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 - 映画  - by poohya

『アベンジャーズ/エンドゲーム』感想(ファイアボールとソフィアのネタバレを含みます)

『アベンジャーズ/エンドゲーム』公開から1ヶ月たったので感想を書きます。
最高。これ以上の映画体験はもうないかもしれない。
そんな感想は書き尽くされているので、エンドゲームを観て何を思い出したかを書こうと思います。
というわけでこれ以降は『アベンジャーズ/エンドゲーム』、及び「ファイアボール 」、「ちいさなプリンセス ソフィア」のネタバレを含みます。

『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、マーベル・シネマティック・ユニバースの大きな区切りでありながら、マーベルが完全にディズニー作品になった映画だと思いました。
鑑賞しながら「ちいさなプリンセス ソフィア」「ファイアボール」を思い出しました。
最も現代のディズニーらしい作品だと思っている2作品が『エンドゲーム』と類似していることが、本作がディズニーらしいと言える理由です。

僕の中でソフィアが何を表現している作品かは、最終回の感想で書きました。
プリンセスは「ロイヤル」に変わる。ソフィア最終話が見せた新境地|舞浜横丁
ここではディズニープリンセスという概念が古く、王家としての「ロイヤル」が新しい姿になると書きましたが、王家にとっての「ロイヤル」とは、王家でない人にとっての「ヒーロー」だと思います。
その点で『エンドゲーム』のソーは印象的でした。
オリジナルメンバーの物語が深く描かれる中でソーは王家として分かりやすい姿を見せてくれました。
王として生きなければいけない、しかし自分は王に向いていない、もっと自分らしい生き方があるはずだ。
ソーが長い旅路で導いた結論は王ではなかったのです。
この姿はソフィアがドレスではなく守護者の服で幕を下ろした姿と重なります。
ソフィアは最初のエピソードで立派なプリンセス「ソフィア1世」(Sofia the First)を目指しますが、最終話で選んだ自分らしい「プリンセス像」がプリンセスではなかったのです。
同じように、自分らしい「ヒーロー像」が一般的なヒーローではないこともあるのです。
『エンドゲーム』のすごいところは、10年に渡り描いてきたアベンジャーズのオリジナルメンバーの旅路が終わり、その終着点がそれぞれの出発点と逆を辿ったことです。
トニーもスティーブもソーもバナーも、目指し進み続けた理想の姿が本当の自分が辿り着く姿とは限らなかった。
現代のディズニーらしい結論だったと思います。

そして今まで出し惜しみ続けた「アベンジャーズ アッセンブル」。
トニーとスティーブが仲直りしオリジナルメンバーが揃ったところで言えば満点だと思っていましたが、実際はその遥か上でした。
指パッチンで消えたヒーローも含めみんなが集まってのアッセンブルでした。
その中にはワカンダの戦士や魔術師たち、名もなきヒーローたちがいました。
彼らもアベンジャーズであることが示されたのです。
これを下手に描いたのが『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』でしたが、さすがアベンジャーズは描き方のクオリティが桁違いです。
「全ての夢見る女の子はプリンセスになれる」と同じように、誰もがヒーローになれるのです。

ディズニーらしいメッセージ性を強く感じた『エンドゲーム』でしたが、そこに至るまでの2時間はファンのための贅沢な映画体験でした。
10年分の歴史を辿る「タイム泥棒」です。
タイムトラベルは噂されてはいましたが、単に指パッチンをやり直すのではなく、10年分の歴史に戻りながら、各自がやり残したことをやり遂げていく、自分らしさを追い求める究極の旅路でした。
ただこのやり方、今年既に観ていたのです。
正確には聴いていたのです。
「ファイアボール オーディオ・オモシロニクス」
『ファイアボール』に魅了されたライターが振り返るファイアボール10周年と、「ファイアボール10周年記念盤『ファイアボール オーディオ・オモシロニクス』」最速レビュー。 -Disney Music
「ファイアボール外伝 ワンダーの方へ」は、10年間の物語をタイムトラベル形式で振り返るラジオドラマでした。
完全に同じです。
パラレルワールドを修正するためにタイムトラベルすることも、10年の物語を辿ることも一緒です。
そして何より、タイムトラベルの目的が同じなのです。
『エンドゲーム』内で言及される『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など歴史的なタイムトラベル作品との大きな違いは、過去を変えて現在を書き換えるのではなく、未来を変えるためにタイムトラベルをすることです。
「ファイアボール外伝 ワンダーの方へ」では、「アボガド」によって生まれたマルチバースを修正するため、ゲボイデボイデは過去を改変しようと旅立ちます。
しかし行き着くのは未来ばかり。
過去を変えるのではなく未来を変えるためのタイムトラベルであることがはっきりと語られます。
『エンドゲーム』も過去作を書き換えるのではなく、未来を変えるタイム泥棒をしています。
過去は変えられないけれど未来は自分たちの手で変えることができる。
ファイアボールは、遠い未来の「ディズニーらしさ」が失われた世界で、「ディズニーらしさ」を取り戻そうとドロッセルの物語です。
混沌とした現代にもまだ「ディズニーらしさ」は存在します。
それを失わないため、未来を変えるために、自分らしいヒーロー像を見つけて行動する、それが『エンドゲーム』が描いたヒーローでした。

誰もがヒーローになれる。
そのヒーロー像とは自分らしさを見つけることで得られるもの。
自分らしいヒーローを追い求めることで、希望ある未来に変えることができる。
現代のディズニーが打ち出すメッセージが『アベンジャーズ/エンドゲーム』には詰まっていました。

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