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 - 映画  - by poohya

『ソウルフル・ワールド』感想

Disney+独占配信となっ(てしまっ)たピクサー最新作『ソウルフル・ワールド』。
配信開始と同時に観ましたが、まだ配信映画について触れるタイミングをいまいち掴めておらず、掴めないまま1ヶ月くらい経ってしまいました。

ネタバレありの感想です。

なにより、ユーセミナー中心に進む話だと思っていたので、メインが人間界で主人公と猫が入れ替わる話だったことには大変驚きました。
予告編騙しがうまい。
よく見たらポスターに猫もいるんですね。うまい。

ユーセミナーで難解な理論を説かれるのかと思っていたら、割と簡単でした。
ユーセミナーでのルール説明は相変わらずコンパクトに分かりやすく、しっかり伏線も貼っていて、こういうことをさらっと出来るのはさすがピクサーです。

万物の殿堂で匂いや味が肉体の役割なのはよく分からなかったというか、匂いや味に関するきらめきは存在しないということ?と疑問に思いました。

ゾーンに入った人間と迷える魂が紙一重に描かれるのもすごい。
デスクワーカーへの恨みが強いところもピクサーらしいですね。

この世に戻ってきてからは、目的とタイムリミットがあり、その途中でクエストをこなしていく形式。
話の展開はジョーが担いつつ、その過程で22番がきらめきを見つけていきます。
生きる理由の表し方も、シーンによって抽象的だったり台詞上だったりします。
特に床屋のシーンと、ユーセミナーに戻ってからの問答は説明的というか、特に後者は悪く言えば説教的とも言えます。
その間に挟まれている22番がきらめきを見つけるシーンは対照的に台詞もBGMもありません。
ここがとても好きでした。
前後で説明を補いつつ、ここぞのシーンでは映像だけで人生のきらめきをCGアニメーションで見せるのは、CGで世界を描くことを突き詰めたピクサーだから描ける光景でしょう。

最後22番が地球に生まれに向かうシーンで、これまでずっと北米が見えていた地球が初めてアジアに面しています。
ニューヨークに住むジョーに対して、22番はインド辺りで生まれ、お互いの人生が関わることもまずないのでしょう。

そしてジョーも最後の選択を見せないのが良かったです。
ジャズについて知識がほとんどありませんが、即興音楽だということくらいは知っています。
「ジャズる」というのもそういうことですよね。
しかし、初めて演奏をすることになったとき、ジョーは何を弾けばいいのか困惑しています。
オープニングでは学校で合奏を教えていて、譜面をしっかり見ていました。
ジャズピアニストを目指していた過去も作曲したものを断られていましたし、自宅のピアノにも楽譜が置いてありました。
ジョーはずっと譜面にとらわれて生きてきたのでしょう。
そして譜面もなく即興で演奏することでゾーンに入りました。
もう一度ゾーンに入って22番を救いに行くとき、ジョーは自宅のピアノに置いてあった楽譜をどかし、代わりにドーナツや糸を置きます。
これは22番がジャズった冒険の中で手に入れたきらめきでした。
ジョーと22番が探していたジャズときらめきが一つに着地した見事なシーンでした。

映画の世界に没入させる手法はいくつもありますが、この映画は空気感や音で没入させていくものだと思います。
だからこそ大スクリーンやシアターサウンドに包まれて没入したかったです。
こんなに劇場向けに作られた映画なのに、ディズニーとピクサーのアニメーションでこれだけが劇場にかからないなんて本当にもったいない。
最後の最後も劇場向けネタだし。

そして同時上映(予定だった)短編『夢追いウサギ』。
これも良かったです。
個人的に短編アニメーションはセリフなしが好きです。
『ソウルフル・ワールド』の重要なシーンがセリフなかったことに繋がり、長編と短編の関係としても好みです。
どこかジブリ美術館の短編っぽい趣がありました。

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