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「 日別アーカイブ:2025年04月11日 」 一覧

万博に行った


大阪・関西万博のメディアデーに行ってきました。
全部は体験しきれていないので、とりあえずの感想です。
ネタバレはないし、個々のパビリオンの説明もおすすめもありません。

20年前の愛知万博は、最新技術もだけれど、世界各国のパビリオンが面白かった記憶があります。
というわけで、色々と言われていようが各国のパビリオンが来るんだから面白くないはずがないと思っていました。
といいつつ、メディアデーでは時間ないし、完成していない国もあるし、海外パビリオンはあまり回れず、大型パビリオンを優先して見ました。
海外パビリオンは開業後にゆったり見て回るとして、とりあえず今は海外パビリオンについては愛知の印象をベースに考えます。

総論で言えば、やっぱり面白かったです。
広い会場にいくつもの施設があるのは楽しい。
海外パビリオンも外観を見るだけでも面白かったです。
愛知の時に比べて、平らな一区画に建物が密集していますし、各々が個性的な外観を持ちながらも、半年限定の建造物にサステナビリティが求められているということで、再利用できる資材などでなんとなくベースの統一性も感じられて、まとまっていました。

今回、シンボルは大屋根リングです。
大きい建物は楽しい。
そしてリングというのが分かりやすいシンボルになっています。
パビリオンの配置としては、中心にシグネチャーパビリオンがあり、周りに海外パビリオン、リングの外に企業パビリオンという形です。
世界中のパビリオンがリングの内側にあるというのは面白いし、リングを回って世界を巡る感覚は、EPCOTのワールドショーケースそのままです。
シグネチャーパビリオンのエリアを中心としたハブ構造を取りながら、二重ハブの2重目にあたる大屋根リングがシンボルとなることで、2重目でも回遊を促しているというのは、パーク構造としてもよくできているのではないでしょうか。
効率的な行動が取れるハブ構造で目的の大型パビリオンに向かいやすく、一方で屋根がありベンチも時々あるリング下を散策することで、ふらっと立ち寄る海外パビリオンでの出会いが起きれば、面白いと思います。
欲を言えば、もっと大屋根リング内での気軽な交通手段があればよかったです。会場では有料バスも走っていますが、東ゲートと西ゲートを大きく結ぶようなものでした。

ハブの2重目がシンボルとなっている中で、1重目となるのがシグネチャーパビリオンです。
国内の8人のプロデューサーによるパビリオンが並んでいます。
それぞれ「いのち」を含んだテーマでパビリオンを制作しており、集まることで「いのち」を多角的に見つめ「未来社会のデザイン」を行なっています。
どれも、アトラクションというより、アート作品です。
万博の中心で、「いのち」をテーマにした現代美術展が行われている、という表現が近い気がしました。
いのちとはどうやって生きてきて、今どう生きていて、何をもって生きているとするのか、複数のシグネチャーパビリオンを通して多角的に考えさせられました。

ディズニーが好きだと、万博といえば明るい未来を見せるオプティミズムの象徴のイメージがあります。
今回は、最新技術が、偶発性や他者との繋がりのために使用されているというのも特徴的です。
いのちの未来やnull²では、アンドロイドやデジタルヒューマンを通して、未来の人間の形が提示される一方で、では生きるとは何なのか、自分を構成する要素は何なのかが問われます。
いのちのあかしでは、人間同士のガチンコタートルトークのようでありながら、リアルタイムの通信と微細な変化まで写す映像で、偶発性の高い会話から生まれた感情の揺れ動きが伝わってきます。

いのちについての問いかけを、他人と共に体験し、外に出ると大きな円に囲まれて世界の国々が並んでいる様子は、今の時代にリアルで万博を開催する価値があると思いました。
中心でいのちについて問われ、円の中で世界の文化を体感し、その外で未来の一案を提示されるというのは、かなり面白い構造でした。
最近のテーマパークは、エリア内部の世界観は作り込まれていますが、パーク全体の中で各エリアは有機的に連携しておらず、各々が独立しています。その象徴が、各エリアをポータルで結ぶ形で完全独立させたエピック・ユニバースでしょう。
テーマパークのテーマ性が失われている中で、大阪万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマを、個々の施設配置によっても表現できていると思いました。

偶発性があり、メッセージを強要せず、個人の受け取りに委ねる、その姿勢はイマーシブコンテンツが広まった現代らしいものでしょう。
日常社会がエンタメ化していると言われて久しいですが、その時代で逆にアトラクションは受け身のエンタメから離れていっているように感じました。
一方、これはかなり積極的に受け取りに行く必要がある体験だということでもあります。
楽しませてみろという姿勢で、受け身でスリルや感動を求めていっても、よく分からないまま終わりそうです。
イマーシブシアター以上にアート要素が強いため、ストーリーや謎解きといった誘導もなく、積極的に問いを受けにいく姿勢が求められます。
この万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」を自分で探しに行くんだと意思を持って訪れるのが良いと思いました。

そして、何かと批判されがちな万博において、積極的にテーマを受け取りに行く必要があるのは、かなり感想が二極化しそうです。
どんなもんかと批判的だったり角度をつけて見る人はまず楽しめないでしょう。
企業パビリオンはまだアトラクション性が高いですが、ライドアトラクションがないのも愛知万博に比べて受動的な体験がしにくくなっています。
楽しみだった人は好意的な一方、批判的な人はより批判的になり、それがSNSのエコーチェンバーでどんどん二極化していく、ある意味で現代社会を表すバーチャル万博が生まれそうです。

世界が一つの円になっていて、その周りに未来を提示する企業パビリオンがあるという構造は、非常にEPCOT的です。
夜、大屋根リングの上に登って、世界のパビリオンを眺めるのは、なんだか良い体験でした。
EPCOTでワールドショーケースを周った後にIlluminationsを見るような、世界の繋がりといのちについて考えられるようでした。
体験した瞬間にハッとさせられるというより、未来での選択肢を今のうちから提示されたような、じんわり響くものです。
ワクワクする未来に突き進んでいこう!というより、いつか提示された未来社会が現れたときに、万博で触れておいて良かったと思える気がします。
開業したら、時間をかけて海外パビリオンを見てまわりたいです。

ミャクミャクは可愛かった。
もっと会場のあちこちにいて良かったのに。

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