背景1で確認した通り、シーの拡張はしっかり経営計画に明記されています。
一方、ランドは7つのテーマランドを順次開発という計画ですから、「ランドの拡張を検討」という部分は新発表という扱いになります。
となると、現行の「ランド開発シー拡張」計画が生きているのか、拡張検討がこれに置き換わったのか、という部分が問題になってくるのですが、そこに関してはどのメディアも聞かず。
突然の囲みで近くにおらずレコーダーで音拾うのが精一杯で質問できなかった自分が不甲斐ない…

というわけで、OLCによるTDR拡張計画は新発表と言っても嘘ではないかな、といったところだと思います。
経済紙なら中期経営計画の内容くらい突っ込めよとは思いますが。

結局どうなるの

一応新発表なのになぜみんな知っていたかと言えば、背景2で見た事前報道があり、毎日はありえないけれど日経・共同はある程度正しいなとみんなが思っていたからです。
最近加賀見会長があちこちで「日本オリジナル」のパークを目指すと発言していることも、この報道を裏付けていました。
今回のセレモニーでも「世界で唯一、東京ディズニーリゾートでしか味わえない」という発言がありました。
また、この発表が加賀見会長から行われたのも、加賀見会長主導のプロジェクトだという日経の報道に合致します。
一方、今回はランドorシーの拡張であり、新エリアをランドとシーで均等配分するという日経の報道とは異なります。
日経・共同の報道から半年近く経ち、当然計画や交渉段階での変化は起きていると思いますが、この辺りの微妙な違いが気になるところです。

また、35周年を題材に、「混雑が課題」という記事が各社で出ました。
日経MJのTDRから離れる理由は、まあ万人から好かれるのは無理だよね、という感じで何が言いたいのかよく分かりませんでしたが。
元々の新ファンタジーランド計画が現在の大規模開発事業に変わったのも、予想以上の入園者数増加ペースで計画を早める必要があったから。
ここで改めて混雑が課題という記事が出回るということは、混雑解消の切り札を出す準備ができた、その発表効果を高めるための事前情報なのではないか、という気がします。
まあどのみち待っていれば分かることでしょう。
東京ディズニーシー開園以来の大開発なら、第2パーク計画発表の時のようにアニバーサリー記者会見で発表すれば良かったのに、とか思いますが、新たな未来を見せてくれることを楽しみにしています。

追記(4/27)

2018年3月期決算発表での中期経営計画進捗資料から「2021以降の方針」が無くなりました。
ランド7つのテーマランド刷新とシー複数拡張エリアの話が上書きされたとみていいでしょう。

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