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ミュージカル「くまのプーさん」日本開幕


ミュージカル「くまのプーさん」の日本ツアーが始まりました。
4月から7月まで全国を巡回します。

東京公演は座席で話題となってしまいました。
ゲネプロでS前方椅子席(前方誰もいない)、座席変更初日にVIB桟敷席、東京千秋楽S後方椅子席で観ました。
桟敷席は腰痛くはなるけれど、舞台の高さも下がった分イーヨーと目があうくらいの高さで、見にくさはありませんでした。
かっちりしたミュージカルではなく、ゆるく見られる雰囲気になっていて、これはこれでありだと思いました。
桟敷席の後方側だともっと違うのかもしれないけれど。

座席問題の要因でもあるのですが、プーミュージカルの大きな特徴は、小規模な公演だということです。
ディズニーミュージカルは大規模に舞台装置を組んで、舞台ならではの手法で作品を表現するものがほとんど。
それに対してプーは、観客との距離が近く、舞台を見にきたというよりもプーのアニメーションが目の前で展開されているようなものでした。

このミュージカルは、セサミやパディントンなどのパペットミュージカルを作ってきたジョナサン・ロックフェラーによる作品。
プーたちは全てパペットで表現され、パペット操者が声の演技も行います。
プーは元々ぬいぐるみで、「ザ・ブック・オブ・プー」などパペットを使ってプーを表現したアニメーション作品もあります。
パペットとの相性が良いのは明らかです。
演者は日本人キャストですが、かなり声も似せていてすごかったです。
パペットの動きも細かい部分までキャラクターの性格が出ていて、本当にプーたちが動いている様子を見ているようで、演者の存在を意識させませんでした。

ストーリーはオリジナルですが、プーのあるある展開を多く盛り込んでいます。
不安になるくらいバカな発想と、常識のあるピグレットがプーの謎論理に惑わされてしまう様子、何の伏線でもなく回収せずに進んでいく展開、どれも非常にプーの物語らしいものでした。
途中から客席も声を出して笑っていいんだという空気になってきて、プーの独特のツボで笑い声が出ていて良かったです。
プーの物語を見ながら多くの人と声を出して笑うなんて舞台でないと経験できなかっただろうなと謎の感慨までありました。

歌はアニメーションをそのまま使用。
いくつもの歌をそのまま使えることから、ストーリーがいかにプーのあるある展開で構成されているかわかります。
歌詞もアニメーション日本語吹き替え版を完全使用。1文字もずれないので聞いていて非常に心地よいです(映画実写版や四季版の方を見ながら)。

驚いたのは、『完全保存版』以外の要素も多く使用していること。
特に『ティガームービー』は要素が多く、1時間のミュージカルのうち一番のハイライト楽曲が「ウープディドゥーパージャンプ」になっています。
「ワンダフル・シング・アバウト・ティガー」の2番も使われていますし、途中では「Round My Family Tree」のイントロ音が流れます。
さらにティガームービー冒頭でティガーがカンガと挨拶するくだりまで再現されています。
細かいやりとりがしっかり映画から使用されていて、日本語もしっかり追いかけていて驚きました。

オフブロードウェイ開幕前の予告映像で「新くまのプーさん」の音楽が使われていましたが、ミュージカル本編でも「新くまのプーさん」OPテーマを要所要所のBGMに使っていました。
畑を巡るやりとりなど「新くまのプーさん」らしい展開です。
完全保存版を中心に、ティガームービーと新くまのプーさんを入れた舞台が生まれるとは。

新曲もありましたが、歌詞は「Tiddley Pom」が入っているものと「Sing Ho」が入っているものの2曲で、どちらもミルンが書いたプーの詩を使用しています。
そしてこの2つの詩は、『ピグレットムービー』でミルンの詩をベースに曲化されたもの。今回の音楽とは異なりますが、新曲も元の詩をこだわって選んだんだろうなということが伝わってきます。

作り手の愛が伝わってくる、見事な舞台化でした。
パペットという手法はプーにぴったりだし、ストーリーの作り方も、しっかりアニメーションの言葉を使いしっかり日本語に訳す姿勢も好きです。
素晴らしい作品でした。

今回、色々と取材したので、もっと深い話を書いて出す予定です。
まだ先の話でどこに出すか告知できないのですが、見つけたら読んでください。

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