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 - 東京ディズニーリゾート  - by poohya

OLC2035長期経営戦略を発表

OLCが2024年度の決算を発表。
同時に中期経営計画を発表しました。
今回は10年後、2035年までの長期経営戦略として示されました。

中期では、クルーズ事業が始まる2029年度目標としてで営業キャッシュ・フロー3,000億円レベル。
長期では、2035年度目標として、売上高1兆円を掲げます。

資料の中でも最もインパクトがあるのが、「テーマパークのエリア刷新の構想イメージ」。
アドベンチャーランドとポートディスカバリーと思われるアートが公開されました。
特にアドベンチャーランドはかなり様変わりしており、左側のロイヤルストリートがないとどこのことだか分からないレベルです。

今後の開発方針として「東京ディズニーリゾートならではの開発による、世界中のどこにもない感動と驚きの提供」と掲げられています。
海外アトラクションの輸入ではなく、東京ディズニーリゾートのオリジナル開発であることは、これまでと変わらないようです。
また、「テーマパーク用地のダイナミックな再編」とされており、拡張ではなく既存用地の再編のようです。

既存用地の再編として、アドベンチャーランドとポートディスカバリーが挙げられたようですが、アートでは何がどうなのかさっぱりわかりません。
また、英語版の資料にはアートが微妙に異なるとの指摘もされています。
つまり公開されたアートは、意図的にIPを消したバージョンだろうと思われます。
現時点の検討レベルとしてはかなり初期で、いわゆるブルースカイ状態。
初期ニューファンタジーランドや北欧エリアよりもかなり段階の低い状態だと思います。
まだアートを見て考える意味もないと感じています。
特にアドベンチャーランドのアートは、アスレチックや回転系など遊園地っぽいアトラクションが多く、キャパシティを増やしたいパークで真剣に検討しているとは考えられません。

入園者数については、「更なる向上を実現」程度に抑えられています。
元々拡大方針だったものが、コロナ禍で大きく路線変更し入園者数は制限しつつ単価を上げていくというチャレンジ状態でした。
単価の向上はプレミアアクセスやバケーションパッケージで引き続き図られていきますが、入園者数をどうしたいのかいまいち見えてきません。
2024年度決算を見ても、ファンタジースプリングスで拡張したにもかかわらず、年間5万人しか増えていません。
夏で大きく減ったとはいえ、10月時点での下半期予想よりも入園者数が減っています。
また、2025年度の予想も44万人増、1.6%しか増えません。
ファンタジースプリングスの稼働が2ヶ月分+入場制限がなくなった分増加することが十分に活用できているのか怪しいです。

昨年クルーズ事業を発表したのに株価が下がり続けている要因は、高単価を目指す過程で将来的なファン層を取りこぼしている面が指摘されています。
長期の戦略として考えられる部分ですが、そこには「幼少期からのファンづくり」として言及。
また、海外ゲストの集客強化も強く挙げられており、経営陣が変わってきた感があります。

そして最大の問題である猛暑対策は、長期戦略の中でも項目としてピックアップ。
「夏にしか体験できない特別なパーク」という新たな方針を示しました。
とはいえ、散水コンテンツや過ごしやすい時間帯のショーと、コロナ前からの方策を強化する流れ。
期間限定のアトラクションのオーバーレイも挙げられており、今年ではイッツ・ア・スモールワールドやスター・ツアーズが該当しますが、これは「夏にしか体験できない」とは異なります。
また、「若年層や東京ディズニーリゾートのファン層」を取り込むのは、昨年10月に示された方針。
東京ディズニーリゾートのファン層は、入園者数向上の部分には出てこず、夏にしか登場しないのがいかにもです。
そして入園者数向上と夏の施策の両方に「様々なコラボレーション」が登場しています。
今年のMrs. GREEN APPLEのようです。
USJ的なコラボ方針が取られそうです。
とはいえディズニー外のIPコラボはできないでしょうし、ディズニーでコラボは大変そう。

チケット戦略は、変動価格制の上限・下限の両軸を含めて検討。
上値はもちろん、安い日をさらに下げることも検討事項に含まれています。
一方でワンデー以外の券種は入っておらず、夏期にのみ「多様なチケット券種の展開」が挙げられています。
今年の夏はパークホッパーを販売し、夜間チケットも拡充します。
これは夏の実験であり、他期間はワンデー1本でいくようです。

さらにテーマパークで新たな収益源を模索。
これまでにない手段やサービス等を大胆に開発するとしており、現時点で何か見えているわけではなさそう。
来園・非来園に関わらず、入園者数と単価の枠組みにとらわれない収益モデルということで、革命的なゲームチェンジに投資をしておくのは長期的計画としてありです。
オリエンタルランド・イノベーションズでのベンチャー投資もこの流れに組み込まれるのかなと思いました。

ホテルも、新ディズニーホテルの増設を検討。
クルーズに合わせてお台場あたり?と思いましたが、しっかり「東京ディズニーリゾート周辺で」と書かれていました。
なら周辺ホテル用地を他企業に買われている場合じゃないだろう。

クルーズは、昨年の発表からあまり変わっていません。
投資額は3,300億円から変わりませんが、内訳が船体2,900億円+予備費400億円と明かされました。
2029年度から黒字化するとしており、売上高1,000億円はアップサイドを精査できる状態で、就航数年で営業利益率20%台後半するとしています。
ちょうど長期計画の2035年頃には投資額を回収できる見込みだということで、順調ならその頃に2隻目の投入になるのかもしれません。
クルーズ事業に参入する意義では、従来から指摘されている点がほとんどですが、「国外からの人材雇用」が気になりました。
クルーズ船員として国外人材は必要でしょうし、郵船クルーズと提携することから、雇用ノウハウも学べるのでしょう。
雇用ノウハウを活かして、パークでの国外キャスト採用にも繋げていくのではないでしょうか。
そうなれば運営面でもパークとクルーズの相乗効果が生まれそうです。

現状の課題に対して具体的な方策は検討中の面が強いと感じました。
ファン向けにはインパクトのあるアートで盛り上げていますが、質疑応答と株価含め外部がどう反応するのか気になります。

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