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『インサイド・ヘッド』感想:ビンボンが選んだプー「最終章」の道

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ネタバレ感想:映画『インサイド・ヘッド』を観たの続きです。
映画内容を踏まえて書いているので、未見の方は鑑賞後にお読みください。

『インサイド・ヘッド』を「ライリーという少女が大人への一歩を踏み出す物語」として見た話です。
ビンボンが選択した道は、プーが選んだ道と同じように思います。
そしてこの選択は、トイ・ストーリーのテーマでもあります。

ビンボンとは。
昔ライリーによって作られたキャラクターでありながら、今や忘れ去られようとしている記憶。
そして、ライリーのために、自らを犠牲にして忘却されていきます。
クレジットで生き返らなくてよかった。ピクサーはここで猫の記憶に登場とかやりかねない。NGシーン集もなくて本当によかった。
ヨロコビがカナシミを受け入れたのと同様に、ビンボンも自分を捨ててヨロコビを助けることがライリーのためになると考えたのでした。

観終わってからビンボンについて考えたとき、浮かんだのはプーの「最終章」でした。
プーの「最終章」とは、クリストファー・ロビンが学校に通いいよいよ100エーカーの森に戻ってこられなくなる、お別れの物語。
ここでプーはクリストファー・ロビンとある約束をします。
このブログは何度同じ部分を使うんだという話ですが、また最終章を引用します。
『プー横丁にたった家』石井桃子訳です。

「プー、ぼくのことわすれないって、約束しておくれよ。ぼくが百になっても。」
プーは、しばらくかんがえました。
「そうすると、ぼく、いくつだろ?」
「九十九。」
プーはうなずきました。
「ぼく、約束します。」と、プーはいいました。

最も有名な約束のシーンです。
クリストファー・ロビンは100エーカーの森を去りますが、プーは残ります。
プーにとって、クリストファー・ロビンは全てです。
頭がちいさいのでプーは気付いていないと思いますが、プーの名付け親も、プーの性格を生んだのも、クリストファー・ロビンです。
プーの存在はクリストファー・ロビンによって創造されたといってもいいでしょう。
プーは、お別れがしっかりと示されただけで、実はビンボンと同じ存在です。
その彼を失ったとき、プーはどうやって生きていくのでしょうか。

そこで、ふたりは出かけました。ふたりのいったさきがどこであろうと、またその途中にどんなことがおころうと、あの森の魔法の場所には、ひとりの少年とその子のクマが、いつもあそんでいることでしょう。

原作の最後の文章です。
プーとクリストファー・ロビンは、100年たっても思い出の場所で遊んでいます。
これをビンボンの視点で見たらどうなるでしょうか。
ビンボンが消えた先は分かりません。さらに別の世界があるのかもしれません。
そして、ビンボンにはライリーがどんな大人になるかが分かりません。
しかし、どんなことがおころうと、「月」には、ひとりの少女とその子のゾウがいつもあそんでいることでしょう。

ビンボンは報われない存在なのでしょうか。
ライリーの記憶からビンボンが消えても、ビンボンはライリーのことを忘れません。
ビンボンはこれからずっとライリーと遊べるのだと思います。
そして、いつか忘れられる存在だと分かっているからこそ、幼少期の想像上の友達は愛おしい存在になっていくのです。

現実のお話。
人間、意外と忘れないものです。
ビンボン的な存在を忘れずに大切にしている人もいるかと思います。
クリストファー・ミルンという少年も、彼が愛したテディベアを忘れられずにいました。
正確には、忘れたくても呪縛のようにつきまとってきました。
誰が悪いわけでもありません。
少年は親友と別れる決断をし、クマは森に残って忘れ去られる選択をしました。
しかし、本という存在が「忘れる」ことを出来なくさせてしまいました。
自分の少年時代がベストセラーになり、愛した友達を忘れることができないとき、それは苦しみに変わることがあります。
「忘れる」ということも大切なことです。

そして、忘れられる選択から逃げたロッツォもいます。
『インサイド・ヘッド』の感想で「ビンボンが悪役だと思った」というものが多くありました。
ヨロコビを落とし入れ、自らが司令部に入り込めばビンボンも悪役になったでしょう。
それが「忘れられる」選択をしたかどうかです。
『トイ・ストーリー3』のラストも別の子供に移るという、ちょっと違うパターンですが、アンディのコレクションとして一緒に生き続けるか、アンディから忘れられるかという選択です。
トイ・ストーリーも同じ選択の物語だといえます。

感情が豊かになり、まさに大人への一歩を踏み出したライリー。
それと同時に忘れられたビンボンは、「最終章」で別れたプーと同じです。
カナシミの存在を知ることで大人になると同時に、「忘れる」ことで大人になる様子を描く。
『インサイド・ヘッド』はピクサーが20年間投げかけてきたテーマをそのまま受け継いだ作品でした。

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