*

 - くまのプーさん  - by poohya

くまのプーさんの本当の名は「サンダース」はガセ

「くまのプーさんの本当の名前はサンダース」という話がTwitter等で出回ることがありますが、ガセです。

サンダースという表札の下で暮らしていただけ

プーの絵本にそのような記述があるという画像を使って語られることがありますが、ディズニー映画『くまのプーさん/完全保存版』では冒頭でナレーターがこう言っています。

プーはこの美しい森の中、サンダースという名前で暮らしていました。
といっても、サンダースという表札をドアの上にかけて、その下で暮らしてただけなんですけれどね。

「名の下で」の掛け言葉


原作冒頭の挿絵(原画)。プーの家のドア上に「MR SANDERS」の名前がある

原作の冒頭でも同じことが語られています。

Winnie the Pooh lived in a forest all by himself under the name of Sanders.
“What does ‘under the name’ mean?” asked Christopher Robin.
“It means he had the name over the door in gold letters, and lived under it.”

英語でも、under the name of 〜は「〜という名前で」という意味です。
つまりこれは、「サンダースという名の下で暮らしていた」という言葉を、「名の下(もと)」ではなく物理的な「名の下(した)」として掛けた言葉遊びです。
クマのプーさんでは、多くの言葉遊びが入っていて、これもその一つにすぎません。

プーは女の子ではない

もう一つ、プーの名前に関連した話として「くまのプーさんは実は女の子」というのもありますが、これもガセです。
英語版を見れば明らかに、プーに対して「he」(彼)を用いられています。
ではなぜ女の子というガセネタが出ているかというと、プーの名前の由来となった熊がメスだったからです。
日本語では「くまのプーさん」ですが、英語では「ウィニー・ザ・プー」が本名です。
この「ウィニー」の部分が、女性名なのです。

プーの名前の由来

「ウィニー・ザ・プー」の「ウィニー」の部分は、ロンドン動物園にいた雌熊の名前から付けられています。
クリストファーは、ロンドン動物園を訪れるたびに熊のウィニーに会いに行っており、自分のテディベアにも同じ名前を付けました。
このエピソードは原作「クマのプーさん」の「はじめに」にも書かれています。
熊のウィニーについて詳しくはこちらを参照。
クマのウィニーの頭蓋骨、初の一般公開 | 舞浜横丁

では「プー」の名前はどこから来たかというと、白鳥の名前。
クリストファーと家族が休暇に訪れた湖で白鳥に出会い、その白鳥を呼ぶときに「プー」と言ったことから白鳥自体をプーと呼ぶようになったと言われています。
この白鳥の名前をテディベアに授けたのです。

クリストファーが好きだった熊と白鳥の名前をとって、「ウィニー・ザ・プー」と名付けられました。

日本語では「くまのプーさん」

「ウィニー・ザ・プー」は日本で「くまのプーさん」と訳されています。
これは原作が邦訳されたときから、ディズニー版まで統一されており、原作訳者の石井桃子さんによる訳です。
翻訳家の岸本佐知子さんは、「クマのプーさん」というタイトルが天才的、大発明だと語っており、「さん」が付くことによって、ちょっと頭の悪い食いしん坊で愛されキャラの熊というイメージができると評しています。
「クマのプーさん」石井桃子訳の魅力をTBSラジオ「アフター6ジャンクション」が紹介 | 舞浜横丁
なお、現在一般的に、原作は「クマのプーさん」、ディズニー版は「くまのプーさん」と書き分けられています。

(2013年3月10日公開・2020年5月18日更新)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加