ネタバレ感想『リメンバー・ミー』(Coco):これぞまさにピクサー作品と言える名作
ピクサー最新作『リメンバー・ミー』を観ました。
ネタバレ含む感想は続きから。
あらすじは書かずにネタバレ感想だけなので、鑑賞後にお読みください。
ネタバレなし感想はこっちで→【ピクサー】最新作『リメンバー・ミー』レビュー ピクサーが大切にする3つの要素が詰まった名作! – ウレぴあ総研ディズニー特集
正直かなり期待値は低かったのですが、蓋を開けてみたら良い作品でした。
良くも悪くも非常に「ピクサーらしい作品」という表現に尽きます。
モアナ、リメンバー・ミーと典型的(理想的)な作品が続き、ディズニーとピクサーの黄金期の終わりを示すような象徴的作品な気がします。
期待値が低かった理由の一つに、同じく死者の日をテーマにしたアニメーション映画『ブック・オブ・ライフ』の域を超えられないのではないかという不安がありました。
メキシコにおける死者の日のイメージがどこまで構築されているのか分からないので判断が難しいですが、死者の世界がピクサーの創造的な世界でないことは確かです。
しかし、ピクサーらしい「ルール」に沿った世界観で物語を進めていったのは良かったです。
死者の日に現世に帰れるのは写真が飾られている人だけ、現世の人々から忘れられると死者の国からも消える、家族から許されれば現世に帰れる、といったルールを作り上げ、ルールを利用したストーリーを展開していく技法はさすが。
死者の国の描き方はアニメーションの真骨頂。
人間の世界の街や営みを別の世界観に置き換えたらどうなるか?という想像力はこれぞピクサーという作り込みとギャグセンスが光ります。
イマジネーションに溢れた、こんな世界楽しそうという要素盛りだくさんの世界観でした。
ストーリーは、死者の日自体のテーマでもある家族を徹底的に描き、自分のルーツを探す冒険物語。
ミゲルは序盤で自分の家系にも音楽家がいたことを知り、それを求めて冒険に出かけます。
早い段階で死者の国に行き、現世パートは短めです。
しかし、家業と音楽の選択を迫られ苦悩する姿は『ブック・オブ・ライフ』と同じ。
ブック・オブ・ライフと違い、ミゲルは音楽も自分の家系にあることを序盤で確信するため、苦悩はかなり薄いです。
リメンバー・ミーは自分のルーツを探すことを冒険なので仕方ないのですが、結局家族も音楽も得て終わるんだろうなというのがわかり切っているのはちょっと残念。
家族愛と音楽というディズニー系アニメーションで大事なもの2強を天秤にかけることを迫られ他のに、あっさり両方手に入れてしまうのは少し捻りが欲しかったところではあります。
その反面、2大要素を両方手に入れたので、フィナーレの大団円感は素晴らしいものになります。
冒険の途中で友情が作られていき、亀裂が入るも衝撃の事実を経て、友情を取り戻し協力して元いた場所に帰ってくる。
ピクサーでおなじみのベタベタな展開ですが、友情の過程の描き方はやはりとつつもなく上手いです。
しかもロペスの音楽も加わっています。
厳しい状況でも前を向いて出会った仲間の助けを借りながら進んでいく姿は、まさにピクサー映画の象徴のようです。
この過程を経てたどり着く、みんなが集まり音楽に包まれたフィナーレは、幸せに溢れた気持ちにさせてくれました。
それにしても、ヴィランの処理が苦手なところまでピクサーらしいですね。
脅迫のように自らの罪を語り、それが周りの人々にも映像で見られて地位没落し終わり、という『モンスターズ・インク』と全く同じ展開です。
鐘が落ちてきて死ぬというのは『ブック・オブ・ライフ』と同じなのですが、文化的な意味があるのかな?
ざっと調べると独立記念日に鐘を鳴らす行事があるみたいですが。
タイトルですが、これは邦題『リメンバー・ミー』が正しいですね。
「リメンバー・ミー」は重要な鍵となる曲名で、それはCocoという人名にも通じるのですが、劇中のremember meというセリフにも大きな意味があるので、むしろ英語タイトルこそ「Remember Me」が良かったのではないかと思います。