ネタバレ感想『シュガー・ラッシュ:オンライン』
全文ネタバレです。
『シュガー・ラッシュ』の続編。
キャラクター説明もあまり無いまま進むので、前作の鑑賞は必須です。
時間軸も現実と同じように6年後の2018年として動いています。
インターネットが関わる以上いまと同じ時間なのは大事ですね。
思ったより『シュガー・ラッシュ:オンライン』ではなかったな。
最後シュガー・ラッシュをネット接続するのかと思ったら違った。
ところで元々ネットゲームにFix-it Felix Jr.やシュガー・ラッシュは無いのかな。
朝焼けすごい
前作2012年の時点でCGのクオリティは高いレベルに達していましたが、今作ではさらに進化。
明け方の空気感の出し方は本当に見事です。
光だけで情緒を感じさせるCGは流石。
ネットの世界観すごい
前作はゲームの中の世界を描き出し、ゲームキャラの出演も話題となりました。
今作ではゲームキャラの出演は当たり前。
さらにインターネットの世界へ飛び出し、eBayやpinterestなどネットでおなじみのサービスが重要な役割を担います。
『モンスターズ・インク』のドア倉庫のようなインターネット空間は、観客が行ってみたいと思える世界観。
この世界観の創出はやはりディズニーのすごいところです。
この記事自体がインターネット空間にあるもので、アバターとして自分たちもあの空間にいるはず。
そんな想像を膨らませられる世界観に加えて、ポップアップ広告やいいねの集め方など面白いけれどあり得そうな解釈も見事です。
ダークウェブやアンチコメントへの描写も忘れないのが最近のディズニーらしいですね。
プリンセス問題
そして、ゲームキャラに代わり今作の宣伝の大きなポイントが、インターネット上のOh My Disneyです。
事前にOh My Disneyの登場を聞いたときは、歴史を繋いできたディズニー長編アニメーションで何十年も存続するとは思えないサイトを取り上げるのはどうなのかと思っていました。
しかし、そこまでOh My Disney要素は強くなく、らしいコンテンツは自分に近いプリンセス診断くらいで、あとはネット空間のディズニーワールドのようなものでした。
Oh My Disneyというよりハウス・オブ・マウスに近い感じ。
そこは良いのですが、問題はプリンセスです。
自分もプリンセスだと言うヴァネロペに対してディズニープリンセスたちは「強い男に助けられたと思っている」という共感ポイントでまとめます。
プリンセス像に対する皮肉が入ったと思ったら、残りのシーンはそんなことはなく。
Tシャツに着替えるのもヴァネロペの服を見た好奇心という感じで、プリンセスのオフの姿というわけではありませんでした。
そして、ミュージカルの突然歌いだす問題という定番ネタへ。
いわゆるWishソングを生み出す過程と、それにより自分の欲しいものがわかるというアドバイスが与えられます。
ヴァネロペはその通りにWishソングを得ます。
アラン・メンケン作曲の超ベッタベタなWishソング。もう気持ち良いくらいベッタベタな曲です。
『魔法にかけられて』のようなどストレートなオーダーにどストレートに応えるメンケンの職人技が光ります。
そしてヴァネロペは本当の夢は「スローターレース」にあると気付きます。
最後にもプリンセスは再び登場。
ラルフの危機を、それぞれの特技を合わせることで助け出します。
結局ステレオタイプのプリンセス像があっただけで、面白いんだけれど何か違うというモヤモヤが終始漂っていました。
前作を忘れたストーリー
ストーリーはヴァネロペの夢と友情という究極の二択へと動いていきます。
前作はヴィランを隠す手法でしたが、あれから6年が経ち今は明確なヴィランを出さない流れ。
今作の大きな敵はラルフの不安定さをコピーしたウイルス、つまりラルフ自身でした。
ラルフ自身と向き合う中で、常に一緒にいるのが友達ではなく違う夢をそれぞれ追うこともあるという答えに辿り着きます。
ヴァネロペはコードを書き換えてもらい「スローターレース」に残ることを決断。
ラルフは元のゲームに帰り、ヴァネロペと遊ぶ以外の生活を見つけ出します。
まあ映画単体としては良い結論だと思いますが、これ『シュガー・ラッシュ』の続編ですよね。
ヴァネロペがやったことは「ターボ」ではないの?
ターボ(キャンディ大王)と違って相手ゲームの同意を得て移動していますが、自分のレースゲームに飽きて人気作に移ったのはターボと変わりません。
前作はラルフが30年間ずっと悪役として同じことを繰り返している、その役割を受け入れる話でした。
ラルフがFix-it Felix Jr.に戻ったのはラルフがいないとゲームが成立しない(=故障と思われプラグを抜かれる)からで、もしFix-it Felix Jr.に悪役が何人もいれば前作のラルフも他のゲームでヒーローになって構わなかったということ?
そしてシュガー・ラッシュにはレーサーが何人もいるからヴァネロペがいなくても成立しますが、ヴァネロペはシュガー・ラッシュのプリンセスなはず。
前作のラストで民主主義を採用しヴァネロペは君臨すれども統治せず的な状態を作り出しましたが、だとしてもシュガー・ラッシュから完全に離れて良いのでしょうか。
プリンセスを描くなら最低限王女になるものの責任は果たして欲しいです。
第3黄金期モアナで終わった疑惑
単体で見るとまあ良いですが続編であることを踏まえると前作を台無しにするという典型的なダメ続編パターンに陥った作品。
小ネタは面白いですが、小ネタに走り過ぎて肝心のストーリーをおざなりにしてしまうのはディズニーではご法度です。
エンドクレジット中のおまけ映像、確かにパンケーキ予告編のシーンなかったなと思っていたので笑いましたが、予告編を振りにするのはマニアックすぎ。最後の最後のもねえ…
ディズニーオタクがオタク色を出しすぎている感があります。
子供の頃からのディズニーオタクが第3次黄金期を作り上げ映画を復権させましたが、それが度を超えてしまった印象。
この後『アナと雪の女王2』しかラインナップが発表されていないですが、第3次黄金期は『モアナと伝説の海』で終わったんだろうなと思ってしまいます。
トゥーンスタジオの後継で続編レーベル作ってそこでやればいいのに。