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 - 映画  - by poohya

『ラーヤと龍の王国』感想

『ラーヤと龍の王国』を観ました。

ネタバレありの感想です。

舞台は東南アジアをモチーフとした架空の国「クマンドラ」。
その国が5つに分割されており、ラーヤの父は、クマンドラの中心の国「ハート」を治める「龍の石」の守護者。
龍の石が壊れたことで、魔物ドルーンが復活し、人々が石に変えられてしまいます。
ここ、龍の石と人々が石に変わることで「石」が重複していてややこしい。石を持った人が石化しているとか自分で書いていて分からなくなります。どうにかならなかったんですかね。

で、父が石になってしまったので、ラーヤが「最後の龍」を見つけ、5つの国に散らばった龍の石の破片を取り戻しに行く冒険ストーリーです。
6年かかって「最後の龍」(原題は「Raya and the Last Dragon)のシスーを見つけ出し、そこから破片集めに向かいます。
石の破片を獲得する毎にシスーは特殊能力を得て、ラーヤは1人仲間を加えていきます。
あまり戦闘アクションで石を奪い取る形式ではなかったのは、予告編のイメージからは意外でした。
最近の本国宣伝のアクション偏重っぷりを改めて感じました。

予告編に対して意外だったのはシスーも。
日本で思い浮かべる龍に対して細身で不安だったのですが、龍が水の神だったことは意外でとても良い設定でした。
少なくとも日本(及びその元となる中国)と同じ文化で、今更ですが最近のディズニーはちゃんとリサーチを生かしていますね。
とはいえディズニーアニメーションの東洋龍として唯一の存在だったムーシューに近いイメージを持ってしまい、もっと荘厳なイメージはないのかとも思ってしまいます。
ムーシュー以上にシスーが似ていたのはドリーでしょう。
特に吹き替えの喋り方はとてもドリーでした。
ラーヤとのペアで、『ファインディング・ニモ』のマーリンが女の子になったような状態です。
そう思うとディズニーアニメーションで女性バディの冒険ものは珍しいですね。
ブーン船長やノイが加わっても、女性バディ+子供のようなチームですが、トングが加わったことで明確に擬似家族が構成されていきます。

ラーヤの父は5つの国の人々が信じ合うことを信じた人で、ラーヤはナマーリを信じたせいで龍の石が割れこのような事態に至ったことを悔いて人間不信になっています。
その対比がテーマであることは早くから示されていましたが、チームが増えるたびに、シスーは人を信じるタイプで、他の人々はみんな人を信じないという構図が明らかになります。
最終的にラーヤがナマーリを信じて、交渉で龍の石を取り返せるのかが勝負になることは目に見えています。
それに向けて、シスーは自分の過去を伝え、ラーヤは父の想いに寄り添うことで、人を信じていきます。
しかしナマーリは信じ切る決心がつかず、もう少しのところで今度はラーヤ側も信じ切れず、結果的にシスーがボーガンで撃たれてしまいます。
これでみんな信じる心を失ってしまったようでしたが、水がなくなりドルーンが攻めてくると、ラーヤの仲間たちは他国の人を助けようと行動します。
そしてその行動を見て動かされる形で、ラーヤとナマーリも心を入れ替え、最終的にナマーリを信じ彼女に全てを託すことで解決されます。

最初は父を助けることだけが目的だったラーヤが人々のために行動する姿は、最近の「プリンセス」らしい姿でしょう。
国の人々のために行動するのと父のために行動することが相反しないため、その変化は大きな問題にはなりませんが…
そして何より、自分が龍の石を完成させるのではなく、その役目をナマーリに託すのは、信じる心とヒーローらしさをよく表しています。

立場上プリンセスにあたる人物が神にあたる化身と旅をし、世界を蝕む魔物を倒すという構図は『モアナと伝説の海』に通じます。
どちらもその国の後世に伝わる神話として捉えたとき、国の民も共に巻き込んで戦ったラーヤの方が、その国の人々は未来も信じる心を大切にする文化になるんだろうなと思います。

信じる心をしっかり使い、力の強さによる解決を行わないのは、これぞという派手なシーンはないけれど良いものでした。
分断や対立という最近多い構図ではありながら、その下部にはドルーンという絶対悪が存在しています。
ただの分断社会だけでなく、そんなことしている場合じゃない「疫病」が世界を蝕む様子は、制作時期的に偶然ですが、あまりにも今の世の中に合っています。

良いんですけれど、パッとしない印象は拭えません。
数年後、なんとなくのイメージは覚えているけれどあらすじが言えなくなっていそう。
最近の物語の割には主人公チームの人数が多いですが、みんな背景も行動理由も大体一緒。
最後の石を巡る展開でも、仲間たちがそれぞれの特技で攻めて最後にラーヤがナマーリと話し合いで解決するのかと思いきや、ノイの盗人能力でナマーリに手紙を渡しただけで他のメンバーは特技を披露することもなく。
ナマーリへの手紙もシスーが飛んでいくとか矢とかで良かったのでは。
シスーが人に裏切られて信じられなくなるくだりとか、ラーヤがブーンを差し置き料理するくだりとか、物語に奥行きを与えそうな展開なのに扱いが雑に感じました。
国の数も5でも4でもほとんど展開に影響がありません。
石が5つに割れたのも、シスー兄弟が5匹だったのもただの偶然ですし。

とはいえ、第3次黄金期でモアナまで行き、続編ものでアナ雪2まで行った先、『ラーヤと龍の王国』はこれからのディズニーの姿をしっかり見せてくれたように思います。

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