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 - くまのプーさん  - by poohya

『クマのプーさん 世界一有名なテディ・ベアのおはなし』

8/3は「はちみつの日」。
毎年この日に合わせてプー関連のイベントが行われます。
今年は8/6から「くまのプーさん展」がスタート。
「くまのプーさん展」8/6~松屋銀座で開催。約1年半かけ全国巡回。 | 舞浜横丁
いつも以上に大きなプーのお祭りになります。

そんなプーの魅力と歴史で溢れる夏、プーに対する知識を深めるおすすめの一冊をご紹介します。

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クマのプーさん 世界一有名なテディ・ベアのおはなし

原題:The Life and Times of the Real Winnie-the-Pooh

昨年出版されたこの本はハートフィールドに住み、そこにあるプーの歴史と文化を残すために活動しているシャーリー・ハンソンの著書。
(ハートフィールドミルン一家が住み作中で100エーカーの森となった場所)

これまで、原作クマのプーさんの背景を知るためには、主にミルン親子の伝記が用いられてきました。
プー原作に関する代表的な資料は以下の通りです。
『今からでは遅すぎる』
A.A.ミルンの自伝。100エーカーの森を成すミルン少年時代やミルンの考え方が分かるが、プー及び児童文学に関する記述はほとんどない。
『A.A.Milne His Life』
アン・スウェイトによるミルンの伝記。非常に詳細でプーに関する記述も多い。邦訳版がない。
『クマのプーさんスクラップブック』
上記アン・スウェイトが取材中に見つけたミルンに関する資料をまとめたもの。
『クマのプーさんと魔法の森』
クリストファー・ミルンによる自伝。彼がハートフィールドで過ごした時期の回想や、プーによって苦しめられた後の人生について語られている。
『クリストファー・ロビンの本屋』
クリストファー・ミルンが本屋を営む過程や娘(小児麻痺であった)についての自伝。プーによる影響がより語られている。
このように、参考にすべき本はいくつかありますが、分厚い本を読んだ結果プーを取り巻く環境がなんとなく分かってくるといったものでした。

ミルン親子についてそれぞれみていくのではなく、プーという一体のテディ・ベアを通して親子の物語やプー現象の経緯を見ていく、プーに対する伝記として書かれたのがこの本です。

プーというぬいぐるみがどのように作られたのか、から始まり、クリストファー・ミルンの幼少期、プーが出版される過程、それの反響、後の親子に与えた影響、そしてプーが世界に与えた影響までプーの歴史がコンパクトにまとまっています。
プーの原作について知りたいという人にとって入門書であり、プーに関する十分な量の知識を与えてくれます。
プーについて既に知識を有している人にとっても、ファーネル社によるプーの誕生や、最近の原作関連の出来事など、新たな知識を得られるものでしょう。

世界有数の人気キャラクター、くまのプーさんがどのような歴史を辿り、どのような影響を与えてきたのか。
是非みなさんに読んでいただきたい一冊です。

第1章 あるクマの誕生
世界一有名なテディ・ベアとなるプーの誕生について、プーのメーカーであるファーネル社の歴史から辿っていく。
20世紀初頭に生まれたテディ・ベアの歴史から、あまり触れられることのないファーネル社の成り立ちまでがまとめられている。

第2章 一歳のバースデー・プレゼント
プーはクリストファー・ミルン1歳の誕生日プレゼントとして贈られた(だからクリストファー・ロビンが100歳のときプーは99歳)。
プーが買われたハロッズの当時の地位について述べられている。
尚、A.A.ミルンの妻ダフネはお嬢様として生まれ育っている。

第3章 ムーン、ブルー、ダフ、ヌーの紹介
A.A.ミルンの少年時代から、ダフネとの結婚、息子クリストファー・ミルンの誕生までを一気にまとめている。
クマのプーさんはクリストファー・ロビンとプーの物語だが、その背景には父ミルンの少年時代の思い出が色濃く反映されていると言われている。

第4章 彼らがとても小さかったとき
プーの思想的背景を探る。
プーは誰の物語なのか。そして彼らの人生にどのような影響を与えていったのか。
原作背景を捉える上で最も重要な部分である。

第5章 ウィニー・ザ・誰(フー)?
なぜウィニー・ザ・プーという名前なのか?
白鳥のプーと熊のウィニーの紹介。

第6章 プーさんと仲間たち
ミルン一家がハートフィールドに構えた別荘コッチフォードファームにおける社交生活を綴る。
A.A.ミルンの文学界における地位とクリストファーの性格が伺える。『クマのプーさんと魔法の森』に近い。

第7章 ロンドンのおでかけ
時は戻り、クリストファー・ミルン幼少期におけるロンドンの家での生活について。
“プーもの”では2冊の詩集に現れるクリストファー・ミルンの日々が分かる。

第8章 ハートフィールドの我が家
ミルン一家がハートフィールドに別荘を構えるお話。
100エーカーの森が生まれる瞬間である。

第9章 プー横丁
ハートフィールドでのクリストファー・ミルンの日々。
直接的にプーの物語が生まれるのがこの部分であり、一般的な原作知識として最も重要な部分となる。

第10章 彼の指は風のようにページを吹き渡る
挿絵画家E.H.シェパードについて。
プーがついに出版される。

第11章 勢いに乗るプー
プー発売後、クリストファー・ミルンが少年だった時代。
ナニー(乳母)と別れ、少年時代を終わらせたとき、物語と同様クリストファー・ミルンはプーから離れていく。

第12章 停滞期
現在まで続く著作権騒動のはじまりとなる、スレンジャー社との契約から始まる。
プーはアメリカにも進出し、その人気に(特にダフネは)喜んでいた。
ナニーがいなくなり、A.A.ミルンとクリストファーは共に遊ぶ良好な関係を築いた。
全てが狂い始める直前の物語。

第13章 戦争と平和
ミルン親子の関係が崩れるきっかけは第二次世界大戦だった。
この頃から父親とのキャリアの違いに苦しめられるクリストファーだったが、同時にプーの名声が厄介になる。
親子は決定的な仲違いをすることとなる。

第14章 アメリカとエリオット・グレアムの時代—-移民たち
一方プーはアメリカで第二の人生を過ごし始めていた。
ここでは、プーのアメリカでの人生のマネージャーとなったエリオット・グレアムについて詳細に述べられている。
クリストファー・ミルンから別れ、新たな人生を歩み始めたプー。
これ以降のプーの歴史について詳細に述べられている本は大変価値があり、既に原作知識のあるプーファンにとっても貴重な文献となる。
故郷英国ではA.A.ミルンが死去し、その数か月後、クリストファーには娘クレアが生まれる。

第15章 スターのプーさん
プーがついにディズニーの手に渡る。
他の著書と異なり、ここではディズニープーについても割と中立的に書かれている。

第16章 里帰り
エリオット・グレアムとの巡業の中、プーは3度故郷に戻っている。
尚2度目の里帰りは著者の働きかけによるものである。

第17章 混乱
プーはついにその住居をニューヨーク市立図書館とし、隠居生活を始める。
世界中の学者がプーに関する研究を行っており、著名ないくつかの本が紹介されている(おすすめはしない)。

第18章 プー横丁にたった店
ミルン一家が去った後のハートフィールドを追う。
アッシュダウン・フォレスト存亡の危機に対し、クリストファー・ミルンまでもが動く。
観光地化されていない聖地となるハートフィールドが、どのように現代を迎えたのか。そしてプーコーナーの誕生を見る。

第19章 慈善家プーさん
巨額の富を生み出しているプー、ここでは彼による慈善活動が紹介されている。
著作者のための王立文学基金を代表とするミルン基金の他、様々な活動におけるプーの役割が列挙されている。
文学、教育関連はもちろんだが、クリストファー・ミルンの娘クレアが小児麻痺だったことから障害者のための基金も多く存在する。

第20章 ネット検索—-「プーグル」
ネット検索で出てくる小話集。

第21章 ぼくを忘れないで
プーに関わった人々は亡くなっていった。
「ふたりのいったさきがどこであろうと、またその途中にどんなことがおころうと、あの森の魔法の場所には、ひとりの少年とその子のクマが、いつも遊んでいることでしょう。」
プーの歴史と功績を振り返りながら、クリストファー・ロビンが100歳を迎えようとしている今を見る。

おまけ
英国プー聖地紀行
第1回 プーの故郷、英国への旅
第2回 ロンドンからハートフィールドへ
第3回 伝説のお店プー・コーナー
第4回 Pooh Bridge(プー棒投げ橋)
第5回 魔法の場所、ギャレオン・ラップ
第6回 プーが生まれた場所、ハロッズ
第7回 名の由来クマのウィニー

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