- くまのプーさん - by poohya
プー企画展「Winnie-the-Pooh: Exploring a Classic」が伝えるプーの本質
ロンドンのV&A(ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)にて、2017年12/9〜2018年4/8まで、企画展「Winnie-the-Pooh: Exploring a Classic」が開催されています。
プーの故郷ロンドン、クリストファー・ミルンが住んだ家の近くで開催されている企画展は、プーの本質を伝えてきました。
子供から大人まで楽しめる企画展
「Winnie-the-Pooh: Exploring a Classic」は文字通りプーの原作(ディズニーでいう「クラシックプー」)の世界を巡る企画展です。
プーの家やプー棒投げなど、子供も楽しめる仕掛けが随所に施してあります。
さらに解説文も低い位置には子供向けの説明があり、「想像してみる」ことを重視する説明が多いのも特徴です。
大人向けの解説文は濃厚で、展示法と解説を合わせて見ていくと、企画者の思うプーの本質がしっかり伝わってくる内容になっています。
シェパードの原画の美しさを堪能
展示内容には、レアな「クマのプーさん」発売当初のグッズや世界展開の様子がわかる資料などもありますが大半はE.H.シェパードによる挿絵の原画が占めています。
というのも、E.H.シェパードの孫の旦那がシェパードを研究し、伝記映画「Goodbye Christopher Robin」への資料という意味も重なり画集が出版され…という近年の流れがあり、シェパードによる原画を豊富に揃えられる環境が整ったからです。
本物の絵の美しさに圧倒されっぱなしです。
プーの本質は「3つのバランス」
「Winnie-the-Pooh: Exploring a Classic」から伝わってきたプーの本質とは「3つのバランス」でした。
・現実と空想
・実物と自然
・文字と絵
3つのリアルとファンタジーを繋ぐバランスがプーの世界観を作り上げています。
企画展では原作の世界が主な展示内容ですが、この本質はディズニーアニメーション版でも受け継がれている要素です。
現実と空想
原画コーナーの最初は2枚の絵から始まります。
クリストファー・ロビンが階段を降りてくる絵と、階段を登っていく絵。
「クマのプーさん」の最初と最後の挿絵です。
クリストファー・ロビンが自分の部屋から出てきて、父親からプーのお話を聞き、また部屋へ戻っていく。
この対になった挿絵は、クリストファー・ロビンが住む現実の世界と、プーのお話が展開される空想の世界を繋ぐものです。
ディズニーでは、オープニングに実写でクリストファー・ロビンの部屋を映すことで現実と空想の世界を繋ぐ役割を果たしています。
実物と自然
一見同じようなプー棒投げのシーンの挿絵。
1枚目は下書きで、2枚目が実際の本に使われるものです。
プーたちの姿はほとんど変わりませんが、後ろの木や川の描写が減っていることが分かります。
プー原作の魅力の一つに、美しい自然描写が挙げられます。
100エーカーの森の自然の美しさは、挿絵からも伝わってきます。
シェパードは100エーカーの森のモデルであるアッシュダウンフォレストを実際に歩き、スケッチしました。
その美しいスケッチを見られるだけでイギリスまで飛んで企画展に行った甲斐があったと思いますが、プー棒投げの挿絵で見たように、実際の完成版ではその自然描写が省略されています。
主人公であるプーたちを際立たせるために、背景をどこまで省略していくのかというバランスが、プーの挿絵に大きな魅力を持たせているのです。
これはディズニーアニメーション版でも同様で、背景を美しく描きながらもセル画の効果でプーたちにスポットライトが当たっているかのようにキャラクターだけが動き出すようになっています。
文字と絵
プーは文章と挿絵が合わさって最大の魅力を発揮します。
作者のA.A.ミルンは単にシーンをシェパードに発注しただけではなく、密に連絡を取って内容を決めていきました。
その最たるものが、挿絵の配置です。
ミルンは文字のレイアウトと挿絵の配置にまでこだわり、プーを書きました。
文字と挿絵が独立しているのではなく、一体となることでプーの世界観に入り込めるようになっています。
絵だけでもなく文字だけでもない。
これはストーリーの補足としての挿絵ではなく、世界観を構成する重要なパーツであることを示しています。
ディズニーアニメーションではプーの絵本を読んでいるというメタ構造にこだわり、強風で文字が飛んでくる、ティガーが高い木から文字を伝って降りるなどの演出を取っています。
他にも、彩色版や印刷方法、未採用の原画など貴重すぎる資料が次々と並んでいます。
あの美しい大好きな絵の本物に出会える感動は格別でした。
発売は先になりますが、なんとこの企画展の図録が日本からamazonで買えます。
すごい時代だ…