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 - くまのプーさん, 駄話  - by poohya

「魔法の場所」とは何処なのか

以下は先日Twitterに書いた「遊び」から見るプー考察と副産物 – Togetter を元に一部書き直したものです。

きっかけはこのつぶやき。
Twitter/bbneelah

「何もしない」には子どもの「遊び」と関わりがある。「遊び」は「なんでもないこと」を繰り返すこと。「遊び」の定義として、出来たものに対してそれを壊 すことができるかというものがあり、子どもの「遊び」は、かけた時間の労力は目に見える形で残らない(砂場等、作品を残さない)。

ピーターパンも子どもの世界と大人の世界とを区別して描かれてるように、多くの作家が「子どもの世界」「大人の世界」について描いている。子どもとの遊びには「子どもの世界」に入ることが重要であるという話

子供の世界と大人の世界、プーでは当然100エーカーの森が子供の世界で、現実世界が大人の世界になっています。
プーの物語はミルン親子の現実世界での会話から100エーカーの森に入ることで始まります。
この導入があることで、プーは子供だけでなく大人も楽しめる作品となっているのです。
『クマのプーさん』では最初と最後に親子会話が入っています。
『プー横丁にたった家』では”Contradiction”が導入となっています。
では、終わりはどうなっているのか。
物語の最後でクリストファー・ロビンは森を去り、大人の世界へと旅立ちます。
そしてその舞台となっているのが「魔法の場所」(Enchanted Place on top of the forest)。
ここは子供の世界でも大人の世界でもない中間地点です。

「最終章」は100エーカーの森から始まります。
森の仲間たちみんなで決議文(イーヨーの詩)にサインをし、クリストファー・ロビンに渡します。
それを読み終わる時にはその場にいたのはプーだけになり、ここで「一番好きなこと」の会話が行われます。

何もしないことをするという答えが100エーカーの森内で行われているのです。
子供の世界に今別れを告げようとしているクリストファー・ロビンが最後に残した言葉がDo Nothing. 子供の世界に住み続けるプーには当たり前のことにしか思えない言葉でした。

「何もしないことをする」とロビンが言う前にプーが出した答え、これが100エーカーの森でのプーの生活を象徴した言葉なのですが、つまりこれこそが「何もしないこと」なのです。

“What I like best in the whole world is Me and Piglet going to see You, and You saying ’What about a little something?’ and Me saying, ‘Well, I shouldn’t mind a little something, should you, Piglet,’ and it being a hummy sort of day outside, and birds singing.”

同じようなやり取りが『クマのプーさん』の最後でも見ることが出来ます。

“When you wake up in the morning, Pooh,” said Piglet at last, “what’s the first thing you say to yourself?”
“What’s for breakfast?” said Pooh. “What do you say, Piglet?”
“I say, I wonder what’s going to hapen exciting today?”said Piglet.
Pooh nodded thoughtfully.
“It’s the same thing,” he said.

子供の世界での活動=遊びは何も残すことが無い生産性の無い活動です。
それを大人たちは「何もしないでいる」と言いますが、彼らは「何もしないことをしている」のです。
この能動性こそがDo Nothingの本質です。

さて、Do Nothingの会話のあと、二人は「魔法の場所」へと向かいます。
ここでクリストファー・ロビンはプーに学校で習っていることについて話します。
プーは理解が追いつけず夢の状態に陥ります。
ここでクリストファー・ロビンはもう何もしないでいることが出来なくなったと告げます。
ここで僕が100歳になっても忘れないでの約束が行われます。
この先どんなことがあっても許して。
彼らはもう会うことができないのです。
それでもプーは時々一人で「魔法の場所」に来ることを約束し、そして少年と熊はいつでも魔法の場所で遊んでいるのです。

Wherever they go, and whatever happens to them on the way, in that enchanted place on top of the Forest, a little boy and his Bear will always be playing.

「最終章」のあと、プーは子供の世界に戻り、ロビンは大人の世界に住みます。
その中間地点はどちらからも行くことが出来ますが、そこで直接会うことは出来ない。
それが「魔法の場所」の特性です。
今後100エーカーの森で何が起ころうとも、外の世界で何が起ころうともそれはお互いに関与しない、完全に区切られた世界になった瞬間がこのシーンです。

enchanted place ON TOP OF THE FOREST.
大人の世界の人間が100エーカーの森を見る場所、そここそが「魔法の場所」なのです。

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