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 - 海外パーク  - by poohya

魔法を再定義する「Magic Happens」の凄さ

アナハイムのディズニーランドで2月に始まったパレード「Magic Happens」。
休園が続く中、ほぼ全編がYouTubeにアップされました。

その名の通り様々なディズニー映画の「魔法が起きる瞬間」が表現されたパレードで、特に夜公演のライトアップは見事で魔法を感じさせてくれます。
何度も観たくなるパレードですが、観ていると不思議な構成だと感じ、更に何度も観てその理由を感じました。

「現代性」の強いパレード

パレードの特徴を一言で表すと「現代性」でしょう。
作曲のトドリック・ホールが独自の感性で作った音楽と、それに合わせて作られたコスチュームはオープニングから、他のパレードとは違った印象を大きく与えてくれます。
現代の感覚を持つ作家性に影響されてパレード全体をデザインするスタイルは、あえてパレードで似た形を探すなら、ヒャダインが作曲し増田セバスチャンがデザインしたピューロランドの「ミラクルギフトパレード」のように思います。
オープニングは現代性を強く感じるダンサーと、魔法使いの弟子スタイルのミッキー。
現代性を補強するように、続くのは『モアナと伝説の海』『リメンバー・ミー』『アナと雪の女王2』と、パレード初登場の最新映画たちです。
テーマソング「Magic Happens」は、全体を通して流れながら、ユニット毎に映画に合わせたアレンジが加えられていきます。
アナ雪2の後はフィナーレなのですが、このパレードが特徴的なのはフィナーレがやたら長く独特なスタイルなことでしょう。
これまで全体を通して流れてきたテーマソングは全く違う曲に切り替わり、音楽だけ聞けば別のパレードのようです。

古典的なフィナーレ

フィナーレは、ピノキオ、アラジン、ピーター・パンと、魔法使いと魔法をかけてもらった人のペアが先導します。
フロートで登場するのは『シンデレラ』『王様の剣』『プリンセスと魔法のキス』『眠れる森の美女』です。
プリンセスと魔法のキス以外はかなり古典的な作品が並びます。
音楽はフロート毎にアレンジすることはなく、同じメロディのループ。
そのメロディの中に、各映画のセリフが入れられています。
さらに映画だけでなく「Remember the Magic」や「Wishes」といった、パークの伝説的なショーの要素も混ぜられています。
典型的な「ディズニーの魔法」を感じさせる作りです。
とにかくパークファンなら心地よい“ディズニーパレードっぽい”フィナーレだと言えるでしょう。

現代性を強く感じるパレードのフィナーレに、古典的で伝統的なディズニー要素が入る、この構成は何をしたかったのでしょうか。
まず、テーマソングが変わる時点で、2つのパレードに分けられているように感じます。
そう思って観ると、オープニングでダンサーが先導するように、フィナーレでも改めて魔法使いのキャラクターたちが先導している構図に気付きました。
現代的なパレードの後に、同じテーマで古典的なパレードをやり直しているようです。

今「魔法」をテーマにする凄さ

そんな2つのパートを繋いでいるのが、パレードのタイトルの通り「魔法」です。
「夢」を打ち出しすぎて「夢と魔法」のバランスが崩れつつある中、今の時代に「魔法」をテーマにパレードを作ることはすごいことだと思います。
その原因の一端は、最近のディズニーが「あなたの物語」という点を打ち出していることにあります。
「Find Your Happily Ever After」です。
参考:2010年代のディズニー・プリンセス像 「Find Your Happily Ever After」から「Life After Happily Ever After」へ|舞浜横丁
おとぎ話を他人事ではなく自分のストーリーとして捉えさせる中で、夢は誰もが持てるので分かりやすいですが、魔法は夢を叶える過程の象徴。
ゲスト個人個人の話として伝えるときに分かりにくくなってしまいます。
それでもMagic Happensでは、魔法が出てきた3つの新しい映画を通して、魔法は誰にでも起きる、起こせることを打ち出そうとしてきます。

一方フィナーレを担う古典的な作品は、映画を観ていようがいまいが誰もが「ディズニーの魔法」を感じられるものです。
伝統的な映画とパークのフレーズをたっぷり込めた音楽と共に、魔法が誰に対してでも存在することを訴えてきます。

現代的な「あなたの物語」を伝える前半と、誰もが分かる「ディズニーの魔法」を伝えるフィナーレ。
両要素が1つになることで、ディズニーが描く本当の魔法の姿、夢見て自分の道を歩むことで与えられる魔法をゲストに教えてくれるようです。
まさに魔法は起きるということを感じられるパレードです。

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