*

スター・バタフライが見せるこれからのプリンセスの姿

ディズニーチャンネルの「悪魔バスター★スター・バタフライ」、日本でも放送が進んできて、いよいよシーズン3の佳境に入ってきました。

ディズニープリンセス像の変遷はあちこちで語られています。
近年は自分らしいプリンセス像を描くことが多くなってきていますが、スターバタフライのプリンセス像はかなり先を行っています。

以降「悪魔バスター★スター・バタフライ」のネタバレが含まれます。

典型的なディズニーチャンネルアニメーション

スター=プリンセスがこの物語の大前提です。
スター・バタフライは魔法のある国ミューニ王国の女王の一人娘。
ミューニは女系の王が多く、スターは母親の後を継ぎ女王になる立場のれっきとしたプリンセスです。
しかし、スターはおてんばでプリンセスの風格など全くありません。
そこで両親はスターを地球に送り、勉強させることにしました。
地球のホームステイ先に住むのはマルコという空手少年。
スターはマルコと暮らしながら学校に通います。
たまに悪役ルードがスターが持つ魔法のステッキを狙いに攻めてきますが、スターの魔法やマルコの空手技で撃退します。

そんな、全然反省する気のないヘラクレスのような話が元々のスター・バタフライでした。
主に友情がテーマで、悪役も弱くて憎めないルードという、典型的な楽しいディズニーチャンネルアニメーションです。
ところがシーズン1のフィナーレでルードと決着が着いてしまい、シーズン2はスターに対する悪役がほぼいない形となります。
シーズン2のメインストーリーはスターのマルコに対する恋心で、サブストーリーとしてルードのその後が描かれていきました。
もはや「悪魔バスター」の部分はどこ行ったんだという感じです(原題はStar vs the Force of Evil)。

自分らしいプリンセス

「ちいさなプリンセス ソフィア」が描くように、最近は伝統に縛られない自分らしいプリンセスのやり方を求める姿が多くあります。
スター・バタフライのシーズン2では、スターが将来女王になる立場であることがはっきり見えてきます。
ソフィアは王位継承権3位(そもそもエンチャンシア王国の女性に王位継承権があるのかは不明)でなおかつ幼いため、好きにプリンセスとして遊んでいる感もありますが、スターのプリンセスとしての立場は紛れのないものです。
スターが女王になれるように魔法の勉強をする姿があちこちで描かれます。
しかし真面目に勉強する気にならないスター。
スターが魔法を使えるようになるポイントは、彼女が自分自身を深く知るということでした。
王家の歴史も知った彼女は、プリンセスが伝統的に受け継いできたイメージを壊してでも、飾らない本当の自分として生きていきたいという強い思いを見せます。

そしてシーズン3のオープニングスペシャル「ミューニのための戦い」でスターは「深く突っ込み」魔法を手に入れます。
シーズン3はついに舞台がミューニへと移り、本格的にプリンセスとしての活動を見せます。
ミューニはミューニ人(人類)と怪物にお互い偏見がありました。
しかしシーズン1から怪物と絡んでいたスターはその偏見を無くし、共に生きようとします。
かなり本格的な外交までこなすようになったスターは、間違いなく「自分らしいプリンセス像で生きるプリンセス」です。

「全ての女の子はプリンセスになれる」からの脱却

最近は「全ての女の子はプリンセスになれる」というテーマのプロモーションも多く見られますが、スター・バタフライはその先を行きます。
シーズン1の冒頭からセイント・オルガというプリンセス更正施設のエピソードがあり、シーズン4に向けてこのエピソードが深く関わってくるようになります。
最初はセイント・オルガに送られた親友のポニーを救うため潜入し、典型的なガチガチのプリンセスに洗脳される女の子たちを解放するという話でした。
これも典型的なプリンセス像を打ち破るスターの姿を最初から見せていたエピソードでした。
潜入するためにマルコもプリンセスの変装をしたのですが、解放された彼女たちはプリンセスとしてマルコを崇めるようになります。
マルコはプリンセスではなく男の子であることを言い出せずにいたのですが、シーズン3「プリンセス・クズ」で真実を告白しようとします。
そこに現れた悪役がマルコより先に男だという真実を明らかにします。
しかし解放されたプリンセスたちは、マルコが男の子であろうとプリンセスとして支持します。
もはや全ての女の子がプリンセスになれるのではなく、男の子でもプリンセスになれる時代です。

プリンセスの定義とは

ムーランはプリンセスなのか?モアナは自分でプリンセスではないと言っているがプリンセスなのか?といった、プリンセスの定義はしばしば問題になりますが、前述の通りスターは紛れもなく将来女王になる立場、プリンセスです。
でした。
シーズン3で明らかになる真実は、スターも現女王のムーンも正当な王家の血を継いでいないというものでした。
かつての女王イクリプサが怪物と結婚し怪物の子を産んだために、娘を取り替えて純血の人類をプリンセスに変えていたのです。
急に「プリンセスではない」という事実を突きつけられるも、王国のためにプリンセスに課せられた務めを果たすスター。
単なる夢見る姿ではなく、プリンセスとは何かを真剣に向きあうスターには、更なる問題が待っています。

以降シーズン3フィナーレ(日本未放送)のネタバレ

プリンセスのパラドックス

シーズン3のフィナーレでさらに物語は進み、スターの母ムーン女王の命が危うくなります。
ムーン女王が死んだかもしれないという中で、スターは暫定的に女王になります。
自分がプリンセスである正当性が失われた状態で、ムーンが生きていると信じながらも女王の立場になるスター。
国を背負う責任ある立場、プリンセスは単なる遊びではなかったことがよりはっきり示されます。

そしてプリンセスの定義と女王の責任が問われる中で、シーズン3の最後の最後、スターは彼女らしい決断を下します。
定義上のプリンセスを手放したスターの行動は、相手への思いと誠実さに満ちた自分らしいプリンセスとしての行動でした。
プリンセスらしさがプリンセスを手放させるというパラドックスの中で、真のプリンセスはどちらなのかを見せてくれました。

コミコンで公開されたシーズン4の予告では、ステッキを失ったスターが自らの手から魔法を出せるようになっています。
スターはムーンを探している様子。
ムーンは戻ってくるのか、そもそもスターたちはどうやって生きていくのか、ミューニどうなっちゃうのか…
スターがどう「プリンセス」と向き合っていくのか、シーズン4は2019年放送開始ということで、まだまだ情報は小出しにされそうです。

  • Post
  • このエントリーをはてなブックマークに追加