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 - くまのプーさん  - by poohya

「クマのプーさん」エリザベス女王90歳記念絵本をディズニーが公開

プーの新作をディズニーが公開しました。
原作モチーフの絵本形式で、エリザベス女王の90歳をお祝いするものになっています。

Winnie the Pooh and the Royal Birthday

「Winnie the Pooh and the Royal Birthday」と題されたこの作品は、ディズニーがYouTubeで無料公開しています。
PDFで絵本としても公開されています。
作者はJane Riordan。
挿絵はMark Burgess。2009年に発売された原作の続編「Return to the Hundred Acer Wood」の挿絵を担当した方です。

100エーカーの森でクリストファー・ロビンと話すプーたち。
エリザベス女王が90歳ということで、お祝いをしに行こうということになります。
プーはお祝いに詩を用意。
クリストファー・ロビン、プー、ピグレット、イーヨーはロンドンへ向かいます。
バッキンガム宮殿に着き、プーはエリザベス女王と対面。
ピグレットはジョージ王に風船をプレゼントしました。
というお話。

原作の要素を散りばめた作品

ディズニーが公開していますが、これは原作シリーズの新作。
お祝いとしてプーが詩を披露するというのも、いかにも原作プーらしい行動です。
ディズニープーではなく原作の世界でしっかり作っていたり、イーヨーの誕生日や北極てんけん隊など過去の物語を思い出すシーンがあったりと、分かりやすく原作シリーズの新作として描かれています。
ですが、この作品の見どころは100エーカーの森を出てから。
プー、ピグレット、イーヨーがロンドンへと向かいます。

100エーカーの森を出てロンドンへ

まずプーたちが100エーカーの森を出ていいのかということですが、ここはディズニーと原作で異なります。
ディズニーでは100エーカーの森は絵本の中の世界。別次元のような扱いになっています。プーたちは自分が絵本の中にいることを認識しており、絵本を飛び出すことで私たちの世界に来ることが可能です。
一方原作では、物語はあくまで読み聞かせのような形であり、クリストファー・ロビンの家自体が100エーカーの森にあります。
これは100エーカーの森=アッシュダウン・フォレストであり、その中に家であるコッチフォード・ファームがある、という実際の地理上の関係でもあります。
つまり原作世界のプーは地続きでロンドンへと行くことができるのです。
プー聖地巡礼ガイド 2 -ロンドンからハートフィールドへにも書きましたが、100エーカーの森(アッシュダウン・フォレスト)の最寄り駅はイースト・グリンステッド。
今回の絵本でもEast GrinsteadからLondon Victoriaへと電車に乗っている描写があります。

ハロッズに感動 ロンドン観光

2階建てバスに乗りロンドン観光へ向かうプーたち。
まずここで大きなポイントなのは、ロンドンへ来たメンバー。
プー、ピグレット、イーヨーの3人だけが来ています。
プーはクリストファー・ロビン1歳の誕生日プレゼント。イーヨーはクリスマスプレゼントで、ピグレットは近所の子からのプレゼントです。
100エーカーの森の残りのメンバーはと言うと、ティガー、カンガ、ルーは“プーの物語を広げるために”後から買い足されたぬいぐるみ。
ラビットとオウルは100エーカーの森の動物で、ぬいぐるみではありません。
つまり、クリストファー・ロビンがロンドンで遊んでいた頃からの友達だった3人がロンドンへとやってきたのです。
クリストファー・ロビンがロンドンで遊んでいた頃の様子は詩集1作目「クリストファー・ロビンのうた」で描かれており、「バッキンガムきゅうでん」という詩もあります。

There was one very grand old shop which Pooh found strangely familiar but he told himself he was being silly as this was surely his first visit to London.
ロンドン観光でこのような一文があります。
このページの挿絵を見ても、どう考えてもこのvery grand old shopとはハロッズのこと。
ここで、プーはロンドンに来たのがはじめてじゃない気がします。
このハロッズこそプーが誕生日プレゼントとして買われたお店。プーの生まれ故郷です。
プー聖地巡礼ガイド 6 -プーが生まれた場所、ハロッズ

プーとエリザベス女王

バッキンガム宮殿に着き、エリザベス女王に謁見するプーたち。
ここがこの作品の肝の部分ですが、そもそもどうしてプーがエリザベス女王の誕生日を祝うお話になったのか。
「クマのプーさん」が発売されたのは1926年。エリザベス女王の生まれ年と一緒なのです。
ちょうど10年前のエリザベス女王80歳の年には、子どもとのお茶会が催され、プーはその会に招待され、バッキンガム宮殿に登場しています。
エリザベス女王と同い年の「クマのプーさん」。女王も幼い頃プーの物語が大好きだったそうです。
ちなみに、英国王室と繋がりの深い日本の皇室でも、「クマのプーさん」は皇后美智子さまの愛読書として知られています。

しっかりと原作シリーズとして、英国文学のクマのプーさんとしての要素を散りばめたこの作品。
もちろん原作とディズニーと歴史と全ての整合性はあいません。
その点は、物語の最後に述べられている通り。

クマのプーさんが出版されて90年。
プーがクリストファー・ロビンのもとにやってきて95年。
「99歳」が近づく中、ディズニーがプー原作をしっかりと守っていくこと、話題にしていくこととして大きな意味のある作品であることは間違いありません。

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